抗精神病薬は定型・非定型ともに、心突然死のリスクが同等にあることが、米国テネシー州のメディケイド加入者を対象とする大規模な後ろ向きコホート研究の結果として報告された。米国ヴァンダービルト医科大学薬剤疫学・予防医学部門のWayne A. Ray氏らが行った試験で、NEJM誌2009年1月15日号で発表されている。定型薬に関する心突然死の大規模データは存在したが、非定型薬についての同リスクはほとんど明らかにされていなかった。
心突然死の発生率を算出
Ray氏らは、定型・非定型抗精神病薬を現に使用している患者の心突然死の補正発生率を算出し、心臓に対する安全性を検証した。
主要解析の対象は、定型薬1種類使用4万4,218例、非定型薬1種類使用4万6,089例、および抗精神病薬非使用者18万6,600例。2次解析は抗精神病薬使用の関連因子の評価を目的とし、統合失調症または統合失調症に関連した精神病と診断されていない抗精神病薬使用者と、傾向スコア(抗精神病薬使用者となる可能性)で一致させた抗精神病薬非使用者を含み行った。
非定型薬使用者は定型薬使用者の1.14倍
抗精神病薬の現使用者はいずれのタイプとも、非使用者に比べて心突然死の発生率が高く、定型薬使用者は1.99倍(95%信頼区間:1.68~2.34)、非定型薬使用者は2.26倍(1.88~2.72)だった。過去に抗精神病薬を使用していた患者の発生率比は、非使用者に比べて1.13倍(0.98~1.30)で、リスクは有意に高くはない。
非定型薬使用者の発生率比は、定型薬使用者の1.14倍(0.93~1.39)だった。
現使用者のリスクはいずれのタイプとも、用量の増加とともに有意に上昇しており、定型薬使用者の場合は、低用量服用者は1.31倍(0.97~1.77)、高用量服用者では2.42倍(1.91~3.06)に増加していた(P<0.001)。一方、非定型薬使用者の場合は、低用量服用者は1.59倍(1.03~2.46)、高用量服用者では2.86倍(2.25~3.65)に増加していた(P=0.01)。傾向スコアで一致させたコホート群での検討でも同等の結果であったと報告されている。
Ray氏は、「臨床現場では非定型抗精神病薬が、従来の薬剤に取って代わって使用されるようになっている。しかし今回の結果は、非定型抗精神病薬がより古い薬物より安全ではないことを示唆するものだった」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)