ドベシル酸カルシウムは、糖尿病患者において臨床的に有意な黄斑浮腫(clinically significant macular oedema; CSME)の発症リスクを低減させないことが、ドイツLudwig-Maximilians大学眼科のChristos Haritoglou氏らが実施した多施設共同試験(CALDIRET試験)で明らかとなった。糖尿病性網膜症は労働年齢人口の最も重要な失明原因であり、レーザー治療などの有効な治療法があるにもかかわらず1型糖尿病患者の約90%が網膜症や黄斑浮腫で失明している。静脈治療薬であるドベシル酸カルシウムは慢性静脈不全や痔核などの血管疾患に有効で、現在60ヵ国以上で処方されているという。Lancet誌2009年4月18日号掲載の報告。
網膜症を伴う2型糖尿病を対象とするプラセボ対照無作為化試験
研究グループは、糖尿病性黄斑浮腫の発現に対するドベシル酸カルシウムの効果を評価するために、11ヵ国40施設の参加のもとに多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験を実施した。
成人発症の2型糖尿病の外来患者で、軽度~中等度の非増殖性の糖尿病性網膜症を伴うものを登録し、ドベシル酸カルシウム(1,500mg/日)あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は5年のフォローアップ期間中のCSME発症とし、早期に脱落した場合は打ち切り例(censored case)とした。
CSMEの推定5年累積発症率に有意差なし
635例が登録され、プラセボ群に311例が、ドベシル酸カルシウム群には324例が割り付けられた。CSMEを発症した症例は、プラセボ群が69例であったのに対しドベシル酸カルシウム群は86例であり、打ち切り例を考慮するとCSMEの推定5年累積発症率はプラセボ群が28%、ドベシル酸カルシウム群は35%であり、有意差は認めなかったもののむしろ治療薬群で高かった(p=0.0844)。
有害事象の頻度は、プラセボ群29%(90例)、ドベシル酸カルシウム群24%(78例)であり、両群間に差はなかった。薬剤に関連した合併症は認めなかった。プラセボ群で8例(3%)が、ドベシル酸カルシウム群では9例(3%)が死亡した。
著者は、「ドベシル酸カルシウムは2型糖尿病患者においてCSMEの発症リスクを低減させない」と結論したうえで、「今後、検討に値するサブグループを同定するために事後解析を実施したところ、血管疾患のリスク因子を有する女性でドベシル酸カルシウムのベネフィットが高い可能性が示唆されたが、これはあくまで推測の域を出ない」としている。
(菅野守:医学ライター)