外科的心室再建は、冠動脈疾患に起因する心不全患者の左室容積を減らすことを目的に開発された特異的な手技である。この手技を、冠動脈バイパス移植術(CABG)と併せて行った場合に期待されていた死亡率や入院率の低下に関して、「CABG単独時と比較して大きな改善は見られなかった」ことが報告された。心不全および冠動脈疾患患者に対する外科的治療の意義を見定めることを目的としたSurgical Treatment for Ischemic Heart Failure(STICH)試験の結果で、NEJM誌2009年4月23日号(オンライン版2009年3月29日号)で掲載されている。これまで、小規模の症例対照試験では改善効果の可能性が示唆され議論の的となっていた。
患者計1,000例が参加、CABG単独群と外科的心室再建併用群を比較検討
STICH試験は2002年9月~2006年1月の間に、患者計1,000例が参加し行われた。患者は、駆出率35%以下、CABG適応の冠動脈疾患があり、外科的心室再建適応の左室前壁機能不全を有していた。
これら患者をCABG+外科的心室再建群(501例)と、CABG単独群(499例)に無作為に割り付け、全死因死亡の複合と心疾患による入院を主要転帰とし、中央値48ヵ月間、追跡された。
左心室容積は低下するが……
結果、左室容積(収縮末期容積)は、CABG単独群では6%の低下だったが、外科的心室再建併用群では19%の低下が見られた。
しかし、心臓の症状および運動耐容能については、両群とも基線からの改善は同程度であり、主要転帰の有意差は認められなかった。主要転帰の発生は、CABG単独群では292例(59%)、外科的心室再建併用群では289例(58%)で、ハザード比は0.99(95%信頼区間:0.84~1.17、P=0.90)だった。
(武藤まき:医療ライター)