開業助産師と契約した出産のほうが転帰が優れている:イギリス

提供元:ケアネット

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公開日:2009/07/03

 



イギリスで行われた調査の結果、開業助産師との契約下で行われた出産のほうが、NHSとの契約下の場合より、概してよい臨床転帰であることが報告された。ダンディー大学看護・助産学のAndrew Symon氏らが、英国開業助産師協会(IMA)からの出産データと、スコットランドNHSからの出産データを照合比較した結果によるもので、BMJ誌2009年6月20日号(オンライン版2009年6月11日号)で発表された。英国には現在、IMA所属の開業助産師が118人、一方NHS雇用の助産師は31,064人おり、自宅出産(ただしほとんどがNHS職員立ち会い)が約2.5%行われているという。日本の現状についてはこちら(助産師 http://www.nurse.or.jp/toukei/pdf/toukei03.pdf、出産場所 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001032156 表4-8 市部-郡部・出生場所別にみた年次別出生数百分率)を参照。

開業助産師を利用した場合と、NHSサービスを利用した場合を比較




本研究は、開業助産師を利用した場合の分娩の転帰が、NHSサービスを利用した場合と比べて同等なのか劣るのかを目的に行われた。

出産年齢、出生児数、出産年次、社会経済状況を照合し1対5の割合で集めた、2002~2005年の、IMAからとスコットランドNHSからのデータ(IMA群1,462例、NHS群7,214例)で、検討された。主要評価項目は、頭頂分娩、生産児、周産期死亡、分娩開始、妊娠期間、鎮痛剤使用、分娩時間、会陰部外傷、アプガースコア、新生児集中治療室(NICU)入院、乳児の栄養状態。

IMA群の頭頂分娩のオッズ比3.49




出産場所について、病院出産はIMA群32.4%(10.2%はハイリスク等の理由で事前に計画)、NHS群97.7%だった。自宅出産は、IMA群66.0%、NHS群は0.4%だった。

頭頂分娩は、IMA群77.9%、NHS群54.3%で、オッズ比3.49とIMA群のほうが有意に多かった。

しかし一方で、死産と新生児死亡の合計が同1.7%と0.6%、オッズ比5.91と、IMA群で有意に多かった。ただし、両群からハイリスク(未熟児、胎位、双胎妊娠)群を除いた場合の比較では、有意差は示されていない(0.5%対0.3%、オッズ比2.73)。低リスク群におけるIMA群の周産期死亡率は、低リスク分娩の他の研究と同等であった。

また、IMA群の女性には、もともと基礎疾患(1.5%対1.0%)や事前の出産に伴う余病(21.0%対17.8%)を有する割合が高く、双胎妊娠のケースも高かった(3.4%対3.1%)。前述したように自宅出産の割合も高かった。

自然分娩の割合は、IMA群のほうがより一般的に見られ(96.6%対74.5%、オッズ比:10.43)、鎮痛剤を用い無痛分娩を行った女性は少なかった(40.2%対60.6%、0.42)。母乳で育てる人もずっと多かった(88.0%対64.0%、3.46)。

早産児(37週未満)出産(4.3%対6.9%、0.49)、低体重児(2,500g未満)出産(4.0%対7.1%、0.93)、NICU入院(4.4%対9.3%、0.43)についてもすべてNHS群よりIMA群で優っていた。

Symon氏はこれら結果を踏まえ、「臨床転帰は概して開業助産師を利用した場合かなりよいが、一方で周産期死亡率がかなり高いことについて、緊急に再調査をする必要がある。また、NHS群についても、未熟児出産およびNICUの高い収容率について、緊急に再調査する必要がある」と提言している。