白血病患者の造血幹細胞移植後の再発メカニズム

提供元:ケアネット

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公開日:2009/08/12

 



一部分だけが適合するファミリードナーからの提供で行う造血幹細胞移植は、再発のリスクが高い血液がんを有する患者にとって、有望な治療法である。ドナーT細胞輸注によって、移植後免疫再構成が促され、疾患をコントロールすることができるからである。ただ再発リスクも高く、またなぜ再発するのかメカニズムはとらえきれていない。イタリアSan Raffaele-Telethon病院遺伝子治療研究所のLuca Vago氏らは、再発メカニズムを解明すべく、移植後調査を行った。NEJM誌2009年7月30日号より。

診断時白血球細胞と、再発時の白血球細胞を解析




調査は、急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群を発症し、ハプロタイプ一致造血幹細胞移植およびドナーT細胞の輸注が行われた患者43例を対象とした。実施した調査は、骨髄の形態的な検査、縦列型反復配列解析を用いた造血キメラ化の評価、HLAタイピング。変異白血病細胞のゲノム再配列を、ゲノムHLAタイピング、マイクロサテライトマッピング、SNP(一塩基多型)アレイを用い検討した。そして、診断時に採取したオリジナル白血球細胞と変異白血病細胞の、移植後免疫応答をリンパ球の混合培養液を用いて解析した。

ミスマッチHLAハプロタイプを消失させる現象が再発をリード




白血病を再発したのは17例だった。そのうち5例で、最初の白血病の細胞の変異型が確認された。

この変異白血病細胞では、ドナーのハプロタイプとは異なるHLAハプロタイプの消失が確認された。染色体6pにおける後天性片親性ダイソミーのためとみられた。

また、ドナーT細胞および移植後患者T細胞では、変異白血病細胞が確認されなかったのに、診断時に採取されたオリジナル白血病細胞には効率的に確認・殺滅された。

Vago氏は、「ハプロタイプ一致造血幹細胞移植後およびドナーT細胞輸注後、白血病細胞はミスマッチHLAハプロタイプを消失させる。これによりドナーの抗白血病性T細胞から逃れられるが、この現象が、結局は再発をリードすることになっているようだ」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)