非定型抗精神病薬の持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の寛解率や予後に好影響を与えることが期待されている。現在のガイドラインにおいて、抗精神病薬の使用に関する経口およびLAIに対する明確な基準が示唆されている。Rossi氏らはLAIの治療を受けた統合失調症患者における人口統計学的・臨床的特徴の典型的なプロファイルを明らかにするため、非ランダム化研究の分析による系統的レビューを行った。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年8月21日号の報告。
英語による非ランダム化研究80文献を抽出し、LAI選択に関連する要因や日々のLAI使用に関する分析を行った。非ランダム化研究にはコクランの系統的レビューを用い、人口動態および臨床的特徴を含む変数を用いて分析を行った。入手可能であった文献は、LAIによる治療を行った統合失調症患者の典型的なプロファイルを識別するにあたり、いずれの統計的分析も考慮せず使用することができた。
主な結果は以下のとおり。
・LAI使用率は4.8%~66%であった。
・一貫した評価が可能であった人口統計学的特徴は、年齢(1970年代:38.5歳、1980年代:35.8歳、1990年代:39.3歳、2000年代39.5歳)、性別(男性>女性)であった。
・有効性はさまざまな症状スケールと他の間接的な測定法を用いて評価し、安全性は錐体外路症状と抗コリン薬の使用により評価したが、これらのデータは整合性がなく、プール不可能であった。
・別の研究で得られた有効性と安全性の結果によると、LAI使用のメリットとして入院が74%減少したと報告されている。またLAI使用による錐体外路症状発現は6ヵ月(35.4%)、8ヵ月(37.1%)、18ヵ月(36.9%)、24ヵ月(41.3%)で一貫して増加した。
最後にRossi氏らは「統合失調症患者に対するLAI使用は、良好な有効性および安全性が期待できることに加え、アドヒアランスの向上が期待できる」という。しかしそれにも増して重要なこととして「最適な治療を行うためには、医療スタッフ、患者、家族が協力する体制(治療同盟)を作ることが何よりも重要であり、LAIのプロファイルが治療同盟構築に寄与する可能性がある」と述べている。
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(ケアネット 鷹野 敦夫)