CLEAR!ジャーナル四天王|page:4

慢性腎臓病を伴う2型糖尿病に対するセマグルチドの腎保護作用 -FLOW研究から何を学ぶ-(解説:栗山哲氏)

GLP-1受容体作動薬は、LEADER/SUSTAIN-6/REWINDなど2型糖尿病の大規模研究において心血管主要アウトカムのリスク軽減が報告されている。一方、これらの研究で腎イベントは副次項目として設定されており、肯定論はあるものの正確な評価はされていない。今回のFLOW研究は、セマグルチドの効果を、腎疾患イベントを主要評価項目として評価した初の腎アウトカム研究である。慢性腎疾患(CKD)を有する2型糖尿病の成人を対象として、腎臓を主要評価項目とした。標準治療の補助療法として追加したセマグルチド1.0mg週1回皮下注とプラセボを比較した、無作為割り付け、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験のデザイン。両群のベースラインeGFRは、47mL/min/1.73m2である。

切除可能な局所進行非小細胞肺がんに対するニボルマブの周術期治療の効果/NEJM (解説:中島淳氏)

外科手術は遠隔転移のない非小細胞肺がんを根治するために、最も有効な手段である。しかし、病期が進むほど術後再発率は高く、現在の国内外の肺がん診療ガイドラインでは臨床病期IIIA期に手術適応の境界線が引かれている。手術後の成績を改善させるために補助療法が考案されてきたが、今世紀に入り術後platinum-doubletを用いた補助化学療法、そして術前補助化学療法の有効性がそれぞれメタアナリシスによって確かめられたが、いずれも比較的軽微な予後改善にとどまっていた。近年になり分子標的阻害薬や抗PD-1、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が、手術不適応進行非小細胞肺がんに対する従来の化学療法を上回る有効性が示されてから、これを手術補助療法に用いる臨床研究が盛んに行われるようになった。ICIによる術後補助療法、術前補助療法の有効性はすでに多くの臨床研究で明らかにされてきたが、この論文に示された研究では、術前と術後にニボルマブを用いた「周術期」補助療法が検討された。手術を挟んだ前後に行う治療は歴史的には「サンドイッチ療法」とも称され、他部位の固形がん治療で試みられてきた。

心房細動アブレーション手技における左心耳隔離の位置付けについて(aMAZE試験)(解説:香坂俊氏)

心房細動に対するアブレーション治療(肺動脈起始部のカテーテル焼灼術)のプレゼンスが年々高まっている。が、課題も多く残されている。たとえば、アブレーション治療は発作性の心房細動に関しては十分な医療を発揮し、1年後の洞調律維持率80~90%に達すると報告されているが、永続性の心房細動に関しては、その洞調律維持率は60~70%に留まっている。こうした課題を克服するために、肺動脈起始部以外の場所も「焼く」必要があるのではないかと考えられており、その有力なターゲットの1つが左心耳であった。電気生理学的な臨床研究からは、心房細動患者のうち約30%の方が、肺動脈起始部だけでなく、左心耳(LAA:Left Atrial Appendage)も起源となっていることがわかっている。

INSPIRE Pneumonia Trial:肺炎に対する抗菌薬選択改善を促すオーダーエントリーシステム(解説:小金丸博氏)

肺炎は入院を要する最も一般的な感染症であり、米国では毎年150万人以上の成人が肺炎で入院している。肺炎で入院した患者の約半数で不必要に広域なスペクトラムの抗菌薬を投与されていると推定されており、広域抗菌薬の過剰使用を抑制するための効果的な戦略を特定することが求められている。今回、患者ごとの多剤耐性菌感染リスク推定値を提供するコンピュータ化されたプロバイダーオーダーエントリー(CPOE)システムが、非重症肺炎で入院した患者における経験的広域抗菌薬の使用を減らすことができるかを検討したランダム化比較試験の結果がJAMA誌オンライン版2024年4月19日号に報告された。

統合医療システムにおけるプロトンポンプ阻害薬の過剰使用を減らすための大規模な多要素介入の影響:差分の差分法研究 (解説:上村直実氏)

わが国では、ピロリ菌感染率の低下や食べ物の欧米化などにより胃がんが減少している。一方、胃酸分泌が亢進する傾向とともに食道・胃逆流症(GERD)の増加とともにGERDに対する薬物治療として頻用されているプロトンポンプ阻害薬(PPI)が長期使用されるケースが増加しているのが現状である。最近、PPI長期投与による副作用に関する欧米からの研究報告が散見されている。すなわち、市中肺炎や骨折のリスク増加、胃酸分泌抑制に伴って生ずる腸内細菌叢の変化に起因するClostridium difficile(CD)腸炎など腸内感染症の増加、腎機能の低下などが報告されている。日本人を対象とした精度の高い臨床研究によるエビデンスはないが、PPIの過剰投与に関する副作用や不必要なPPIの処方による医療費の増大にも注意するべき時代となっている。

代替エンドポイントの適否は臨床試験でなくても確認できる(解説:折笠秀樹氏)

評価項目(エンドポイント)には臨床と代替があります。たとえば、高血圧症であれば、臨床は脳心疾患であり、代替は血圧値です。代替である血圧値の低下が立証されれば、新薬の承認を得ることができます。その前提は、血圧値と脳心疾患の間に相関があることです。がんを除く32領域の慢性疾患で使われた37個の代替エンドポイントに対して、臨床エンドポイントとの相関性を調査しました。臨床試験から成るメタアナリシスで確かめられたのは、15個(41%)だけでした。残りの22個(59%)では、そうしたメタアナリシスはなかったようです。よく眺めると、メタアナリシスがないのは希少疾患が多そうでした。

うっ血やLVEFの低下がある急性心筋梗塞では、SGLT2阻害薬の追加により心不全入院を予防できる可能性(解説:原田和昌氏)

心不全ステージBである急性心筋梗塞(MI)患者では心不全(HF)発症リスクが高く、とくにうっ血やLVEFの低下がある場合は予後不良とされる。SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、2型糖尿病、CKD、HF患者における心血管イベント抑制効果が示されており、MI後の心不全発症の予防も期待される。Butler氏らは、MI後のHF発症に対するエンパグリフロジン上乗せの有効性と安全性を検証する国際共同第III相多施設ランダム化並行群間プラセボ対照優越性試験EMPACT-MI試験を行った。急性心筋梗塞(STEMIまたはNSTEMI)発症後14日以内でLVEFが45%未満、またはうっ血が認められる18歳以上のHF高リスク患者6,522例が対象で、慢性HFの既往、1型糖尿病、eGFR 20mL/分/1.73m2未満などは除外した。2型糖尿病31.9%、心筋梗塞の既往13.0%、STEMI 74.3%、三枝病変31.0%、心房細動10.6%などであった。RAS阻害薬、β遮断薬、MRA、スタチン、抗血小板療法などの標準治療がなされ、血行再建術は89.3%に行われた。主要評価項目は複合イベント(HFによる初回入院または全死亡)の発生であった。

認知症の人と抗精神病薬、深層を読む(解説:岡村毅氏)

実はこれは20年以上も延焼している問題だ。認知症の人のBPSD(行動心理症状)、たとえば自傷や他害、激しいイライラや怒り、幻覚といった症状は、本人にも介護者にも大変つらい体験である。非定型抗精神病薬(パーキンソン症候群などが比較的少ないとされる第2世代の抗精神病薬、具体的にはリスペリドン以降のもの)が精神科領域で使われ始めると、時を同じくして老年医学領域でも使われ始めたのは当然であった。もちろん、これは患者さんをいじめようと思って処方されたのではない。しかし、どうも肺炎や心不全などの有害事象につながっているのではということが指摘され始め、2005年に米国のFDAが死亡リスクを「ブラックボックス」で指摘してからは、使うべきではない、とされてきた。

レートコントロールと重篤な出血イベント(解説:後藤信哉氏)

非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法は広く普及した。心房細動の動悸に対してレートコントロールが必要となる。レートコントロールにはβ遮断薬かカルシウム拮抗薬を使っているケースが多いと思う。カルシウム拮抗薬としては、作用時間の短いベラパミルよりもジルチアゼムを使うことが多いと思う。レートコントロールで用いる薬と抗凝固薬の薬物相互作用などは十分に詳細に検討されてこなかった。薬物代謝的には、レートコントロール薬の代謝により代謝酵素が使用される結果、抗凝固薬の血中濃度が増加するリスクは想定された。本研究は後ろ向き観察研究コホートを用いて、レートコントロールに用いる薬剤による出血イベントリスクへのインパクトについての仮説産生を目指した。

50年代のすでに廃れた治療法に、もう一度光が当たるのか?(解説:野間重孝氏)

冠状静脈洞減圧術(Coronary Sinus Decompression:CSD)という名称で呼ばれる処置は、奇しくも1950年代のほぼ同時期に、まったく異なった2つの分野で開発された。1つはこの論文の研究対象となっている冠動脈疾患治療目的のCSDであり、もう1つは先天性心疾患の治療目的で開発されたCSDである。混乱を避ける意味でも、まず後者について簡単に解説した後、本題に入りたいと思う。

食物アレルギーに対するオマリズマブ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

食物アレルギーは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義されている。食物アレルギーに関わるアレルゲンは、食べ物以外のこともあり、その侵入経路もさまざまであることが知られている。免疫学的機序によりIgE依存性と、非IgE依存性に分けられるが、IgE依存性食物アレルギーの多くは即時型反応を呈することが多い。IgE依存性食物アレルギーはいくつかの病型に分けられており、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に分類される(『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)。食物アレルギーによって皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など、さまざまな臓器に症状が現れる。それらの症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療が推奨されている。IgE依存性食物アレルギーのうち、FDEIAは複数臓器・全身性にアレルギー症状が出現し、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性が比較的高いことが知られている。食物アレルギーの原因食物は鶏卵・牛乳・小麦とされていたが、最新の調査「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書では第3位にナッツ類が含まれる結果であった。一般的にナッツ類は種子が硬い殻で覆われたアーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどが含まれ、マメ科のピーナッツは含まれない。この報告書では食物アレルギーの85%に皮膚症状、36%に呼吸器症状、31%に消化器症状を認めたとし、ショック症状は11%であった。

Supra-annularの自己拡張弁はバルーン拡張弁に対して狭小弁輪患者のTAVIで優位に立てるか?(解説:上妻謙氏)

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、低侵襲かつ有効な治療のため、ほとんどすべてのAS単独手術患者に関して標準的な医療となってきた。今まで自己拡張型バルブでもバルーン拡張型バルブでも外科手術に対する優位性を示してきたが、本論文は北米、欧州、中東の83施設で行われた重症大動脈弁狭窄症を登録して行われたメドトロニックが主導した臨床試験である。自己拡張型デバイスであるEvolut Pro/Pro+/FXとバルーン拡張型デバイスであるSAPIEN3/SAPIEN3 Ultraを1:1で無作為化して比較した現役の人工弁によるデータである。

TAVIとSAVRの比較試験をただちにやめてガイドラインを改訂すべき時である(解説:上妻謙氏)

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、低侵襲かつ有効な治療のため世界中で外科手術(Surgical AVR=SAVR)との無作為化試験が行われ、手術高リスクのみならず低リスクの患者においても明確な安全性を示し、ほとんどすべての生体弁を植え込むAS単独手術患者に関して標準的な医療となった。そういった無作為化試験は、メーカー主導で行われたものが代表的な試験2つと医師主導で行われたものがいくつかあるが、本論文はドイツの38施設で行われた症候性重症ASを登録して行われた医師主導の試験である。

抗血小板療法を「軽くする」時代(解説:後藤信哉氏)

筆者の循環器内科医としてのキャリアは1980年代に始まった。心筋梗塞は入院後も突然死リスクのある恐ろしい疾病であった。抗血小板薬としてアスピリンが標準治療と確立されつつある時代であった。PCIの適応は限局的で、基本的に急性冠症候群にはPCIの選択はなかった。t-PAが急性期予後を改善する薬剤として注目されていた。心筋梗塞発症後も血栓の再発による予後悪化が常に危惧されていた。心筋梗塞急性期のPCIの普及により、発症後の生命予後は改善した。しかし、ステント血栓症などにより、急変が数週後に起こることがあった。薬剤溶出ステントでは、数ヵ月後のlate stent thrombosisも問題とされた。滅多に起きないけれど起こると重篤な合併症であるステント血栓症の予防のために、アスピリン・クロピドグレルの併用療法が普及した。標準量のクロピドグレルよりも強力なP2Y12阻害効果を有する用量のチカグレロル、プラスグレルも開発され普及した。抗血小板併用療法により重篤な出血合併症である頭蓋内出血も増えた。しかし、臨床医は血栓の予防に注目してきた。

薬剤溶出性バルーンがもたらす新たな世界(解説:山地杏平氏)

パクリタキセルを用いた薬剤溶出性バルーン(商品名:Agent、 ボストン・サイエンティフィックジャパン)が、再狭窄に対する治療においてFDAで認可を受けるに当たり、通常のバルーンと比較するRCTが行われた。1次エンドポイントは、1年のIschemia-driven target lesion failureであり、予想通り、通常のバルーンでの28.6%のイベント発生率と比較し、Agentバルーンは17.9%と有意にイベント発生率は低く、これを受けて米国においてFDAで認可が得られた。

新型インフルエンザ、新型コロナ両パンデミックは世界人口動態にいかなる影響を及ぼしたか?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

米国・保健指標評価研究所(IHME)のSchumacher氏を中心とするGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study (GBD) 2021(GBD-21と略記)の研究グループは、1950年から2021年までの72年間に及ぶ世界各国/地域における年齢/性差を考慮した人口動態指標に関する膨大な解析結果を発表した。GBD-21では、72年間における移住、HIV流行、紛争、飢餓、自然災害、感染症などの人口動態に対する影響を解析している。世界の総人口は1950年に25億であったものが2000年には61億、2021年には79億と著明に増加していた。世界の人口増加は2008年から2009年に最大に達し、それ以降はプラトー、2017年以降は減少傾向に転じている。本論評では、GBD-21に示された解析結果を基に、人類の人口動態に多大な影響を及ぼしたと予想される2009~10年の新型インフルエンザ(2009-H1N1)と2019年末から始まった新型コロナ(severe acute respiratory syndrome coronavirus-2:SARS-CoV-2)両パンデミックの影響に焦点を絞り考察する。

慢性腎臓病の入院抑制を意図した電子記録+診療推進者介入の効果は証明されず(解説:浦信行氏)

慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病、高血圧は腎不全に至る3大疾患であるが、これらを合併した症例に1年間の電子記録+診療推進者介入が入院を減少させるかを、非盲検クラスター無作為化試験で検討した成績がNEJM誌に報告された。その結果は4月17日公開のジャーナル四天王に詳述されているが、主要アウトカムと副次アウトカムのいずれも通常ケア群に対して有意な効果を示さなかった。結果は1年という比較的短期間の検討であることが影響した可能性は否定できない。加えて腎機能障害の程度もeGFRで49mL/min程度、HbA1cで7.5%前後、血圧は133/73mmHg前後といずれも比較的コントロールされており、また使用薬剤もRA系阻害薬が68%ほどの症例に使用されており、通常ケア群においても良好な治療がなされていることで差がつきにくかった要素もあると思われる。関与した診療推進者は看護師あるいは薬剤師であった点も介入の限界をうかがわせる。腎機能障害に対する運動療法の効果や栄養摂取バランスの効果も注目されるようになった昨今、介入者がリハビリ職や栄養士であればどうであったか。フレイルやサルコペニア、栄養バランスに介入する試みであれば、違った結果を見られたかもしれない。BMIは33と肥満者が多いが、サルコペニア肥満も機序は異なるが心血管疾患の有意なリスクである。

CPRはいつまで続けるべきか? In-Hospital CPA レジストリからの報告(解説:香坂俊氏)

レジストリデータとは臨床的なデータベースのうちで「特定の手技・手術や疾患イベント[診断確定や入院等]を起点として収集されるもの」と自分は考えていますが、本研究はこの特性をフルに活かした形で、心肺蘇生(CPR)に関する重要な情報の提供を行っています。研究の内容を非常に短く要約すると、「CPR開始から32分が経過すると神経学的に予後が良好な退院率は1%未満となり、39分が経過すると生存退院率そのものが1%未満となる」ということになりますが、この研究の長所としては、

低リスク子宮頸がん、単純子宮全摘は広汎子宮全摘と比較し3年以内の骨盤再発率について非劣性(解説:前田裕斗氏)

広汎子宮全摘術は子宮(+卵管・卵巣)に加えてその周辺組織を切除する手術で、子宮頸がんI期・II期で行われることがある。早期の低リスク子宮頸がんでは、子宮傍組織浸潤は1%未満でしか認められないと複数の後ろ向き研究が報告しており、広汎子宮全摘術の必要性が議論されている。今回のSHAPE試験では、早期の低リスク子宮頸がんについて単純子宮全摘術+骨盤内リンパ節郭清の広汎子宮全摘術に対する3年以内の再発に関する非劣性が確かめられた。結果は3年以内の骨盤内再発について非劣性が示されたほか、術後4週間以内の有害事象や、術後4週間以内、以降ともに尿閉や尿失禁の発生率は単純子宮全摘術で有意に低かった。

sFlt-1/PlGFの繰り返し検査は妊娠高血圧腎症に伴う新生児合併症率を低下させず(解説:前田裕斗氏)

Soluble fms-like tyrosine kinase-1(sFlt-1)と血管新生因子、とくに placental growth factor(PlGF)を用いた検査は、妊娠中から後期にかけて妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦について1週間以内の発症可能性を予測するための検査であり、日本でも妊娠18週から36週未満の間に、原則一連の妊娠に対して1回のみ算定することができる。今回のPARROT-2試験の前身であるPARROT試験では、PlGFベースの検査結果を診療に利用する群で妊娠高血圧腎症の診断までの期間が有意に早くなり、母体合併症の有意な減少を認めた。PARROT-2試験ではPlGFベースの検査を繰り返し行い、結果を利用しながら管理する群と管理に検査結果を利用しない群で新生児合併症を主要評価項目としてランダム化比較試験が行われた。