CLEAR!ジャーナル四天王|page:80

エボラ、マールブルグウイルスワクチンの安全性と免疫原性(解説:吉田 敦 氏)-302

 西アフリカ3国でのエボラウイルス感染症の急激な増加により、エボラウイルスによるアウトブレイクはかつてない規模に達している。高い致死率と確実に治療できる薬剤がない中で、ワクチンの開発が模索されてきたが、今回エボラウイルス、マールブルグウイルスそれぞれのDNAワクチンが開発され、ウガンダ人で安全性と免疫原性が評価された。Lancet誌オンライン版2014年12月23日号の発表より。

LancetとNEJM、同じデータで割れる解釈; Door-to-Balloon はどこへ向かうか?(解説:香坂 俊 氏)-300

 Door-to-Balloon Time(DTB)に関する議論が脚光を浴びている。医学界で最も権威が高い2誌(NEJMとLancet)がDTBに関する解析結果を掲載し、しかもその指し示す方向が正反対だったのである。さらに驚くべきことに、この2つの解析は同じデータセットから抽出されたものであった。大いなる矛盾ともいえるこの結果をどう解釈していくべきなのか、順番にみていきたい。

牛乳の適正利用については地域差・人種差を 踏まえた議論が必要(解説:細井 孝之 氏)-298

 この論文はスウェーデンの大規模コホートを対象として、牛乳摂取と骨折や死亡リスクとの関連を検討したものである。牛乳の多量摂取が、骨折頻度のみならず死亡リスクを上昇させたという結果を提示しており、「牛乳は健康によい」という一般的な理解に反する報告として注目を浴びた。その後さまざまなコメントが発せられた。それらは大きく2つに分けられる。

食後血糖の上昇が低い低glycemic index(GI)の代謝指標への影響(解説:吉岡 成人 氏)-297

 EBMならぬ“Advertising based medicine”の領域では、15年ほど前から「糖尿病患者における食後高血糖は虚血性心疾患のリスクファクターである」というキャッチコピーが飛び交い、多くの医療従事者たちに事実とは異なる情報を提供している。確かに、経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を実施した際の2時間値は心血管イベントや死亡のリスクであることが、DECODE(Diabetes Epidemiology; Collaborative analysis of Diagnostic criteria in Europe)study 、舟形町研究など、欧州のみならず日本においても、多くの疫学研究で確認されている。

SYNAPSE試験:重症の外傷性脳損傷(TBI)に対してプロゲステロンは無効(解説:中川原 譲二 氏)-296

 プロゲステロンについては、これまでに外傷性脳損傷(Traumatic brain injury: TBI)の動物モデルにおける確かな効果と、2件の第II相無作為化比較試験(SYNAPSE TrialとPROTECT III Trial)における臨床的有効性が見いだされていた。SYNAPSE Trial の研究者たちは、大規模で前向きの第III相無作為化比較試験 を実施し、プロゲステロンの有効性と安全性を検討したが、残念ながらプロゲステロンが無効であったことをNEJM誌の12月10日号に報告した。

誇大な新聞報道にはご注意を!(解説:折笠 秀樹 氏)-295

 本論文では、科学論文に関する新聞報道(Press Release)462件を対象にして、その報道の影響について調査した。論文が出版されると同時に新聞報道のなされることがある。この新聞報道が誇張過ぎると、それが波及し、他のメディアでも誇大報道がなされる傾向のあることがわかった。この意味で、最初の新聞報道では正確に報道することが大切である。

本当の「新規の抗凝固療法」?従来のワルファリン、ヘパリンでは影響を受けない血液凝固第XI因子機能低下による「出血しない抗凝固療法」への期待(解説:後藤 信哉 氏)-294

 新薬が開発されると「主作用」が「副作用」より効率的に発現することが期待される。抗凝固薬では「主作用」は心筋梗塞、脳梗塞、心血管死亡などの血栓イベントの低減であり、「副作用」は「重篤な出血イベントの増加」である。

企業スポンサー試験は結果が思わしくないと論文を作らない?(解説:折笠 秀樹 氏)-293

 外科療法に関するランダム化比較試験(RCT)395件を題材にして、臨床試験が予定よりも早期に中止されたのはどういった試験かを調査した。また、臨床試験は完了したものの論文を作らなかったのはどういった試験かも調査した。そして、早期中止に至ったのはどういった試験かも調査した。

治療抵抗性の慢性咳嗽に対する新選択肢(AF-219)の有効性について(解説:小林 英夫 氏)-291

 外来診療で、咳止めを処方してくださいという声をしばしば耳にされませんか。そんなときはどう対処されていますか。当然ですが、疾患を問わずすべての咳嗽を抑制できる夢の薬は存在していません。細菌性肺炎に鎮咳薬のみを投与しても効果は期待できないので、まず咳嗽の基盤病態の鑑別が医師の出発点ですが、受診者は余計な検査などせず咳止めを出してくれればそれでけっこうです、と主張することも少なくないと思います。

大動脈弁狭窄症はやはり高コレステロール血症が原因か?(解説:佐田 政隆 氏)-290

 動脈硬化性大動脈弁狭窄症患者は、高齢化社会とともに年々増加しており、大きな社会問題になっている。進行すると突然死や難治性心不全の原因となるが、効果的な薬物療法はない。大動脈弁置換術が唯一有効な治療法であるが、人工心肺を用いた大手術であり、高齢者では危険性が高い。現在、より侵襲が少ない、経カテーテル大動脈弁留置術 (TAVI) が普及しつつあるが、高額であり、今後、その適応が問題になると思われる。疫学研究では、血管の動脈硬化症と同様に、高LDLコレステロール(LDL-C)血症との関連が示唆されている。脂質異常症に介入することで、大動脈弁狭窄症の発症、進行を抑えることができれば最善であるが、それを支持するエビデンスが存在しないのが現状である。

Bare metal stentは本当に劣っているのか?(解説:上田 恭敬 氏)-288

 従来のメタ解析とは異なり、対象となる試験内の個々の症例データを用いて解析する新しいメタ解析の手法で、5つの無作為比較試験(RCT)の4,896症例のデータを用いて、bare metal stent(BMS)とcobalt-chromium everolimus eluting stents(EES)の成績を比較検討した報告である。各試験のPIによって、それぞれの試験の対象症例個々のデータがこの解析のために提供されている。対象となる試験の選択基準は、BMSとEESの無作為比較が行われた試験で1年以上のフォローアップ期間があるものとしている。あらかじめ決められた主要評価項目は心臓死で、副次評価項目は全死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、標的血管再血行再建(TVR)、心臓死+心筋梗塞、全死亡+心筋梗塞である。

ALK陽性肺がんに対する標準治療を確立した重要な試験(解説:倉原 優 氏)-285

 このPROFILE 1014試験は、未治療のALK陽性進行非扁平上皮非小細胞肺がんの患者343例を、クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)250mg1日2回(3週間1サイクル)投与する群(172例)と標準化学療法を行う群(171例)にランダムに割り付けたものである。標準化学療法群は、3週間おきにペメトレキセド500mg/m2、シスプラチン75mg/m2あるいはカルボプラチンAUC5~6を最長6サイクルまで投与している。重要な点は、両群とも増悪後にクロスオーバーが認められている点である。プライマリエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)、セカンダリエンドポイントは奏効率、全生存期間(OS)などである。

PRIZE試験:早期関節リウマチにおけるエタネルセプト減量による寛解維持(解説:金子 開知 氏)-284

 関節リウマチ (RA) 治療は、メトトレキサート (MTX) や生物学的製剤をはじめとする強力な治療薬によりパラダイムシフトをもたらした。生物学的製剤は、優れた寛解率や関節破壊抑制効果を持つが、高薬価であり、寛解後はいつまで継続すべきであるかという課題がある。