CLEAR!ジャーナル四天王|page:88

大気汚染を無視できない 生活習慣病としての急性心不全(コメンテーター:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(122)より-

 1900年初頭、英国でコレラが発生したとき、その対策を立てる中で疫学が生まれた。これにより公衆衛生学が進歩し、下水道の完備などによって感染症は、先進国では克服された。その後、大気汚染による喘息の発生も公害対策により減少した。下水道の完備や環境対策によって、汚染による疾患は減少したように思われていた。

低線量CTによる検診は肺がん死を減少させうるか(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(121)より-

 本論文は、2011年に発表されたAmerican National Lung cancer Screening Trial(NLST)、の追加解析報告である。2011年報告は5万名以上という大規模集団での比較試験であり、低線量CT検診により20%の肺癌死亡減少効果が示されたエビデンスレベルの高い研究であった。

再発・難治性B細胞リンパ増殖性腫瘍に対する新規分子標的薬イブルチニブ(コメンテーター:大田 雅嗣 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(120)より-

Bruton's Tyrosine Kinase(BTK) 阻害薬イブルチニブは、B細胞受容体シグナル伝達系阻害薬で、B細胞性慢性リンパ増殖性疾患に対する有望な治療薬である。本論文は再発・難治性CLLに対するPhase 1b-2多施設研究である。用量にかかわらず有害事象の低さ、26ヵ月時点での無増悪生存率(PFS) 75%、全生存率(OS) 83%と、良好な長期有効率が報告されている。

うつ病に対する重点的介入により高齢者の死亡率が低下する(コメンテーター:小山 恵子 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(118)より-

 高齢者のうつ病は、高齢者の自殺と密接に関連するばかりでなく、さまざまな身体疾患や健康問題への影響が指摘されている。うつ病患者において、糖尿病や心血管疾患に対する治療やセルフケアへのアドヒアランスが不良になること、身体活動が低下することなどの要因が、死亡率を高めることにつながると考えられている。

ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

 MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。

関節リウマチの医療費の抑制は可能か?(コメンテーター:杉原 毅彦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(116)より-

 生物学的製剤(TNF阻害薬 IL-6阻害薬 T細胞選択的阻害薬)の登場により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールが可能となったが、関節リウマチの医療費が高騰している。もっともスタンダードな治療法であるメトトレキサート(MTX)で疾患活動性のコントロールが不十分であると判断した場合、リウマチ専門医はTNF阻害薬をMTXに追加することが増えてきた。

虚血性脳卒中の一次予防における予測能についての、新しいアルゴリズムQ Strokeと従来のアルゴリズムとの比較―前向きオープン試験―(コメンテーター:山本 康正 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(115)より-

 英国では、冠状動脈疾患や虚血性脳卒中・一過性脳虚血発作などの心血管病の危険因子や予測因子は、QRISK2で代表されるようなアルゴリズムが広く一般医の臨床現場で電子化され使用されている。今回、QRISK2に項目を追加して「Q Stroke」という、脳卒中・一過性脳虚血発作予測の絶対リスクを算出できるようなアルゴリズムを作成した。

脳卒中にも抗血小板併用療法は必要か?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(114)より-

 心筋梗塞急性期には、多くの症例が冠動脈インターベンションを受ける。内科的治療に終わった症例であっても、急性冠症候群後1年間はアスピリンとクロピドグレルの抗血小板併用療法を行なうことにより、心血管死亡/心筋梗塞/脳卒中のリスクを低減できることが、1990年代に施行されたランダム化比較試験により示された。脳梗塞と心筋梗塞、急性冠症候群には類似点が多い。いずれも動脈硬化を基盤とする動脈系の血栓性疾患である。

急性期脳内出血に対する迅速降圧治療(<140mmHg)は、死亡や重度身体障害を減らすことはないが、機能的転帰の改善をもたらす(コメンテーター:中川原 譲二 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(112)より-

 INTERACT2(Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Hemorrhage Trial 2)は、脳内出血患者に対する迅速な積極的降圧治療の有効性と安全性を評価することを目的に、多施設共同前向き無作為化非盲検試験として行われた。被験者は、発症6時間以内の脳内出血患者2,839例(平均年齢63.5歳、男性62.9%)で、積極的降圧群(1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHg、1,403例)またはガイドライン推奨群(1時間以内の収縮期血圧目標値<180mmHg、1,436例)に割り付けられた。主要転帰は90日後の死亡と重度身体障害[modified Rankin scale (mRS)で定義されるスコア3~6(死亡)]とされた。

アルツハイマー病およびその他の認知症疾患が中国社会に及ぼす影響は甚大である(コメンテーター:粟田 主一 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(110)より-

 厚生労働省より示される介護保険 要介護認定調査(認知症高齢者の日常生活自立度II以上)に基づく認知症高齢者数推計値は、2010年の段階では280万人(65歳以上の9.5%)であったが、このほど、厚生労働科学研究の調査結果に基づき、439万人(15%)に上方修正された。

中心静脈カテーテルの末梢静脈挿入は静脈血栓症のリスクとなるか?(コメンテーター:中澤 達 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(109)より-

 末梢静脈挿入の中心静脈カテーテルは増加している。理由としては、挿入が容易であること、使用法の多様性、対費用効果が高いことが挙げられる。欧米では看護師により挿入できることがコスト削減になっていると推察される。静脈血栓症は、費用、罹患率・死亡率も増加する重大な合併症で、発症率が1~38.5%と報告されている。しかし末梢静脈挿入とその他との相対危険度は解明されていない。

重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(108)より-

 インフルエンザは急性熱性ウイルス性疾患であり、自然に軽快することが多いが、一部の患者では肺炎などを合併し、重症化することが知られている。重症インフルエンザ患者に対してエビデンスの存在する治療方法はないが、WHOのガイドラインでは、パンデミック2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症の重症例や鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症に対して、オセルタミビル(商品名:タミフル)の高用量投与や治療期間の延長を考慮すべきと述べられている。

COPD治療薬による肺炎発症リスクの差があるだろうか?(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(106)より-

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療において、吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬配合剤は標準的治療の1つとして位置づけられ、本邦でも2種の製品が利用可能となっている。本研究(PATHOS)では、そのいずれかで、治療中のCOPD症例において、肺炎発症のリスクと肺炎関連mortalityに差があるかどうかを後方視的に観察している。本論文の評価の大前提として、観察研究の限界を熟知したうえで評価しなければならないことを強調しておきたい。

「脳卒中再発予防のためには収縮期血圧130mmHg未満」を支持する結果(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(105)より-

 脳卒中既往歴のある症例の降圧目標値に関して、欧州のガイドラインは130/80mmHgとしている。これは、脳卒中再発予防におけるACE阻害薬ペリンドプリルの有用性を検討したPROGRESS試験の結果を参考にしている。一方、わが国のガイドライン2009年版では140/90mmHgとしているが、これに関しては反論も多い。脳卒中初発および再発の、最大のリスク因子は高血圧であることに議論の余地はなく、これまでの介入試験でも”The lower the better”を証明してきた。

H.pylori血清学的動態に関連する遺伝子座の同定(コメンテーター:上村 直実 氏、溝上 雅史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(104)より-

 Julia Mayerle氏らは、欧米人集団を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)およびexpression-QTL(eQTL)解析により、TLR-1遺伝子がヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)感染に対する抵抗性と関連することを明らかにした(rs10004195、p=1.42×10-18、オッズ比:0.70)。本報告では、はじめに抗ヘリコバクターピロリ血清抗体価が高い群2,623検体と低い群7,862検体を用いて2つのGWASを独立に実施した上で、メタ解析によりTLR遺伝子を含む遺伝子領域(4p14)を同定した。

乳がん予防にSERMは有効か?(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(103)より-

 女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏は、骨粗鬆症や高脂血症の原因となる。また、エストロゲン補充療法は、これらの症状を改善させる作用を持つが、乳がんのリスクを増加させることが問題となる。SERMとは、選択的エストロゲン受容体モジュレーターのことであり、エストロゲン受容体に相互作用を示すことにより、臓器特異的に、アゴニスト作用あるいは、アンタゴニスト作用を有する治療薬として期待がされている。