CLEAR!ジャーナル四天王|page:64

LDL-C低下によるプラークの退縮はどこまで可能か?(解説:平山 篤志 氏)-624

今回の米国心臓病学会のLate Braking Clinical Trialの目玉の1つである、GLAGOV試験の結果が発表された。試験のデザインは、冠動脈疾患患者にスタチンが投与されていてLDL-C値が80mg/dLを超える患者を対象に、スタチン治療のみを継続する群(プラセボ群)と、スタチン治療に抗PCSK9抗体であるエボロクマブを追加投与する群(エボロクマブ群)で、LDL-C値の低下の違いにより血管内超音波で測定したプラーク体積(percent atheroma volume)の変化の差を検討するものであった。

新しい戦略に基づく認知症新薬開発ものがたり(解説:岡村 毅 氏)-621

臨床神経学の新しい時代の幕開けを告げる論文かもしれない。もっとも筆者は精神科医であり、神経学者からみれば素人みたいなものだ。東大にいると優秀な神経学者と親しく交流する機会が多く、彼らの頭脳明晰さには舌を巻く。きちんと解説できるだろうか…。一方で、万人に対してわかりやすく書くことは私の得意とする部分だと思い引き受けた。読み返すとやや劇画調だがご容赦いただきたい。

血栓除去術の鎮静管理は、全麻に比べ早期の神経学的改善をもたらさない(解説:中川原 譲二 氏)-620

Heidelberg大学病院神経科のSchonenberger氏らは、血栓除去術が行われた前方循環の急性虚血性脳卒中患者において、鎮静管理群と全身麻酔管理群を無作為に比較したところ、鎮静管理は24時間後の神経学的改善をもたらさなかったことを示した。この研究結果から、鎮静管理の利点を支持しないと結論した(JAMA誌オンライン版2016年10月26日号掲載の報告)。

意外に多い重病小児急性腎障害の発症―尿量チェックが大事―(解説:浦 信行 氏)-619

従来より、種々の疾患で重病の状態にある患者は急性腎障害(AKI)を合併しやすく、これが生命予後を脅かすとの指摘がなされている。重病小児におけるAKIの生命予後に関する研究は2つあり、生命予後予測に関して一定の有用性が示されていたが、単一施設後ろ向き観察研究のみに限られていた。本研究は国際的な大規模前向き疫学研究であり、集中治療室(ICU)での治療を要する重病小児~若年成人の4分の1以上の26.9%がAKIを発症し、11.6%の重症のAKIでは死亡リスクの増加を招くことがNEJM誌に報告された。

近年の乳がん死亡率低下におけるマンモグラフィ検診の寄与は、これまで考えられてきたよりも限定的であるかもしれない(解説:下井 辰徳 氏)-618

米国では、乳がん死亡率は経年的に減少していることが知られている。ただし、この理由が乳がん検診の普及によるものと、治療の発達のいずれが大きいのかはわかっていない。乳がん検診の利益について検討するため、Welch氏らは、1975年から2012年までのSEERデータベースの乳がん診断数について検討した。期間は、米国におけるマンモグラフィ検診の出現前の期間、検診プログラムが普及していった期間、および普及後の期間が含まれている。

完全磁気浮上型HeartMate IIIは第4世代のLVADとなるか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-617

植込み型左室補助人工心臓LVADは、第1世代の拍動流型、第2世代の軸流ポンプ型、第3世代の遠心ポンプ型に分類されることが多い。内科治療抵抗性の重症心不全に対して、REMATCH試験という金字塔を打ち立てた第1世代の拍動流型HeartMate Iは、第2世代のHeartMate IIに瞬く間に駆逐されたが、2008年以来世界中で植込まれ、現在でもベストセラーとなっているのは実はそのHeartMate IIのままである。より新しい技術と考えられた第3世代の遠心ポンプ型で、動圧浮上と磁気浮上を組み合わせたHVADは、ADVANCE試験の結果をみると脳血管障害やポンプ血栓症などの重大合併症はHeartMate IIと同等かむしろ多いという結果で、第3世代が第2世代を凌駕するには至っていない。

クランベリーカプセルで高齢女性の細菌尿と膿尿を予防できるか?(解説:小金丸 博 氏)-613

尿路感染症(UTI)は介護施設における代表的な感染症であり、UTIを繰り返す高齢者は多い。そのUTIの非抗菌的な予防法として期待されているのがクランベリーである。クランベリーに含まれるプロアントシアニジンには、大腸菌が尿路上皮に接着するのを阻害する働きが示されており、クランベリージュースがUTIの予防法として数多く検討されてきたが、有効性に関するエビデンスは一致していなかった。クランベリージュースの有効性が得られなかった研究では、その理由として、ジュースでは飲みにくくアドヒアランスが不良となり、十分量のプロアントシアニジンを摂取できなかったことが挙げられた。

NOBLE試験ではLM病変に対するPCI治療はCABG治療に対して劣性であった(解説:許 俊鋭 氏)-611

これまでのPCIに適したLM病変に対してPCIを推奨するとしたガイドラインは主に、SYNTAX試験結果に基づき作成されてきた。また、ガイドラインは無作為化試験であるLE MANS試験、PRECOMBAT試験、Boudriot試験などの結果も参照しているが、患者サンプル数が少ないため、PCIをunprotected LM病変の最良の治療法と決定するためにはエビデンスとしては弱いと考えられていた。

CABG手術時のトラネキサム酸投与は、術後出血リスクを半減する(解説:許 俊鋭 氏)-608

トラネキサム酸投与は開心術に伴う術後の出血傾向を抑制し、再手術を必要とした大出血または心タンポナーデの合併症を半減(1.4% vs.2.8%)させるという結論がこのRCTで証明され、逆にトラネキサム酸により血栓形成促進による非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、腎不全、または腸梗塞を増加させないことが証明された。今後、手術成績を向上させるうえでトラネキサム酸投与は有効である可能性が示唆された。

LDL-C低下に関与する遺伝子変異は2型糖尿病のリスク増加と関連(解説:小川 大輔 氏)-606

脂質異常症の治療としてスタチン薬が動脈硬化性疾患の予防のために用いられることが多いが、これまでにスタチン薬の使用は体重増加や2型糖尿病の新規発症と関連することが報告されている。一方、LDLコレステロールトランスポーターNiemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)の阻害薬であるエゼチミブの糖代謝に対する影響については不明である。今回、LDLコレステロールの低下に関与するNPC1L1遺伝子の変異と2型糖尿病の発症リスク増加との関連が報告された。