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臨床に即した『MRSA感染症の診療ガイドライン2024』、主な改訂点は?

 2013年に『MRSA感染症の治療ガイドライン』第1版が公表され、前回の2019年版から4年ぶり、4回目の改訂となる2024年版では、『MRSA感染症の診療ガイドライン』に名称が変更された。国内の医療機関におけるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の検出率は以前より低下してきているが、依然としてMRSAは多剤耐性菌のなかで最も遭遇する頻度の高い菌種であり、近年では従来の院内感染型から市中感染型のMRSA感染症が優位となってきている。そのため、個々の病態把握や、検査や診断、抗MRSA薬の投与判断と最適な投与方法を含め、適切な診療を行うことの重要性が増している。本ガイドライン作成委員長の光武 耕太郎氏(埼玉医科大学国際医療センター感染症科・感染制御科 教授)が2024年の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会で発表した講演を基に、本記事はガイドラインの主な改訂点についてまとめた。

うつ病の予防や治療に対するメトホルミンの可能性

 うつ病は、最も大きな障害をもたらす精神疾患の1つであり、その病態生理は、いまだ完全に解明されていない。中国・Nantong Stomatological HospitalのYuan-Yuan Cheng氏らは、メトホルミンの抗うつ薬治療としての可能性を検討するため、うつ病の発症と進行に対するメトホルミンのメカニズムなどに関する研究をレビューした。Biochemical Pharmacology誌2025年3月号の報告。  主な内容は以下のとおり。 ・うつ病の予防や治療に対するメトホルミンの可能性を検討した前臨床研究数は増加しており、血糖降下薬の第1選択薬であるメトホルミンがうつ病に多面的な影響を及ぼす可能性が強調されている。

肥満症に対するチルゼパチド、4月11日に発売/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注アテオス)について、3月19日に「肥満症」を効能または効果として薬価収載されたことを受け、4月11日に発売すると発表した。  チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子が、GLP-1受容体にも結合するように改変され、選択的に長時間作用するため週1回投与が可能。  本剤は、1回使い切りのオートインジェクター型注入器アテオスにより、週1回皮下注射で投与される。あらかじめ取り付けられている注射針が、注入ボタンを押すことで自動的に皮下にささり、1回量が充填されている薬液が注入される。患者さんが注射針を扱ったり、用量を設定したりする必要はない。

老後を健康に過ごすには足の健康から始めよう/科研・楽天

 科研製薬は、足に関わる生活習慣の改善を目的に、楽天モバイルとの共同プロジェクト「満足プロジェクト」で業務提携契約を締結した。このプロジェクトは、楽天モバイルの健康寿命延伸サポートサービス「楽天シニア」(現在300万ダウンロード/約7割が50代以上)を通じ、足のお悩みを把握すると同時に、足の健康に関する正しい情報を提供することで、健康満足度の向上に貢献することを目指すものである。両社は、このプロジェクト発足について、3月14日に都内でメディアセミナーを開催し、高齢者の運動器障害の観点からロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」と略す)についての概要と足の悩みの観点から巻爪、白癬などの診療と満足プロジェクトの概要が紹介された。また、科研製薬では、2025年3月27日に医療従事者向けのウェブサイト「KAKEN Medical Pro」を開設し、各製品情報に加え、足の健康を守るための「足」の疾患に関連する情報も発信し、医療従事者をサポートする。

世界初!デューク大学の医師らが生体ドナーからの僧帽弁移植に成功

 米デューク・ヘルスの医師らが、世界で初めて心臓ドナーから提供された僧帽弁を用いた移植手術を成功させたことを、2月27日報告した。この画期的な手術により、米ノースカロライナ州の3人の少女の命が救われたという。  この手術は、ノースカロライナ州ウィルソン在住のJourni Kellyさん(11歳)が、デューク大学で心臓移植手術を受けたことで可能になった。医師らは、彼女の元の心臓から健康な弁を二つ取り出し、他の子どもに移植したのだ。  弁の一つは、ノースカロライナ州シャーロット在住のクロスカントリーランナー、Margaret Van Bruggenさん(14歳)に移植された。Margaretさんは重度の細菌感染により緊急に僧帽弁置換術を必要としていた。もう一つの弁は、ノースカロライナ州ペンブローク在住の9歳のKensley Frizzellさんに移植された。Kensleyさんは、先天性の染色体異常であるターナー症候群で生まれ、心臓に構造的な異常が認められたため、生後2カ月を迎える前に、すでに2回の心臓手術を受けていた。

血液検査でIBSの原因食品を特定、症状改善に貢献

 血液検査によって過敏性腸症候群(IBS)患者の症状を引き起こし得る食品を特定し、食事から除去できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この血液検査の結果に基づく食事療法を実践したIBS患者の約60%で腹痛が軽減したのに対し、偽(シャム)の食事療法を実践した群ではその割合が約42%にとどまったという。米ミシガン大学消化器病学・肝臓病学主任のWilliam Chey氏らが実施した研究で、詳細は「Gastroenterology」に1月31日掲載された。  Chey氏は、「この血液検査はさらなる検証が必要だが、医療従事者が、個々のIBS患者に最適な食事アドバイスを提供する『精密栄養(プレシジョン・ニュートリション)』のアプローチに一歩近づく可能性がある」と述べている。研究グループによると、特定の食品がIBSの症状を悪化させ、発作を引き起こす可能性があることはよく知られているという。

デジタルゲームは高齢者に健康と幸せをもたらすのか

 ネット・ゲーム依存は身体活動の低下といった健康問題につながるが、高齢者の場合では、デジタルゲームにより身体活動が低下する可能性は低いということが明らかになった。千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の中込敦士氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Internet Research」に1月27日掲載された。  デジタルゲームは高齢者の間でも人気が高まっており、認知的、社会的、身体的なメリットをもたらす可能性がある。しかしながら、高齢者において、デジタルゲームが健康と幸福にどのような影響を及ぼすかは依然として不明だ。中込氏らは、全国で実施された日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを使用して、デジタルゲームが高齢者の健康と幸福に与える多面的な影響を評価した。

緑茶の認知機能予防効果、アジアと欧州で違いあり

 世界中で広く消費されているお茶に関する複数の研究において、緑茶には認知機能低下に対する潜在的な保護効果があることが示唆されている。この効果は、緑茶に含まれるポリフェノールと神経保護特性に起因すると考えられている。Shiyao Zhou氏らは、緑茶の摂取と認知機能低下リスクとの関連に関する最近の観察研究をシステマティックにレビューし、メタ解析を行った。Neuroepidemiology誌オンライン版2025年2月13日号の報告。  2004年9月〜2024年9月に公表された観察研究を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryよりシステマティックに検索した。緑茶の摂取と認知機能低下との関連について、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。さらに、サブグループ解析、異質性評価、出版バイアス評価、感度分析を行った。

再発/難治性多発性骨髄腫に対するテクリスタマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年3月19日、再発/難治性の多発性骨髄腫の治療薬として、B細胞成熟抗原(BCMA)およびCD3を標的とする二重特異性抗体テクリスタマブ(遺伝子組換え)(商品名:テクベイリ皮下注)を発売したことを発表した。本剤は、2024年12月27日に「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として承認され、2025年3月19日に薬価収載された。

進行食道がんへのニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法の日本人長期追跡データ(CheckMate 648)/日本臨床腫瘍学会

 CheckMate 648試験は、未治療の根治切除不能・進行再発食道扁平上皮がんを対象に、シスプラチン+5-FUの化学療法を対照として、ニボルマブ+化学療法、ニボルマブ+イピリムマブの優越性を報告した試験である。この試験の結果をもって両レジメンは「食道癌診療ガイドライン 2022年版」においてエビデンスレベルAで推奨されている。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)のPresidential Sessionでは、虎の門病院の上野 正紀氏が、本試験の日本人サブグループにおける45ヵ月の長期フォローアップデータを報告した。 ・試験デザイン:国際共同ランダム化第III相試験 ・対象:未治療の進行再発または転移食道扁平上皮がん(ESCC)、ECOG PS 0~1 ・試験群: 1)ニボ+イピ群:ニボルマブ(3mg/kg)+イピリムマブ(1mg/kg) 2)ニボ+ケモ群:ニボルマブ(240mg)+化学療法(シスプラチン+5-FU) ニボルマブおよびイピリムマブは最長2年間投与 3)ケモ群:化学療法単独(シスプラチン+5-FU) [主要評価項目]PD-L1(TPS)≧1%の患者における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全体集団のOS・PFS、奏効率(ORR)

胸腺がんにおけるアテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性(MARBLE):多施設共同単群第II相試験/Lancet Oncol

 胸腺がん(TC)は年間0.15例/10万人とされる胸腺上皮性腫瘍のうちの15%とさらにまれな疾患である。進行TCの1次治療は、カルボプラチン+パクリタキセルなどのプラチナ併用化学療法である。しかし、奏効割合(ORR)は30%、無増悪生存期間(PFS)の中央値は約5.0~7.6ヵ月である。既治療の進行TCに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤の試験でもORRは0〜22.5%に留まる。一方、ICI+化学療法の有効性を検討した試験はない。そのような中、順天堂大学の宿谷 威仁氏らは未治療の進行TCに対するICI+化学療法の国内15施設によるオープンラベル単群第II相試験を行った。

レブリキズマブ、日本人アトピー患者におけるリアルワールドでの有効性・安全性

 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として、2024年5月に発売された抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブについて、日本の実臨床における良好な有効性と安全性が示された。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らによるDermatitis誌オンライン版2月20日号への報告より。  本研究は2施設の共同研究であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者126例が対象。患者はレブリキズマブに外用コルチコステロイド薬を併用する16週間の治療を受けた。治療期間中に、以下の各指標が評価された:Eczema Area and Severity Index(EASI)/Investigator's Global Assessment(IGA)/Peak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)/睡眠障害NRS/Atopic Dermatitis Control Tool(ADCT)/Dermatology Life Quality Index(DLQI)/Patient Oriented Eczema Measure(POEM)/IgE抗体/Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC)/乳酸脱水素酵素(LDH)/末梢血好酸球数(TEC)

お酒をやめるとLDL-Cが上昇?~日本人6万人のデータ

 飲酒による健康への悪影響が広く報告されているが、飲酒を始めたときや禁酒したときにコレステロール値がどう変化するかはわかっていない。今回、聖路加国際病院の鈴木 隆宏氏らが日本人約6万人のコホート研究で評価した結果、飲酒者が禁酒するとLDLコレステロール(LDL-C)値が上昇し、HDL-コレステロール(HDL-C)値が低下することが明らかになった。逆に、非飲酒者が飲酒を開始したときはLDL-C 値の低下と HDL-C 値の上昇がみられた。これらの変化はどちらも飲酒量が多いほど顕著だったという。JAMA Network Open誌2025年3月12日号に掲載。

NVAFによる脳卒中リスクを低減、Amulet左心耳閉鎖システム発売/アボット

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に行われる経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)に有効なデバイス「Amulet(アミュレット)左心耳閉鎖システム」が2025年3月11日にアボットジャパンより発売された。  本システムは独自の2層構造によって、さまざまな形状・サイズの左心耳に対応できる特徴を持っていることから、既存製品では閉塞が困難とされていた左心耳に対しても、閉塞術を行うことが可能となる。また、左心耳の入口部を密閉することで術後のリークを防ぐことも可能となる。また、既存デバイス(WATCHMAN)を対象とした海外のAmulet IDE試験において、有意に高い左心耳閉鎖率が示され、術後3年時の抗凝固薬中止率も96.2%と有意に高い傾向が示された。

高齢乳がん患者へのアベマシクリブ、リアルワールドでの治療実態/日本臨床腫瘍学会

 日本においてアベマシクリブによる治療を受けた、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者の全体集団および高齢者集団(65歳以上)の患者特性、治療パターン、転帰をレトロスペクティブに解析した結果、両集団の治療開始から中止までの期間(TTD)や減量が必要となった割合は同等であり、高齢者でも適切な用量であればアベマシクリブによる治療は実施可能であることを、国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

固形がん患者における初回治療時CGP検査実施の有用性(UPFRONT)/日本臨床腫瘍学会

 本邦における包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP)は、「標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった(見込みを含む)」固形がん患者に対して生涯一度に限り保険適用となる。米国では、StageIII以上の固形がんでのFDA承認CGPに対し、治療ラインに制限なく全国的な保険償還がなされており、開発中の新薬や治験へのアクセスを考慮すると、早期に遺伝子情報を把握する意義は今後さらに増大すると考えられる。本邦の固形がん患者を対象に、コンパニオン診断薬(CDx)に加えて全身治療前にCGPを実施する実現性と有用性を評価することを目的に実施された、多施設共同単群非盲検医師主導臨床試験(NCCH1908、UPFRONT試験)の結果を、国立がん研究センター中央病院/慶應義塾大学の水野 孝昭氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

医学生/初期研修医時代に戻れるなら「直美」に進みたい?/医師1,000人アンケート

 初期研修を終えてすぐ、保険診療を経験せずに自由診療である美容医療業界に直接進む「直美(ちょくび)」の医師が増えている。診療科の医師偏在や医局の人材獲得が課題となっているなか、保険診療の医師は「直美」をどのように考えているのかを調査するため、CareNet.comでは会員医師1,024人を対象に「直美」に関するアンケートを行った(実施:2025年2月12日)。  Q1では、「直美」の増加を日本の医療における問題と考えているかどうかを聞いた(単一回答)。全体では、「非常に問題と考えている」が35.4%、「どちらかというと問題と考えている」が43.2%、「どちらかというと問題とは考えていない」が13.9%、「まったく問題とは考えていない」が7.5%であり、大多数の医師は問題と捉えていた。

CAR-T naive再発・難治性B細胞リンパ腫におけるエプコリタマブの有効性(EPCORE NHL-1)/日本臨床腫瘍学会

 抗CD3xCD20二重特異性抗体エプコリタマブは第II相EPCORE NHL-1試験で、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(R/R LBCL)患者に対する深く持続的な効果と管理可能な安全性を示している。同試験では、すでにCAR-T治療歴がある患者における有効性が示されている(全奏効割合[ORR]54%、完全奏効[CR]割合34%)。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)では、CAR-T未使用(CAR-T naive)集団のサブ分析をミシガン大学のYasmin H. Karini氏が報告した。

幼少期の好奇心が成人期のうつ病と強く関連

 うつ病は世界的な公衆衛生上の大きな問題であるが、これまでの研究で、幼少期の性格が成人期のうつ病に及ぼす影響については、ほとんど調査されていない。中国・吉林大学のChengbin Zheng氏らは、成人による自己評価の観点から、幼少期の好奇心が成人期のうつ病に及ぼす影響およびそのメカニズムの性差について調査した。Journal of Psychiatric Research誌2025年3月号の報告。  2020年の中国家庭追跡調査(China Family Panel Study)より抽出した成人1万7,162人のデータを用い、幼少期の好奇心、将来に対する自信、主観的な社会的地位、成人期のうつ病を評価した。PROCESS 4.1ソフトウエアプログラムを用いて、調整済み仲介モデルを分析した。

慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対してザヌブルチニブ発売/BeiGene Japan

 BeiGene Japanは、2025年3月19日、未治療および再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対して、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬ザヌブルチニブ(商品名:ブルキンザ)を発売したと発表した。  本剤は、未治療の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたSEQUOIA試験、再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたALPINE試験、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫患者を対象としたASPEN試験の3つの主要な第III相試験に基づき、2024年12月27日に承認されている。