医療一般|page:59

米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。  このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。

十代の肥満は若年成人期の腎臓病のリスク

 十代に肥満であることが、若年成人期の腎臓病発症リスク因子である可能性を示すデータが発表された。ヘブライ大学(イスラエル)のAvishai Tsur氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Pediatrics」に12月11日掲載された。BMIが基準範囲内ながら高値の場合も、リスク上昇が認められるという。  成人後の肥満が中高年期の慢性腎臓病(CKD)のリスク因子であることは知られている。CKDは腎不全のリスクであるだけでなく、心血管疾患のリスクも高めることから、早期発見と早期治療が必要とされる。しかし近年、小児や未成年の肥満が世界的に増加しているにもかかわらず、未成年の肥満がCKDのリスク因子なのか否かは明らかにされていない。そこでTsur氏らは、十代でのBMIと若年成人期(45歳未満)における初期のCKDとの関連をイスラエルの医療データを用いて検討した。

電話による緩和ケアでも患者のQOLは改善する

 命を脅かす慢性疾患を抱えている人に対する緩和ケアは、電話で行っても効果があるようだ。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全(HF)、および間質性肺疾患(ILD)の患者を対象にした臨床試験で、看護師やソーシャルワーカーが電話を通して症状の管理や心理社会的ケアを行ったところ、患者の生活の質(QOL)が有意に改善したことが明らかになった。米コロラド大学医学部教授のDavid Bekelman氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月16日掲載された。  Bekelman氏は、「われわれは、これらの病気に対する治療では良い成果をあげているが、患者のQOL向上に対してはもっとできることがある。多くの患者は、持続的な抑うつ、不安、息切れ、睡眠障害などの症状に悩まされ、病気を抱えながら生きることに大きな困難を感じている。これらの症状は早期死亡とも関連している」と話す。

前立腺がんに対する併用療法で無増悪生存期間が延長

 根治的治療後に生化学的に再発した前立腺がん患者に対するアンドロゲン除去療法(ADT)では、2種類または3種類の抗アンドロゲン薬を併用することで、単剤を投与する場合よりも無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することが、新たな臨床試験で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部のRahul Aggarwal氏らによるこの研究結果は、「Journal of Clinical Oncology」に1月23日掲載された。

ナノ粒子を用いた新治療でアレルギー反応を抑制できる?

 新たな標的療法により、ピーナツや花粉、猫など特定のアレルゲンに誘発される反応を抑制できる可能性が、米ノースウェスタン大学生体医工学分野のEvan Scott氏らによる研究で明らかにされた。この治療法は、ナノ粒子を用いて、即時型アレルギー反応を引き起こす免疫細胞である肥満細胞(マスト細胞)を不活性化するもの。マウスを用いた実験ではアレルギー反応を100%防ぐことに成功したという。この研究結果は、「Nature Nanotechnology」に1月16日掲載された。  人の体のほぼ全ての組織に存在する肥満細胞は、アレルギー反応に深く関与することが知られているが、血流の調節や寄生虫との戦いなど、他にも重要な役割を担っている。そのため、アレルギー反応を抑制する目的で全ての肥満細胞を除去してしまうと、健康を保つために有用な他の反応にまで悪影響が及ぶ可能性がある。

休暇中に働く医師、燃え尽き症候群のリスク高い

 超過勤務が多くなりがちな医師は、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高いという報告は数多い。また、労働者全般を対象とした研究では、休暇中に仕事を完全に切り離すことも重要であり、生産性を向上させ、精神的疲労を軽減させることが報告されている。医師における休暇の取得と休暇中の労働は、燃え尽き症候群や職業的充実感とどのように関連しているのか。米国医師会のChristine A. Sinsky氏らによる研究の結果がJAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載された。

閉経後早期乳がんへの術前内分泌療法、フルベストラントvs.フルベストラント+AI vs.AI/JAMA Oncol

 エストロゲン受容体(ER)陽性/ERBB2陰性の閉経後進行乳がん患者において、アナストロゾールへのフルベストラントの追加が生存率を改善させたことが報告されているが、早期乳がんにおける試験は行われていない。米国・Washington University School of MedicineのCynthia X. Ma氏らは、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者における術前内分泌療法(NET)としてのフルベストラント単剤およびアナストロゾールとの併用療法が、アナストロゾール単剤療法に比べて優れるかどうかについて検討した第III相無作為化試験の結果を、JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。  本試験はStageII~III、ER-rich(Allred score:6~8または>66%)/ERBB2陰性の閉経後乳がん患者が対象。アナストロゾール群(A群)、フルベストラント群(F群)、アナストロゾール+フルベストラント群(A+F群)に無作為に割り付けられ、それぞれ術前6ヵ月間の投与を受けた。

自転車通勤で糖尿病リスクに関連する慢性炎症が軽減

 自転車や徒歩で通勤している人は、2型糖尿病などのリスクと関連のある、全身の慢性炎症が軽減されていることを示すデータが報告された。ただし、有意な影響は、少なくとも45分以上の“アクティブな通勤”をしている人に限り観察されたという。東フィンランド大学のSara Allaouat氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Public Health」に12月8日掲載された。  組織のダメージの治癒過程や感染症抑止のための反応として生じる短期間の炎症は、生体にとって正常なものであり欠かせない。しかし、何らかの原因で全身性の異常な炎症が続いている場合、がんや2型糖尿病、心臓病などのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。

職場でのウェルネスプログラムは効果なし?

 多くの企業が、従業員に向けてマインドフルネス、ライフコーチング、睡眠の質の改善、その他多くの問題に焦点を当てた無料のウェルネスプログラムの利用を推奨している。しかし、このようなプログラムの中でウェルビーイングの向上に寄与するのはたった1種類に過ぎなかったことが、4万6,000人以上の英国人労働者を対象にした調査結果の解析から明らかになった。英オックスフォード大学のウェルビーイング・リサーチ・センターのWilliam Fleming氏によるこの研究結果は、「Industrial Relations Journal」に1月10日掲載された。  この研究は、Britain's Healthiest Workplace(BHW)調査の2017年と2018年のデータに基づくもの。BHW調査には、2014年から2018年の間に総計で233企業の従業員4万6,336人が参加し、繰り返し調査に回答していた。調査では、仕事の満足度やストレスレベルなどとともに、帰属意識や会社からのサポートレベル、トレーニングを受ける機会についても問われていた。Fleming氏は、個人レベルのウェルビーイングに対する介入の効果を、介入への参加者と非参加者の間で比較した。介入は、マインドフルネス、レジリエンス、ストレスマネジメント、リラクゼーションクラス、ウェルビーイングアプリなどで、その数は約90種類に及んだ。

ED治療薬、心臓病の薬との組み合わせは危険な場合も

 心疾患の治療目的で硝酸薬を使用中の男性が、バイアグラ(一般名シルデナフィルクエン酸塩)やシアリス(一般名タダラフィル)といった勃起障害(ED)治療薬を併用すると、死亡リスクや心筋梗塞、心不全などのリスクが高まる可能性が、新たな研究で示された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のDaniel Peter Andersson氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」1月23日号に掲載された。Andersson氏は「医師が、心血管疾患のある男性からED治療薬の処方を求められることが増えつつある」とした上で、「硝酸薬を使用している患者がED治療薬を併用することで、ネガティブな健康アウトカムのリスクが高まる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

切除不能肺がんに対する新アプローチ、小規模試験で有望な結果

 局所進行性で切除不能な非小細胞性肺がん(NSCLC)患者に対しては、標準的な化学療法に加え、高線量の放射線をがんに対してピンポイントで照射できる体幹部定位放射線治療(SABR、SBRTとも呼ばれる)を行うことで、患者の生存率向上が望める可能性のあることが、28人のNSCLC患者を対象にした初期段階の小規模試験で明らかになった。  研究論文の共著者である、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)放射線腫瘍学分野のBeth Neilsen氏は、「われわれが得た結果は、化学療法と、患者の腫瘍の位置や形状の治療による変化などを考慮して照射方法などを再検討しながら行うSABRの併用は、患者にとって有益なことを示すものだ」と述べている。詳細は、「JAMA Oncology」に1月11日掲載された。

ジャディアンス、慢性腎臓病で国内製造販売承認(一部変更)取得/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムおよび日本イーライリリーは2024年2月9日付のプレスリリースで、SGLT2阻害薬ジャディアンス錠10mg(一般名:エンパグリフロジン)について、日本ベーリンガーインゲルハイムが、慢性腎臓病に対する効能・効果および用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。  慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎障害を示す所見や腎機能の低下が慢性的に持続する疾患である。死亡や心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患のリスクファクターであり、進行すると末期腎不全に至り、透析療法や腎移植術が必要となることもある。慢性腎臓病の治療目的は、腎機能の低下を抑え末期腎不全への進行を遅らせること、および心血管疾患の発症を予防することである。

ニボルマブ、切除不能な進行・再発上皮系皮膚悪性腫瘍の効能追加承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは2024年2月9日、小野薬品が、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。  今回の承認は、慶應義塾大学病院主導の下、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍患者を対象に、ニボルマブの有効性および安全性を検討した医師主導治験(NMSC-PD1試験:KCTR-D014)の結果に基づいたもの。  同試験における中央判定奏効率は19.4%(6/31例、95%信頼区間:7.5〜37.5)を示し、主要評価項目を達成した。同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、既報と同様であった。 

コロナ感染拡大への祝日の影響、東京と大阪で大きな差

 祝日は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播に影響を及ぼしたのだろうか。京都大学のJiaying Qiao氏らが2020~21年の4都道府県のデータを数理モデルで検討したところ、祝日がCOVID-19伝播を増強したこと、またその影響は都道府県によって異なり、大阪で最も大きく東京で最も小さかったことが示唆された。Epidemiology and Health誌オンライン版2024年1月22日号に掲載。  本研究では、2020年2月15日~2021年9月30日における北海道、東京、愛知、大阪の4都道府県におけるCOVID-19発症と流動性のデータを収集し、祝日の感染頻度の増加を評価した。推定された実効再生産数と、調整前後の流動性、祝日、非常事態宣言を関連付けるモデルを作成した。必須の入力変数として祝日を含めた最も適合性の高いモデルを、祝日がない場合の有効再生産数の反事実を計算するために使用した。

高齢統合失調症患者の死亡リスクに対する薬物療法の影響

 人口の高齢化に伴い、統合失調症の罹患においても高齢者の有病率が増加しており、これまで以上に薬剤選択の重要性が増している。現在、高齢統合失調症患者に関するエビデンスが不足していることから、台湾・Far Eastern Memorial HospitalのJia-Ru Li氏らは、向精神薬の使用量および累積投与量が高齢統合失調症患者のすべての原因および原因別の死亡リスクに及ぼす影響を調査するため、コホート研究を実施した。Pharmaceuticals (Basel, Switzerland)誌2024年1月8日号の報告。  対象は、統合失調症と診断された高齢者6,433例。5年間のフォローアップ調査を実施した。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、鎮痛薬/睡眠薬の用量(低用量群、中用量群、高用量群)に関連する死亡リスクを、各用量群と投与なし群とで比較を行った。各用量群におけるすべての原因による死亡率および特定の原因による死亡率を比較するため、Cox回帰を生存分析に用いた。特定の向精神薬の投与量を変数とし、それに応じて共変量を調整した。

中間期乳がん、生殖細胞系列遺伝子変異と関連/JAMA Oncol

 検診と検診の間にみつかる乳がんは中間期乳がんと呼ばれ、検診でみつかる乳がんより臨床病理学的特徴が悪く、予後も不良である。これまで中間期乳がんと生殖細胞系列遺伝子変異との関連は研究されていないことから、今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJuan Rodriguez氏らが中間期乳がんと検診発見乳がんの識別に生殖細胞系列タンパク質切断型変異体(PTV)を適用できるかどうか検討した。JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月25日号に掲載。  この研究は、スウェーデンでマンモグラフィ検査を受けている40~76歳の女性で、2001年1月~2016年1月に乳がんと診断された全女性と、年齢をマッチさせた対照を対象としたもの。乳がん患者については2021年まで生存について追跡し、34の乳がん感受性遺伝子の生殖細胞系列PTVをターゲットシークエンシングにより解析した。

パンデミック中、妊娠合併症と出産の転帰の一部が悪化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、妊娠合併症と出産の転帰の一部は悪化していたことが判明した。日本の100万件以上の出産データを調査した結果、パンデミックにより妊娠高血圧や胎児発育不全、新生児の状態などに影響が見られたという。獨協医科大学医学部公衆衛生学講座の阿部美子氏らによる研究結果であり、「Scientific Reports」に11月29日掲載された。  パンデミックによる影響については国際的にも多く研究されており、死産の増加や妊産婦のメンタルヘルスの悪化などが報告されてきた。しかし、パンデミックの状況や国・地域の制限レベルなどにより、その影響は異なるだろう。日本でのパンデミックと妊娠や出産の転帰に関しては検討結果が限られており、日本全国レベルでの大規模な研究が必要とされていた。

「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」開催/厚労省

 2024年3月8日(金)、「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が会場+オンライン(Zoom ウェビナー)のハイブリット方式で開催される。2024年4月より医師に対する時間外労働の上限規制が適用開始となり、医学生や若手医師に、医師の働き方の実情、医師の働き方改革の内容と趣旨・目的、関係する法令などを周知することが重要となっている。本シンポジウムでは、実際に医学部設置大学において講義を行った医師による講義実例の紹介や、弁護士・大学教員・医学生とのパネルディスカッションが行われ、医師の働き方改革の趣旨などを医学生や若手医師に伝える意義、その効果的な方法について考える。

日本のプライマリケアにおけるベンゾジアゼピン適切処方化への取り組み

 日本において、プライマリケアにおける質の向上(QI)に対する取り組みは、まだまだ十分とはいえない。QIにおいて重要な領域の1つとして、ベンゾジアゼピンの適切な処方が挙げられており、高齢化人口の増加が顕著なわが国においてとくに重要である。地域医療振興協会の西村 正大氏らは、日本のプライマリケアクリニックにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRAs)の処方中止に対する医療提供者へのQIイニシアチブの実現可能性について検討を行った。BMC Primary Care誌2024年1月24日号の報告。  調査対象は、2020~21年にBZRAs処方中止イニシアチブに参加した日本の準公立クリニック11施設および医療提供者13人。クリニック規模に応じて層別化し、参加施設を診療監査のみまたは診療監査とコーチングの実施の2群にランダムに割り付けた。診療監査のため、2つのBZRAs関連指標を参加施設に提示した。QIの活動をサポートするため、毎月コーチングミーティングをWebベースで実施した。9ヵ月間の実施後、半構造化インタビューにより、内容分析を用いてテーマを特定した。特定されたテーマを整理し、実装研究のための統合フレームワーク-CFIR-を用いて、主要な要素を評価した。

新型コロナワクチンの国内での有効性評価、VERSUS研究の成果と意義

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの有効性を評価するため、VERSUSグループは国内の13都府県の医療機関24施設で2021年7月から継続的に「VERSUS研究」を行っている。本研究は、新型コロナワクチンの国内での有効性を評価し、リアルタイムにそのデータを社会に還元することを目的としている。今後はCOVID-19のみならず、新たな病原体やワクチンを見据えたネットワークを整備・維持していく方針だ。VERSUS研究のこれまでの成果と意義について、2024年1月20日にウェブセミナーが開催された。長崎大学熱帯医学研究所呼吸器ワクチン疫学分野の森本 浩之輔氏と前田 遥氏らが発表した。なお、BA.5流行期のワクチン有効性の結果は、Expert Review of Vaccines誌2024年1~12月号に論文掲載された。