腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:19

肺の中を泳ぐマイクロロボットが抗がん薬を効率的に投与

 肺の中を泳いで進み、抗がん薬をがん細胞に直接投与できる、極めて微小なロボット(マイクロロボット)の開発に関する研究成果が報告された。肺転移のあるメラノーマのマウスを用いた初期の試験で、このマイクロロボットによる治療によりマウスの平均生存期間が延長することを確認できたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)化学・ナノ工学教授のLiangfang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に6月12日掲載された。Zhang氏は、「マイクロロボットは、命に関わるさまざまな肺の病気と闘うために、肺組織全体に治療薬を積極的かつ効率的に送達できるプラットフォーム技術だ」と話している。

AKT阻害薬カピバセルチブ、使用のポイントと今後への期待/AZ

 アストラゼネカは、カピバセルチブ(商品名:トルカプ)について、「トルカプ 上市メディアセミナー ~進行再発乳がんへの有効性を示した世界初のAKT阻害薬~」と題したメディアセミナーを2024年6月21日に開催した。  本セミナーでは、がん研有明病院 乳腺センター センター長の上野 貴之氏より、カピバセルチブの臨床成績および遺伝子検査の現状について語られた。  閉経後ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性転移・再発乳がんに対する1次内分泌療法として、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬とCDK4/6阻害薬の併用が標準的に使用されているが、2次内分泌療法の最適な治療選択は確立されていない。そこでAKT阻害薬カピバセルチブなどの新たな治療選択肢が期待されている。

再発/転移上咽頭がんの1次治療、nab-TPC vs.GC/BMJ

 再発または転移のある上咽頭がんの1次治療において、nab-パクリタキセル+シスプラチン+カペシタビン(nab-TPC)療法はゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法と比較し優れた抗腫瘍効果と良好な安全性プロファイルを示したことを、中国・中山大学がんセンターのGuo-Ying Liu氏らが中国の4施設で実施した第III相無作為化非盲検比較試験の結果で報告した。著者は、「nab-TPC療法は再発または転移のある上咽頭がんに対する1次治療の標準治療と考えるべきであるが、全生存期間(OS)に対する有益性の確認には、より長期間の追跡調査が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年6月19日号掲載の報告。

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、QOLの評価(KEYNOTE-522)

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への術前・術後のペムブロリズマブ追加を検討したKEYNOTE-522試験で、主要評価項目の病理学的完全奏効と無イベント生存期間の有意な改善はすでに報告されている。今回、副次評価項目の患者報告アウトカムにおいてペムブロリズマブ追加による実質的な差は認められなかったことを、シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏らがJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2024年6月24日号で報告した。

再発・難治性DLBCL、複数の分子標的薬を含む5剤併用療法が有効/NEJM

 再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療において、ベネトクラクス+イブルチニブ+prednisone+オビヌツズマブ+レナリドミド(ViPOR)の5剤併用療法は、特定の分子サブタイプのDLBCLに持続的な寛解をもたらし、有害事象の多くは可逆性であることが、米国・国立衛生研究所(NIH)のChristopher Melani氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年6月20日号に掲載された。  研究グループは、DLBCLの複数の発がん性遺伝子変異を標的とするレジメンであるViPOR療法の安全性と有効性の評価を目的に、単一施設において第Ib/II相試験を行った(米国国立がん研究所などの助成を受けた)。  2018年2月~2021年6月に、年齢18歳以上でECOG PSスコアが0~2点の再発または難治性B細胞リンパ腫患者60例を登録した。このうち20例(DLBCL 10例を含む)を第Ib相試験、40例(すべてDLBCL)を第II相試験の対象とした。

転移乳がんへのCDK4/6阻害薬+内分泌療法の効果、HER2ゼロと低発現で解析(PALOMA-2、PALOMA-3)

 CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用は、転移を有するHR+/HER2-乳がんに対する1次治療として推奨されているが、HER2低発現とHER2ゼロのそれぞれに対する効果は不明である。今回、米国・Duke University School of MedicineのHuiyue Li氏らが、PALOMA-2試験とPALOMA-3試験の2次解析で、HR+でHER2低発現またはHER2ゼロの転移乳がんにおけるCDK4/6阻害薬と内分泌療法併用の有効性を評価したところ、HER2低発現患者で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が認められた。一方、HER2ゼロ患者では、前治療の内分泌療法で進行した患者では有意なPFS改善が認められたが、1次治療では有意ではなかった。eBioMedicine誌2024年6月10日号に掲載。

AIを用いた血液検査で肺がんを早期発見

 人工知能(AI)により、血液中のセルフリーDNA(cfDNA)と呼ばれるDNA断片のパターンに基づいて肺がんリスクのある人を特定できることが、新たな研究で示された。論文の共著者で、米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのVictor Velculescu氏は、「われわれは、医師の診察室で実施可能な簡便な血液検査を手に入れた。この検査により、CT検査で確認すべき肺がんの潜在的な兆候が認められるかどうかが分かる」と話している。研究の詳細は、「Cancer Discovery」に6月3日掲載された。  世界保健機関(WHO)によると、肺がんは世界で最も死亡率の高いがんである。肺がんリスクの高い人では、CTによる肺がん検診を毎年受けることで、まだ治療可能な段階の早期がんを発見でき、がんによる死亡を防ぐことが可能になる。米国予防医療専門委員会(USPSTF)は、喫煙歴がある50〜80歳の人に対し、肺がん検診を年に1回受けることを推奨しているが、実際に毎年、検診を受けているのはそのうちの6〜10%であるという。Velculescu氏は人々が検診を敬遠する理由として、予約から受診までにかかる時間の長さと低線量CT検査での放射線被曝を挙げている。

地中海食で女性の全死亡リスクが23%低下

 地中海式ダイエットを遵守している女性は全死亡リスク、がんや心血管疾患による死亡リスクが低く、この関連にはホモシステインなどの低分子代謝物質の多寡が寄与していることが明らかにされた。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のSamia Mora氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月31日掲載された。  地中海式ダイエットは、植物性食品(ナッツ、種子、果物、野菜、全粒穀物、豆類)を中心に、魚、鶏肉、乳製品、卵などのタンパク源とアルコールを適度に取り、油脂類はオリーブオイルから摂取し、赤肉、加工食品、菓子などは控えるという食事スタイル。既に多くの研究によって、地中海式ダイエットが健康リスクの抑制に有用であることが示されているが、全死亡リスクに関する長期間の追跡データは限られている。また、地中海食がどのように健康リスクを抑制するのかというメカニズムの理解はまだ不足している。これらの疑問点を明らかにするためMora氏らは、同院と米ハーバード大学により女性医療従事者対象に行われている疫学研究(Women's Health Study;WHS)のデータを用いた解析を行った。

CAR-T療法、2次がん・T細胞リンパ腫のリスクは?/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法では、2次がん、とくにウイルスベクターの組み込みに関連するT細胞腫瘍のリスクが新たな懸念事項となっているが、米国・スタンフォード大学のMark P. Hamilton氏らは、同大学医療センターで2016年以降にCAR-T細胞療法を行った症例について解析し、2次がんはまれであることを明らかにした。「クローンの関連を明確にし、ウイルスベクターのモニタリングに関する枠組みが必要と考えられる」とまとめている。NEJM誌2024年6月13日号掲載の報告。  研究グループは、2016年2月4日~2024年1月15日に、スタンフォード大学医療センターでCAR-T細胞療法を実施した724例(791件)について、2次がんの発生率を調査した。

オシメルチニブのEGFR陽性NSCLC1次治療、化学療法との併用で添付文書を改訂/AZ

 アストラゼネカは2024年6月25日、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の「用法及び用量に関連する注意」などにおける記載を変更し、電子化された添付文書(電子添文)を改訂したと発表した。EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬としてオシメルチニブと化学療法との併用療法が可能となる。  今回の改訂は、EGFR変異陽性NSCLC1次治療におけるオシメルチニブと化学療法の併用治療とオシメルチニブ単剤治療を比較した第III相FLAURA2試験の結果に基づくもの。試験の結果、同剤と化学療法の併用が可能と判断された。