精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:36

キノコと認知症リスク~日本での研究

 キノコは、食物繊維やいくつかの抗酸化物質が豊富な食材である。このようなキノコの食事摂取が認知症リスクの低下と関連しているかは、不明である。筑波大学の青木 鐘子氏らは、キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連を調査した。その結果、日本人女性において、キノコの食事摂取が認知機能障害リスクの低下と関連していることが示唆された。The British Journal of Nutrition誌オンライン版2024年1月19日号の報告。  1985~99年に毎年実施されていた心血管リスク調査に参加した3つの地域に在住する40~64歳の地域住民3,750人を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。認知症による障害が認められた事例を、1999~2020年に調査した。脳卒中の既往歴の有無にかかわらず、キノコの摂取量に応じた認知症発症数のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

双極性障害患者における摂食障害の有病率

 摂食障害と双極性障害は症状が類似しており、摂食行動や感情制御に根付いた特定の類似点が認められる。摂食障害と双極性障害の併存に関する研究は増えているものの、両疾患の同時進行に関する科学的データは十分に体系化されていない。ロシア・V.M. Bekhterev National Medical Research Center for Psychiatry and NeurologyのYana V. Yakovleva氏らは、双極I型およびII型障害患者におけるさまざまなタイプの摂食障害の有病率について、性別および両疾患の同時進行の臨床的特徴を考慮したうえで、スコーピングレビューを実施した。Consortium Psychiatricum誌2023年7月10日号の報告。  スコーピングレビューのためのPRISMAガイドラインに従い分析を行った。研究の検索にはMEDLINEデータベースを用いた。双極性障害および摂食障害と診断された患者に焦点を当てた研究を分析に含めた。摂食障害および双極性障害の診断の検証には、DSM-IV、DSM-5またはICD-10を用いた。レビュー結果の要約には、記述的分析法を用いた。

セマグルチドの使用は自殺念慮と関連しない

 2型糖尿病や肥満症治療のためにオゼンピックやウゴービなどのGLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使用していても、GLP-1受容体作動薬の非使用者に比べて自殺念慮が高まる可能性はないことが、電子健康記録(HER)のデータベースを用いた大規模レビューにより明らかにされた。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部Center for Artificial Intelligence in Drug DiscoveryのRong Xu氏らが米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月5日掲載された。  Xu氏は、2023年の夏にヨーロッパの規制当局が、セマグルチドに関連して自殺念慮が報告されたことを受けて調査に乗り出したことから、この問題に取り組むことを決めたと説明している。また、米食品医薬品局(FDA)も、最近公開された四半期報告書の中で、オゼンピックやウゴービを含む肥満症治療薬使用者から同様の報告があることを受けて調査中であることを明らかにしている。同氏は、セマグルチドを使用中の人では、アルコールや喫煙などの中毒性のある行動に対する興味が低下するという報告がある一方で、ヨーロッパではセマグルチドと自殺念慮の関連に関する調査が実施されたことに触れ、「一種のパラドックスとも言える状況が生じている」と話している。

ADHDは神経性無食欲症や大うつ病性障害の独立したリスク因子の可能性

 注意欠如・多動症(ADHD)は、神経性無食欲症や大うつ病性障害(MDD)などに対する独立したリスク因子であるとする研究結果が、「BMJ Mental Health」に9月5日掲載された。  アウグスブルク大学(ドイツ)のChrista Meisinger氏とDennis Freuer氏は、ADHDが、7種類の一般的な精神疾患〔MDD、双極性障害、不安障害、統合失調症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、神経性無食欲症、1回以上の自殺企図〕と関連するかを検討するため、2標本ネットワークのメンデルランダム化分析(MR、操作変数法の中で遺伝子変異を使用)を実施した。まず、単変数MRにより、全体効果(どの疾患がADHDと関係するのか)、および交絡または媒介因子となっているものを特定した。次に、多変数MRにより、いわゆる直接効果を計算して、ADHDが直接影響している程度を推定した。

日本における統合失調症患者の死亡率

 統合失調症患者は、一般集団と比較して、死亡率が高いといわれている。しかし、日本における統合失調症患者の死亡率を調査した最近の研究はなかった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の野村 信行氏らは、日本における統合失調症患者の超過死亡率と死亡率に対するリスク因子を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2024年1月20日号の報告。  対象は、2013年1月~2017年12月に山梨県立北病院で統合失調症または統合失調感情障害と診断された患者。統合失調症患者と一般集団の死亡率の比較には、標準化死亡率(SMR)を用いた。死亡率に対するリスク因子を推定するため、ロジスティック回帰分析を用いた。

ADHD治療薬、長期使用で心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。  2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。

日本における頭痛に対する処方パターンと特徴

 長野県・諏訪赤十字病院の勝木 将人氏らは、メディカルビッグデータであるREZULTを用いて、日本の成人頭痛患者(17歳以上)に対する処方パターンの調査を行った。Cephalalgia誌2024年1月号の報告。  Study1では、2020年に頭痛と診断された患者における急性期治療薬の過剰処方の割合を横断的に調査した。過剰処方は、トリプタンとNSAIDs(30錠/90日以上)、NSAIDs単剤(45錠/90日以上)と定義した。Study2では、最初の頭痛診断から2年超の処方パターンを縦断的に調査した。処方薬剤数は、90日ごとにカウントした。

自殺未遂者の身体損傷、精神疾患のない人ほど大きい

 精神疾患は自殺の主な危険因子の一つであり、自殺予防対策では精神疾患のある人への支援が重要視されている。秋田大学大学院看護学講座の丹治史也氏らが秋田市内の自殺未遂者のデータを分析した結果、精神疾患の既往のない人は、その既往がある人と比べて、致死性の高い自殺企図の手段を選ぶ傾向があり、身体所見の重症度も高いことが分かった。同氏らは、精神疾患のある人だけでなく、精神疾患のない人にも配慮した自殺予防対策が重要だとしている。詳細は「Journal of Primary Care & Community Health」に11月19日掲載された。  日本の自殺率は近年減少傾向にあったが、新型コロナウイルス感染症の流行が影響して増加に転じている。自殺の主な危険因子には自殺未遂歴と精神疾患が挙げられる。自殺企図者の9割以上が精神疾患を有するとの報告もあり、精神疾患のある人は自殺リスクが高いと言われている。一方で、精神疾患のない人は致死性の高い自殺手段を選ぶ傾向のあることが報告されているが、精神疾患の有無と自殺未遂者の身体所見の重症度との関連は明らかになっていない。そこで、丹治氏らは今回、秋田市のデータを用い、自殺未遂者における精神疾患の既往の有無と救急搬送時の身体所見の重症度との関連を調べる二次データ解析を実施した。

強迫症患者に多い/少ない死因は?/BMJ

 強迫症(OCD)患者はOCD非罹患者と比較して、さまざまな自然死因による死亡のリスクが上昇しており、その多くは非伝染性で予防可能なものである一方で、自殺や事故といった外因死の寄与が大きく、新生物による死亡リスクはむしろ低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLorena Fernandez de la Cruz氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。   研究グループは、スウェーデンのOCD患者における全死因死亡と原因別死亡のリスクの評価を目的に、2つのコホートでOCD罹患者と非罹患者の比較を行った(Swedish Research Council for Healthなどの助成を受けた)。

ブレクスピプラゾール切り替え後の治療継続率

 国立精神・神経医療研究センターの中込 和幸氏らは、統合失調症または統合失調感情障害患者において、これまで投与されていた抗精神病薬から、新規ドパミンD2受容体パーシャルアゴニストであるブレクスピプラゾールに切り替えた場合の治療継続率について、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年1月22日号の報告。  多施設共同単一群非盲検の24週間介入研究として実施された。介入期間は、2つの連続する12週間の期間(切り替え期、継続期)で構成した。これまで投与されていた抗精神病薬には、オランザピン、リスペリドン、パリペリドンが含まれた。主要アウトカムは、最初の12週間における治療継続率とした。副次的アウトカムは、社会機能的転帰評価尺度(SLOF)、抗精神病薬治療下での主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWNS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)のベースラインからの変化とした。