精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:1

糖質摂取と認知症リスク〜前向きコホート研究

 いくつかの研究において、食事中の糖質摂取と認知症との潜在的な関連が示唆されているが、実証するエビデンスは限られている。中国・四川大学のSirui Zhang氏らは、この関連性について、大規模集団による検証を行った。BMC Medicine誌2024年7月18日号の報告。  英国バイオバンクコホートに参加した21万832人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。食事中の糖質摂取を反映するため、糖質の絶対摂取量および相対摂取量、高糖質食スコアを用いた。糖質の絶対摂取量は、英国バイオバンクのOxford WebQにより特定した。糖質の相対摂取量は、絶対摂取量を総食事エネルギー量で割ることにより算出した。高糖質食パターンの特定には、縮小ランク回帰法を用いた。食事中の糖質摂取量とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病との縦断的関係を調査するため、Cox比例ハザード回帰分析および制限付き3次スプラインを用いた。根本的なメカニズムを解明するため、探索的媒介分析を行った。

犬は人間のストレスのにおいを感じ取り、行動を選ぶ

 犬は人間がストレスを感じているのかリラックスしているのかを嗅ぎ分けることができ、また、そのような嗅覚情報は犬の感情や行動の選択にも影響することが、新たな研究で示唆された。英ブリストル大学獣医学部野生動物保護学分野のNicola Rooney氏らによるこの研究の詳細は、「Scientific Reports」に7月22日掲載された。Rooney氏は、「使役犬の訓練士はよく、自分のストレスがリードを介して犬に伝わると表現するが、われわれは、空気を介してストレスが犬に伝わる可能性のあることを示した」と述べている。

高齢者のベンゾジアゼピン中止、長期的な抑うつ症状改善に寄与

 カナダ・ケベック大学モントリオール校のArnaud Allary氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)の使用が、将来の抑うつ症状、不安、睡眠の質に及ぼす影響を調査した。Aging & Mental Health誌オンライン版2024年7月2日号の報告。  大規模ランダム化比較試験(RCT)であるPASSE-60+研究よりデータを抽出した。60歳以上の参加者73例を対象に、4ヵ月間の中止プログラムを実施し、16ヵ月で4回の評価を行った。BZD使用の変化は、2回の評価時における1日当たりの投与量の差と定義した。コントロール変数は、RCT中止群、プログラム開始前でのBZD使用および抑うつ症状、不安、睡眠の質のいずれかとした。データ分析には、階層的多重回帰分析を用いた。

都市居住者VS郊外居住者、より幸せなのはどちら?

 都市居住者は、都市以外の場所に住む人に比べて幸福度や経済的な満足度などが低い傾向にあることが、新たな研究で報告された。この研究では、人が最も幸せになれる「ゴルディロックスゾーン」は、都市と農村の間の郊外にあることが示されたという。アムステルダム大学(オランダ)アーバン・メンタルヘルス・センターの心理学者であるAdam Finnemann氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月19日掲載された。Finnemann氏は、「都市に隣接する郊外が、心理的満足度が最も高く、かつ平等性も高い」と述べている。

ゲーム療法は統合失調症患者の認知機能改善に有効か

 統合失調症患者における認知機能は、機能的アウトカムや日常生活機能の低下の主な原因であり、治療対象として有望である。近年、精神疾患の治療において、さまざまな認知機能領域をターゲットとしたデジタル介入(ゲームベースの介入など)の使用が増加しつつある。そして、統合失調症患者に対するゲームベースのデジタル介入は、治療価値があるとの見解が示唆されている。中国・首都師範大学のJunkai Wang氏らは、統合失調症患者の認知機能をターゲットとした新たなオンライントレーニングプログラム(Komori Life)の利用可能性と初期の有効性を評価した。Translational Psychiatry誌2024年7月16日号の報告。

日本の社会経済的指標と認知症リスク

 生涯にわたる社会経済的指標(Socioeconomic status:SES)の推移が、認知症の発症リスクと関連するかどうかを調査した、日本発の研究結果が発表された。大阪大学の坂庭 嶺人氏らによる本研究結果はJAMA Network Open誌2024年5月1日号に掲載された。  2010年8月~2016年12月に実施されたこの前向きコホート研究では、日本老年学的評価研究のデータを使用し、日本の31地域の65歳以上の参加者を対象とした。参加者は介護保険や医療福祉サービスを使用しておらず、認知症の診断を受けていない人とされ、自記式質問票で回答した。データ解析は2022年4月~2023年4月に実施された。SES値欠落者、追跡不能者、ベースラインから1年以内の認知症発症者は除外された。主なアウトカムは認知症発症リスクと、それに伴う生涯にわたる認知症のない期間の減少または増加だった。認知症の発症は介護保険のデータによって特定された。

日本におけるベンゾジアゼピンと向精神薬の併用状況

 さまざまな精神疾患のガイドラインでは、少数のケースにおいてベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)単剤療法による短期介入が推奨されている。対照的に、BZD多剤併用療法は、いかなる場合でも推奨されていない。しかし実臨床では、BZD多剤併用療法が用いられることが少なくない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、BZD多剤併用療法と向精神薬併用との関連を明らかにするため、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年7月4日号の報告。  JMDCの請求データを用いて、レトロスペクティブ横断的研究を実施した。2019年6月、BZD治療を行った健康保険加入者の医療情報を抽出した。BZD多剤併用療法の定義は、2種類以上のBZD使用とした。年齢、性別、保健者および睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬の併用数(0、1、2以上)を共変量とし、BZD多剤併用療法と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。

1年間のAChEI治療、認知機能が低下しやすい患者は?

 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)治療を1年間行ったアルツハイマー病患者の治療アウトカムについて、台湾・Kaohsiung Veterans General HospitalのPao-Yuan Ching氏らが、調査を実施した。Aging Medicine誌2024年6月18日号の報告。  2015年1月〜2021年9月の電子カルテデータを、台湾南部の医療センターより入手した。対象は、新たにアルツハイマー病と診断され、AChEIによる治療を行った60歳以上の患者。認知機能評価は、AChEI治療前および治療1年後のフォローアップ調査時に実施した。認知機能低下は、AChEI治療1年後のミニメンタルステート検査(MMSE)が3超低下または臨床的認知症尺度(CDR)1以上低下と定義した。ベースライン時とフォローアップ調査後の認知機能の関係は、潜在的な交絡因子で調整したのち、ロジスティック回帰分析を用いて検討した。

航空会社のシフト制労働者の不規則な食事リズムは抑うつや不安と関連

 遅い夕食や長い食事摂取の時間枠などの不規則な食事リズムが、抑うつや不安のリスクを高める可能性のあることが、航空会社のシフト制労働者を対象にした新たな研究で明らかになった。上海交通大学(中国)のMi Xiang氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月15日掲載された。  この研究では、中国の主要航空会社の従業員(パイロット、客室乗務員、航空保安検査員)を対象とした継続中の研究(Civil Aviation Health Cohort of China)への参加者2万2,617人(18〜60歳、年齢中央値29.1歳、男性60.6%)のデータが分析された。研究グループは、調査データをもとに、就業日と休日における朝食と夕食を摂取するタイミング、毎日の食事摂取の時間枠、およびイーティングジェットラグを割り出し、抑うつや不安との関連を検討した。

アルツハイマー病の進行予測に役立つアプリを開発

 人により大きく異なるアルツハイマー病の進行を予測できるアプリの開発に関する研究成果を、オランダの研究グループが報告した。このモデルにより、軽度認知障害(MCI)患者と軽度認知症患者の認知機能がどのようなペースで低下するのかを予測できる可能性が示されたという。アムステルダム自由大学アルツハイマーセンター(オランダ)のWiesje van der Flier氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に7月10日掲載された。  Van der Flier氏らは、アミロイドβ(Aβ)の蓄積が検査で確認されているMCI患者310人と軽度認知症患者651人の計961人(平均年齢65±7歳、女性49%)のデータを用いて、認知症検査の一種として知られるミニメンタルステート検査(MMSE)の経時的な変化を予測するモデルを構築した。MMSEスコア(0〜30点)は、25点以上を正常、21〜24点を軽度認知症、10〜20点を中等度の認知症、10点未満を重度認知症と見なす。予測の際には、年齢、性別、ベースラインのMMSEスコア、アポリポタンパク質E4の有無、MRI検査で測定した全脳および海馬の体積、脳脊髄液中のバイオマーカー(Aβ1〜42およびリン酸化タウの濃度)のデータが考慮された。