呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:196

侮れない中国の科学力(解説:後藤信哉氏)-1271

筆者は免疫学者でもウイルス学者でもない。ランダム化比較試験による有効性、安全性検証をリードするclinical trialistであるとともに一人の臨床医である。免疫の仕組みに詳しいわけではない。それでもウイルス表面に存在する細胞への侵入を担う蛋白を標的とした抗体ができれば感染予防ができるのではないかとの仮説は持てる。本研究は新型コロナウイルスの表面に発現しているスパイク蛋白をアデノウイルスの一種であるAd5に発現させたワクチンを用いた臨床試験の結果である。エビデンスレベルの高い二重盲検のランダム化比較試験である。対照群をプラセボとしている。タンパク質を注射すれば副反応として疼痛などが起こるのは一種当然である。プラセボとの比較は安全性比較にはハードルが高いと思う。

コロナウイルスワクチンへの期待(解説:後藤信哉氏)-1270

新興感染症と人類との戦いにおいてワクチンは強力な武器であった。コロナウイルスは感冒のウイルスであるが、現時点までに感冒への有効なワクチンが開発されていない。COVID-19へのワクチン開発には期待が大きい。コロナウイルスの細胞への感染にはウイルスのスパイク様蛋白が寄与する。タンパク質に対する抗体をワクチンとするのであれば、北里柴三郎の破傷風抗毒素血清療法以来実績がある。本研究はチンパンジーのSARS-CoV-2ウイルスのスパイク蛋白を発現したチンパンジーのアデノウイルスベクターを用いたワクチン(ChAdOx1 nCoV-19 vaccine)と髄膜炎菌のワクチンを比較したphase 1/2試験である。ウイルスの表面抗原を標的としたワクチン開発は一般的に最初に思い付く方法だと思う。液性、細胞性免疫により細胞侵入前にウイルスの細胞侵入を防げるとは想定されるが、細胞内に入ってしまったウイルスに対する効果には疑問が残る。

COVID-19患者の約7割は転帰良好/国立国際医療研究センター

 8月7日、国立国際医療研究センターはメディア向けに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をテーマとし、「COVID-19レジストリ研究の中間報告」のセミナーを開催した。  セミナーでは、2020年1月から現在まで収集された約4,800例のCOVID-19患者のデータから患者の入院時症状の傾向、予後、重症化傾向などの中間解析結果が説明された。  はじめに同センター理事長の國土 典宏氏が、東京・新宿区におけるセンターの意義、患者数の推移・傾向、患者対応などを説明した。

米国Moderna社の新型コロナワクチン、サルでの有効性確認/NEJM

 開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「mRNA-1273」は、非ヒト霊長類において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の中和活性と上気道・下気道の速やかな保護を誘導し、肺組織の病理学的変化は認められなかった。米国・ワクチン研究センターのKizzmekia S. Corbett氏らが、アカゲザルにおけるmRNA-1273の評価結果を報告した。mRNA-1273は、SARS-CoV-2の膜融合前安定化スパイクタンパク質をコードするmRNAワクチンで、第I相試験を含むいくつかの臨床試験において安全性および免疫原性が確認されているが、上気道・下気道でのSARS-CoV-2増殖に対するmRNA-1273の有効性を、ヒトと自然免疫やB細胞・T細胞レパートリーが類似している非ヒト霊長類で評価することが重要とされていた。NEJM誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。

PCR拡充へ緊急提言、医師判断で迅速に実施可能な体制に/日本医師会

 日本医師会は8月5日付で、医師が必要と認めた場合に確実にPCR検査や抗原検査を実施できるよう、国に対しその実現について強く求める7項目の提言を公表した。背景として、複数の都道府県において過去最高の1日当たり新規感染者数を更新する中、夏季休暇などで移動の増加が予想され、全国的にさらなる感染拡大が懸念されること、行政検査の委託契約プロセスの煩雑さから、現行の枠組みを維持しながら検査能力を向上させるには限界があることを指摘している。

レンバチニブ、切除不能胸腺がんに国内申請/エーザイ

 エーザイとMSDは、マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)について、日本において切除不能な胸腺がんに係る適応追加を申請したと発表。同剤は本年6月、当該適応で希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けている。  本申請は、国内で実施された医師主導による非盲検、単群、多施設共同臨床第II相試験(NCCH1508試験)の結果に基づくもの。この試験では、1レジメン以上のプラチナ製剤による前治療歴のある胸腺がん患者42例が登録され、レンバチニブ単剤の有効性・安全性が評価された。

新型コロナ感染症、ARDSの新たな機序の発見?(解説:山口佳寿博氏)-1265

本論文は、新型コロナ(SARS-CoV-2)に罹患し肺炎、ARDSを基礎とした重篤な呼吸不全のために死亡した7症例の肺組織を用いて病理・形態像(光顕、走査電顕、微小CT画像、免疫組織化学)ならびに血管増生に関与する323個の遺伝子の発現動態を解析したものである。比較として、A型インフルエンザ(AH1N1)で死亡した症例の肺(7例)と正常肺(10例、肺移植に使用されなかった肺)を用いて上記と同様の解析が施行された。SARS-CoV-2、AH1N1肺の基本病理像はDADであったが、肺重量はAH1N1で重くSARS-CoV-2肺の1.4倍であった。すなわち、AH1N1肺では血液成分の漏出に起因する肺水腫がより著明であることが示唆された。

FDA、オシメルチニブのEGFR陽性肺がん術後補助療法をブレークスルーセラピー指定/アストラゼネカ

 2020年7月31日、米国食品医薬品局(FDA)は、第3世代EFGR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)による完全切除後の早期(Stage IB~IIIA)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)への術後補助療法をブレークスルーセラピーに指定した。  この指定は、米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表された第III相ADAURA試験のデータに基づくもの。この試験では、オシメルチニブによる術後補助療法は、統計的に有意で臨床的に意味のある無病生存率(DFS)の改善を示した(HR:0.21、95% CI:0.16~0.28; p

インフルとCOVID-19同時流行の対策提唱/日本感染症学会

 2020年8月3日、日本感染症学会は『今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて』の提言を学会ホームページ内に公開した。  新型コロナウイルスの流行を推測した研究によると、この冬、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が予測されており、とくにインフルエンザの流行期と重なることで、重大な事態になることが危惧されている。また、インフルエンザとの混合感染は、COVID-19入院患者の4.3~49.5%に認められている。  そのため、本提言は、石田 直氏(インフルエンザ委員会委員長/倉敷中央病院)をワーキンググループ委員長に迎え、インフルエンザおよびCOVID-19の専門家、医師会の角田 徹氏(東京都医師会副会長/角田外科消化器科医院 院長)や釜萢 敏氏(日本医師会常任理事/小泉小児科医院 院長)が参加して作成された。

COVID-19抗体検査の診断精度(解説:小金丸博氏)-1266

COVID-19の感染拡大を制御するためには、迅速かつ精度の高い診断検査が求められる。COVID-19の診断検査には主にPCR検査、抗原検査、抗体検査があるが、今回、抗体検査の診断精度をシステマティックレビューとメタ解析により検証した研究がBMJ誌に報告された。本研究の要点は、(1)抗体検査法の感度は検査法によって差があること、(2)市販の検査キットは施設内検査(in-house assay)と比べて感度が低いこと、(3)抗体検査の感度は発症後1週間以内で低く発症後3週以上で高いこと、の3点である。ELISA法の感度は84.3%(95%信頼区間:75.6%~90.9%)、LFIA法は66.0%(同:49.3%~79.3%)、CLIA法では97.8%(同:46.2%~100%)だった。プール解析した特異度は、ELISA法が97.6%、LFIA法は96.6%であり、CLIA法はプール化に適さず評価できなかった。LFIA法の感度は他の検査法より低く、特異度に関しては大きな差は認めなかった。診断精度は検査法によって差があるため、抗体検査の結果を評価する際にはどの検査法を用いたかを考慮する必要がある。