呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:46

間質性肺疾患の急性増悪、ニンテダニブの新規投与は有効か?

 『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では「特発性肺線維症(IPF)急性増悪患者に抗線維化薬を新たに投与することは推奨されるか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されており、推奨は「IPF急性増悪患者に対して抗線維化薬を新たに投与しないことを提案する(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:D[非常に低])」となっている。このような推奨の理由として、抗線維化薬であるニンテダニブ、ピルフェニドンをIPF急性増悪時に新たに投与する場合の有効性が明らかになっていないことがある。とくにニンテダニブについては、後ろ向き研究を含めて症例報告以外に報告がない1)。そこで、順天堂大学医学部医学研究科の加藤 元康氏らの研究グループは、「間質性肺疾患(ILD)の急性増悪発症後にニンテダニブ投与が行われた症例のニンテダニブの有効性と安全性を確認する後方視的検討」という研究を実施した。その結果、ニンテダニブは90日死亡率と急性増悪の再発までの期間を改善した。本研究結果は、Scientific Reports誌オンライン版2023年8月2日号で報告された。

外来・入院・集中治療別マネジメントを記載、COVID-19診療の手引き第10.0版/厚労省

 厚生労働省は8月21日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知した。2023年2月に公開された第9.0版以来、5類移行後初めての改訂となる本版は、オミクロン株に置き換わって以降の国内外の知見が反映され、よりコンパクトな内容になっている。とくに外来診療にも役立てられるよう、第4章では、前版までは重症度別に記載されていたマネジメントが、「外来診療」「入院診療」「集中治療」別にまとめなおされている。また、本手引きを基に作成された「COVID-19 外来診療の基礎知識」の表も公開された。

モデルナXBB対応コロナワクチン、新変異株EG.5やFL.1.5.1にも有効

 米国・Moderna社は8月17日付のプレスリリースにて、2023年秋の新型コロナワクチン接種に向けて承認申請中のXBB系統対応ワクチン(mRNA-1273.815)について、予備的臨床試験で、全世界で感染が拡大している新たな変異株EG.5およびFL.1.5.1に対して、中和抗体の有意な増加が確認されたことを発表した。本結果により、同社の新たなワクチンが、今季流行が懸念される変異株にも効果的であることが示唆された。  新たな変異株であるEG.5は「エリス」とも呼ばれ、世界保健機関(WHO)は8月9日にこの変異株を含むEG.5系統を「注目すべき変異株(VOI)」に指定した。EG.5はXBB.1.9.2の子孫系統であり、XBB.1.5と同じスパイクアミノ酸プロファイルを持つ。

高齢コロナ感染者の退院後死亡率、インフルより高い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院後に生存退院した米国の65歳以上の高齢者(メディケア受給者)88万3,394人を含む後ろ向きコホート研究で、インフルエンザで入院後に生存退院した高齢者と比較した結果、COVID-19で入院した高齢者の生存退院後の死亡リスクが高率であったことが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAndrew S. Oseran氏らにより明らかにされた。ただし、両者の差は退院後の早期においてみられるものであり、同死亡リスクはパンデミックの経過と共に漸減していたという。BMJ誌2023年8月9日号掲載の報告。

学校でのコロナ感染対策、マスクとワクチン完全接種が有用

 学校の生徒と職員を対象に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の学校内での感染リスクについて、2年間の接触追跡データに基づいた調査が、米国・マサチューセッツ総合病院のSandra B. Nelson氏らの研究チームによって行われた。その結果、学校生活において、マスクの使用状況やワクチン接種状況、校内の活動や地域の社会的状況など、感染リスクが高くなる要因が明らかになった。JAMA Health Forum誌2023年8月4日号に掲載の報告。  本調査は、マサチューセッツ州の幼稚園から中等教育までの学校を対象に、2020年秋~21年春学期(F20/S21、従来株の優勢期)および2021年秋学期(F21、デルタ株の優勢期)の2つの期間にわたって行われた。F20/S21は70校3万3,000人以上、F21は34校1万8,000人以上が参加した。学校内でSARS-CoV-2に2次感染した割合をSAR(Secondary Attack Rate)と定義した。SARは検査によって確認された値で算出した。感染と関連する可能性のある要因(学年、マスクの着用、曝露した場所、ワクチン接種歴、および社会的脆弱性指数[SVI]など)について、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。

米国での誤診による深刻な被害の実態が明らかに

 毎年約79万5,000人の米国人が、誤診により死亡したり永続的な障害を被っていることが、米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のDavid Newman-Toker氏らによる研究で示された。この研究結果は、「BMJ Quality & Safety」に7月17日掲載された。  Newman-Toker氏は、「プライマリケア、救急外来などの特定の臨床現場で発生した誤診に焦点を当てた研究はこれまでにも実施されていたが、複数の医療現場にまたがる深刻な被害の総計は調査されておらず、その推定値には年間4万件から400万件の幅があった。われわれの研究では、疾患別の誤診と被害発生率を基に損害の総計を推定した点で注目に値する」と話す。

生活習慣と呼吸器疾患による死亡リスクとの関係が明らかに

 特定健診データを利用した解析から、生活習慣と呼吸器疾患による死亡リスクとの関連が明らかになった。喫煙習慣の有無にかかわらず、身体活動の低下は呼吸器疾患関連死の独立したリスク因子である可能性などが示された。山形大学医学部第一内科の井上純人氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に5月22日掲載された。  生活習慣と心血管代謝性疾患リスクとの関連については数多くの研究がなされているが、呼吸器疾患については、喫煙と肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の関連を除いてほとんど明らかにされていない。これを背景として井上氏らは、2008~2010年の7都道府県の特定健診受診者、66万4,926人のデータを用いた縦断的解析により、生活習慣と呼吸器疾患による死亡リスクとの関連を検討した。

コロナ2価ワクチンのブースター接種、安全性が示される/BMJ

 50歳以上の成人において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する4回目ブースター接種ワクチンとしてのオミクロン株対応2価mRNAワクチンは、事前規定の27種の有害事象に関するリスク増大との関連は認められなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らによる同国の50歳以上の接種者を対象に行った試験で示された。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。  研究グループは2021年1月1日~2022年12月10日に、COVID-19ワクチンを3回接種した50歳以上の成人222万5,567人を対象とするコホート試験を行った。

鼻をほじる医療者は、コロナ感染リスク増

 医療従事者はCOVID-19の感染リスクが高く、マスク、ガウン、ゴーグル/フェイスシールド、手袋などの個人防護具(PPE)装着をはじめとした感染対策を取るケースが多い。にもかかわらず医療従事者の感染者が多い理由を探るため、PPE装着や飛沫を受けることに関連する可能性のある特定の行動・身体的特徴を調査する研究が行われた。オランダ・アムステルダム大学のA H Ayesha Lavell氏らによる本研究の結果は、PLOS ONE誌オンライン版2023年8月2日号に掲載された。  研究者らは、オランダの2つの大学医療センターに勤務する医療従事者404例を対象としたコホート研究において、特定の行動・身体的特徴が感染リスクと関連しているかどうかを調査した。感染との関連を調査した具体的な行動は以下のものだった。

NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。