呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:44

高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。

米FDAが治療困難な細菌性肺炎の治療薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は5月23日、Acinetobacter baumannii-calcoaceticus complex(以下、A. baumannii)に起因する細菌性の院内肺炎および人工呼吸器関連細菌性肺炎に対する新しい治療薬として、Xacduro〔一般名sulbactam for injection(スルバクタム静注用);durlobactam for injection(デュロバクタム静注用)〕を承認した。投与対象は18歳以上で、静脈内投与される。  グラム陰性球桿菌であるアシネトバクター属には多くの菌種が存在するが、医療機関で肺炎などの感染症の原因菌となることが最も多いのがA. baumanniiである。A. baumanniiは、互いに区別することが困難な4菌種の総称で、体のさまざまな部位に感染を引き起こす。A. baumanniiはまた、薬剤耐性を獲得しやすい。現状では、薬剤耐性A. baumannii感染に対する治療法は限定的である。

進行NSCLC、腫瘍治療電場療法を標準治療に上乗せでOS改善(LUNAR)/ASCO2023

 腫瘍治療電場(TTフィールド)療法は、さまざまな機序で非侵襲的にがん細胞を死滅させる治療法で、すでに膠芽腫および悪性胸膜中皮腫に対する治療として、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている(本邦では、膠芽腫について薬事承認を取得[保険適用は初発膠芽腫のみ])。非小細胞肺がん(NSCLC)については、前臨床モデルで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やタキサン系抗がん剤の効果を増強することが報告されている。そこで、転移を有するNSCLC患者を対象に、TTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検証する海外第III相試験「LUNAR試験」が実施された。その結果、TTフィールド療法の上乗せにより、全生存期間(OS)が有意に改善した。本結果について、米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのTiciana Leal氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

DLL陽性SCLC・神経内分泌がん、DLL3/CD3 BiTE抗体のFirst in Human試験/ASCO2023

 Notchリガンドの1つであるDLL3はNotchを阻害する働きを有する。DLL3は、小細胞肺がん(SCLC)や神経内分泌がん(NEC)の細胞表面に高発現しており、薬剤ターゲットとして有望視されている。DLL3とCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体のBI 764532は、DLL3陽性細胞および異種移植モデルマウスで強力な前臨床抗腫瘍活性を示したことが報告された。そこで、DLL3陽性SCLC、NEC患者を対象としたBI 764532のファースト・イン・ヒューマン試験(NCT04429087)が実施されている。現在進行中の本試験において、BI 764532は管理可能な安全性プロファイルを示し、有効性についても有望な結果が得られていることが示された。ドイツ・ドレスデン工科大学のMartin Wermke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

コロナ感染2年後、18%に罹患後症状/BMJ

 感染前にワクチン未接種であった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の約18%に、感染後2年まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状が認められ、未感染者と比較して感染者には症状の過剰リスクがあることが、スイス・チューリッヒ大学のTala Ballouz氏らが実施した「Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究」のデータ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月31日号で報告された。

完全切除EGFR陽性NSCLC、術後補助療法の効果不良因子(IMPACT-TR)/ASCO2023

 完全切除を達成したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による術後補助療法の効果や、再発を予測するバイオマーカーは、十分に検討されていないのが現状である。そこで、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の完全切除後の術後補助療法として、ゲフィチニブとシスプラチン+ビノレルビン(cis/vin)を比較した、国内第III相試験「IMPACT試験」の対象患者においてバイオマーカーが検討された。その結果、ゲフィチニブに対してはNOTCH1遺伝子変異が、cis/vinに対してはCREBBP遺伝子変異が効果不良を予測する因子となることが示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が本結果について発表した。

コロナ罹患後症状、スコアに基づく定義を提案/JAMA

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる持続的であり再発を繰り返す、あるいは新規の症状は、罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)と呼ばれ、long COVIDとしても知られている。米国・マサチューセッツ総合病院のTanayott Thaweethai氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として、RECOVER成人コホート9,764例のデータを解析し、SARS-CoV-2感染者では非感染者と比較して37症状が感染後6ヵ月以上の時点で多く認められ、このうち12症状の症状スコアに基づき、PASCを定義する予備的ルールを開発した。著者は、「PASCの実用的な定義のためには、他の臨床的特徴をさらに組み込み反復的な改良が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2023年5月25日号掲載の報告。

NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブの術前・後補助療法の無イベント生存期間(EFS)の成績が明らかにされた。  米国・スタンフォード大学のHeather Waklee氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。KEYNOTE-671試験は、切除可能NSCLC患者を対象とした、無作為化二重盲検第III相試験。免疫ポイント阻害薬の術前・後補助療法において、同試験は、デュルバルマブのAEGEAN試験に続き、triplimabのNEOTORCH試験と共に有意な改善を示したことになる。

タイプ2炎症を有するCOPDにデュピルマブが有効か/NEJM

 血中好酸球数の上昇で示唆されるタイプ2炎症を有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、抗インターロイキン(IL)-4/13受容体抗体デュピルマブ(本邦ではCOPDは未適応)を投与された患者はプラセボ投与患者と比べて、増悪が少なく、肺機能と生活の質(QOL)が改善され、呼吸器症状の重症度も低下したことが、米国・アラバマ大学のSurya P. Bhatt氏らが行った、第III相無作為化二重盲検試験「BOREAS試験」の結果において示された。NEJM誌オンライン版2023年5月21日号掲載の報告。

EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブのOS解析結果(ADAURA)/ASCO2023

 オシメルチニブは第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であり、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における術後補助療法、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発NSCLCを効能・効果として承認されている。これまで、病理病期IB~IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、術後補助療法としてのオシメルチニブの有用性を検証した、国際共同第III相無作為化比較試験「ADAURA試験」において、最終解析時においても無病生存期間(DFS)が有意に改善したことが報告されていた。