循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

便秘が心不全再入院リスクと関連―DPCデータを用いた大規模研究

 心不全による再入院のリスクに便秘が関与している可能性が報告された。東京都立多摩総合医療センター循環器内科/東京大学ヘルスサービスリサーチ講座の磯貝俊明氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation Reports」11月号に掲載された。  便秘は血圧変動などを介して心不全リスクを高める可能性が想定されているが、心不全の予後との関連を調べた研究は限られている。磯貝氏らは、便秘が心不全による再入院リスクに関連しているとの仮説の下、診断群分類(DPC)医療費請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。

ICI関連心筋炎の診断・治療、医師の経験値や連携不足が影響

 2023年にがんと心血管疾患のそれぞれに対する疾病対策計画が公表され、その基本計画の一環として、循環器内科医とがん治療医の連携が推奨された。しかし、当時の連携状態については明らかにされていなかったため、新潟県内の状況を把握するため、新潟県立がんセンター新潟病院の大倉 裕二氏らは「免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎(ICIAM)についての全県アンケート調査」を実施。その結果、ICIAMではアントラサイクリン関連心筋症(ARCM)と比較し、循環器内科医とがん治療医の双方の経験や組織的な対策が少なく、部門間連携の脆弱性が高いことが明らかとなった。Circulation Report誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。

喫煙とCVDリスクとの関係は用量依存的

 喫煙と心血管疾患(CVD)リスクの関係は用量依存的であることを示した研究結果が、「JAMA Network Open」に11月1日掲載された。  中央大学光明病院(韓国)のJun Hwan Cho氏らは、韓国の国民健康保険データベースを用いて、禁煙後のCVDリスクと、累積喫煙量(パックイヤー〔PY〕)や禁煙後の経過年数(years since quitting;YSQ)との関連を検討した。対象は、2006年から2008年の間に自己報告による喫煙状況が記録された539万1,231人(男性39.9%、平均年齢45.8〔標準偏差14.7〕歳)で、15.8%は現喫煙者、1.9%は元喫煙者、82.2%は喫煙未経験者であった。元喫煙者と現喫煙者については、喫煙開始年齢、過去または現在の1日当たりの喫煙本数、および禁煙した年齢(元喫煙者のみ)に基づき、ベースライン時点のPYとYSQを計算した。対象者の喫煙状況は、2019年まで2年ごとに更新された。最終的に、PYの中央値は、元喫煙者で10.5(四分位範囲5.3〜20.0)PY、現喫煙者で14.0(同7.5〜20.0)PYであった。元喫煙者のYSQの中央値は4年(同2〜8)であった。主要評価項目は、CVD(心血管疾患による死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)の発症率およびそのハザード比とし、ポアソン回帰分析でCVD発症率を算出した。また、Cox比例ハザード回帰モデルにより、喫煙状況に基づく調整ハザード比(aHR)を推定した。

女性を悩ます第3の狭心症や循環器障害の指標とは/日本循環器協会

 日本循環器協会が主催するGo Red for Women Japan健康セミナー『赤をまとい女性の心臓病を考える2025』が、2月8日に東京大学の安田講堂で開催された。循環器疾患において、症状の違いや診断精度、治療法に対する性差がが明らかになっている昨今、日本国内でもそれらを学ぶための機会として、2024年より本イベントが始まった。本稿では、赤澤 純代氏(金沢医科大学総合内科学 臨床教授/女性総合医療センター センター長)と高橋 佐枝子氏(湘南大磯病院 副院長)の講演内容において、とくに患者に知っておいてほしい内容にフォーカスし、お届けする。

血圧測定は騒がしい場所でも問題なし

 もし血圧を測定した場所が騒がしい公共空間であったとしても、心配は無用のようだ。騒がしい場所で測定された血圧値の正確性は、静かな環境で測定された血圧値と同程度であることが新たな研究で示された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院疫学分野のTammy Brady氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に1月28日掲載された。Brady氏は、「公共空間で測定された血圧値と静かな個室で測定された血圧値の差は極めて小さかった。このことから、公共空間は高血圧のスクリーニングの場として妥当であることが示唆された」と結論付けている。

脂肪の多い筋肉は心疾患リスクを高める

 霜降り肉のステーキはグリル料理で高く評価されるが、人間の筋肉に霜降り肉のように脂肪が蓄積していると命取りになるかもしれない。新たな研究で、筋肉中に脂肪が多い人は、心臓に関連した健康問題で死亡するリスクが高いことが明らかになった。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院心臓ストレス研究室のViviany Taqueti氏らによる研究で、詳細は「European Heart Journal」に1月20日掲載された。  この研究は、冠動脈疾患(CAD)の評価のために、2007年から2014年の間に同病院で全身PET/CT検査を用いた心臓ストレステストを受けた669人の患者(平均年齢63歳、女性70%)を対象にしたもの。PET/CT検査で左室駆出率(LVEF)、心筋血流量(MBF)、冠血流予備能(CFR)などを評価するとともに、CTで胸部の体組成として、皮下脂肪、骨格筋、筋肉間脂肪組織(IMAT)などを調べ、骨格筋内の脂肪の比率(fatty muscle fraction;FMF)を算出した。対象患者を中央値で5.8年にわたって追跡し、追跡期間中の主要心血管イベント(MACE、死亡または心筋梗塞か心不全による入院と定義)発生の有無を調べた。

多枝病変STEMI、完全血行再建術の最適なタイミングは?~ネットワークメタ解析/JACC

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、完全血行再建術(CR)は責任血管のみの治療より有益であることが、これまでの研究で報告されている。米国・エモリー大学の上山 紘生氏らの研究チームは、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析にて、多枝病変を有するSTEMI患者における最適な血行再建術のタイミングを検証した。その結果、CRは責任血管のみの治療より良好な転帰を示し、即時CRが段階的CRより有利な可能性が示された。Journals of the American College of Cardiology誌2025年1月7日号に掲載。

毎日のダークチョコレート摂取は心肺機能を向上させる

 ダークチョコレート摂取が、糖尿病や心血管疾患、高血圧に何らかの作用を与える報告が多数されている。では、毎日ダークチョコレート摂取した場合、身体機能に変化を与えることはあるのだろうか。この疑問にギリシャ・テッサロニキのアリストテレス大学体育学部スポーツ医学研究室のZacharias Vordos氏らの研究グループは、マラソンなどの持久力が必要な男性ランナーに、毎日ダークチョコレートを摂取させ、その効果を評価した。その結果、ダークチョコレートは、ランナーの動脈機能を改善し、血管の健康を高めることがわかった。この結果はSports誌2024年12月号に掲載された。

無症状の重症大動脈弁狭窄症に対する早期介入は有効か?―EVOLVED 無作為化臨床試験(解説:佐田政隆氏)

大動脈弁狭窄症(AS)患者は社会の高齢化と共に急速に増えている。ASの予後は非常に不良なことが知られており、自覚症状が出現してから突然死などで死亡するまでの期間は短い。狭心症や失神では3年、息切れでは2年、うっ血性心不全では1.5~2年で亡くなるといわれている。有効な薬物療法はなく、人工弁置換術が唯一の治療法である。従来、高齢者や合併症を持った患者では、人工心肺を用いた開胸による外科的大動脈弁置換術(SAVR)に耐えられない症例が多かった。近年では、比較的低侵襲で行われる経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の治療成績が飛躍的に向上し急速に普及している。100歳を超えた成功例も数多く報告されている。

家族に糖尿病患者がいるといない家族と比べ20倍の発症リスク/新潟大

 2型糖尿病の発症に家族歴が関係していることが知られているが、その発症や有病リスクはどのくらいになるのだろうか。この疑問に新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野の池田 和泉氏らの研究グループは、健康診断データ約4万例を解析し、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率および発症率を解析した。その結果、糖尿病有病リスクは、家族に糖尿病がまったくいない人の約20倍という結果が示された。この結果は、Mayo Clinic Proceedings誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。