循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

閉経後HRT(ホルモン補充療法)のビッグデータを用いたtarget trial emulation(標的模倣試験)の結果(解説:名郷直樹氏)

閉経後のホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は、かつて観察研究で心血管イベントを減らすがランダム化比較試験では増やすという真逆の結果が報告され、多くの論争を呼んだ。結論としては、RCTでは閉経直後でない多くの患者が対象とされていたり、 ITT解析がなされていたりすることと、観察研究での実際に投与された患者での解析による選択バイアスや、観察研究では排除できない交絡によって、違いが出たとされている。さらに最近では、新しいホルモン製剤によるHRTが主流となっている現状もある。

再利用ペースメーカーは安全で再利用可能

 再利用ペースメーカーは新しいペースメーカーと同程度に安全かつ効果的であり、低・中所得国の多くの人に利用可能な治療選択肢を提供する可能性があるとする研究結果が報告された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部循環器科内科部門のThomas Crawford氏は、「米国と異なり、低・中所得国の人は、ペースメーカー治療が利用できなかったり、利用できたとしても費用が高額過ぎたりすることが多い」と指摘。「われわれのMy Heart Your Heart(MHYH)プログラムは、それを変えることを目指している」と話している。この研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表された。

DOACとスタチンの併用による出血リスク

 直接経口抗凝固薬(DOAC)はスタチンと併用されることが多い。しかし、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用は、出血リスクを高める可能性が考えられている。それは、DOACがP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されるが、アトルバスタチンとシンバスタチンもP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されることから、両者が競合する可能性があるためである。しかし、これらの臨床的な影響は明らかになっていない。そこで、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngel Ys Wong氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用と出血、心血管イベント、死亡との関連を検討した。

不規則な睡眠習慣は主要心血管イベントリスクを高める

 うたた寝する時間や起床時間が日々異なっているなど睡眠習慣が不規則であると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まる可能性があるようだ。新たな研究で、睡眠習慣が不規則な人では、規則的な人に比べて主要心血管イベント(MACE)の発生リスクが26%高いことが示された。東オンタリオ小児病院研究所(カナダ)のJean-Philippe Chaput氏らによるこの研究結果は、「Journal of Epidemiology & Community Health」に11月27日掲載された。  この研究では、40〜79歳のUKバイオバンク参加者7万2,269人の8年間の追跡データを用いて、活動量計で測定した睡眠の規則性とMACEリスクとの関連が検討された。UKバイオバンク参加者は、7日間にわたって手首に装着する活動量計で睡眠を記録していた。Chaput氏らはその情報に基づき、参加者の睡眠規則性指数(Sleep Regularity Index;SRI)を算出し、参加者を不規則(SRI<71.6、1万7,749人)、中程度に不規則(SRIが71.6〜87.3、3万6,602人)、規則的(SRI>87.3、1万7,918人)の3群に分類した。

ATTR型心アミロイドーシス、CRISPR-Cas9遺伝子編集療法が有望/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者において、nexiguran ziclumeran(nex-z)の単回投与は、血清TTR値を迅速かつ持続的に減少したことが示された。nex-zと関連がある有害事象としては一過性の注入に伴う反応が認められた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMarianna Fontana氏らが、トランスサイレチン(TTR)遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集療法nex-zの、安全性および有効性を評価した第I相非盲検試験の結果を報告した。ATTR-CMは進行性の致死的疾患であるが、nex-zはポリニューロパチーを伴う遺伝性ATTRアミロイドーシス患者において血清TTR値を減少させたことが報告されていた。NEJM誌2024年12月12日号掲載の報告。

更年期のホルモン補充療法、心血管疾患のリスクは?/BMJ

 経口エストロゲン・プロゲスチン療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスク増加と関連していた。一方、tiboloneは、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞のリスク増加と関連していたが、静脈血栓塞栓症とは関連していなかった。スウェーデン・ウプサラ大学のTherese Johansson氏らが、スウェーデン統計局、ならびに保健福祉庁の処方薬登録、全国患者登録、がん登録および死因登録のデータを用いて行った、無作為化比較試験(RCT)を模倣するtarget trialの結果を報告した。閉経後10年以上経過後または60歳を超えてからの経口エストロゲン・プロゲスチン療法開始は、心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症のリスクが増加する可能性が示唆されているが、現行更年期ホルモン補充療法の心血管疾患リスクに関する研究は不足していた。BMJ誌2024年11月27日号掲載の報告。

複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に複雑冠動脈疾患(CAD)を併存する患者において、血流予備量比(FFR)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)+経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、外科的大動脈弁置換術(SAVR)+冠動脈バイパス術(CABG)に対して非劣性であることが示された。カナダ・マギル大学ヘルスセンターのElvin Kedhi氏らTCW study groupが、初となる経皮的治療と外科治療を比較した国際多施設共同前向き非盲検無作為化非劣性検証試験「TCW試験」の結果を報告した。重症AS患者では、閉塞性CADを併存していることが多い(~50%)。ESC/EACTSガイドラインでは、SAVR+CABGが推奨されている。一方、FFRガイド下PCIおよびTAVIが有効な治療選択肢となりうることも示されていた。Lancet誌オンライン版2024年12月4日号掲載の報告。

慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA

 心血管系薬剤のリフィル処方を先延ばしにする患者にリマインダーのテキストメッセージを送っても、薬局の処方データに基づく服薬アドヒアランスの改善や、12ヵ月時の臨床イベントの減少は得られなかった。米国・Kaiser Permanente ColoradoのP. Michael Ho氏らが、プラグマティックな無作為化非盲検試験において示した。患者の行動変容にテキストメッセージが用いられるようになってきているが、これまで厳密な検証は行われていないことが多かった。著者は、「服薬アドヒアランスの不良には、複数の要因が関与していると考えられることから、今後の介入ではアドヒアランスに影響を与える複数の要因に対処するよう取り組む必要があるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月2日号掲載の報告。

対象患者選択の重要性を再認識させられた研究(解説:野間重孝氏)

本研究はコルヒチンの虚血性心疾患に対する2次効果を検討した3つ目の研究に当たる。今回の研究に先行する2つの研究については次に示すので、ぜひご一読されたい。これは、評者自身が過去2回にわたり論文評を担当しており、内容が重複してしまう可能性があるためである。この点について、すでにご存じの方にはご容赦いただきたい。大抵の方々にとっては虚血性心疾患とコルヒチンの関係そのものに首をかしげる向きがあると考えるが、そのあたりについても評では簡単にではあるが解説した。

SGLT2阻害薬やMR拮抗薬などで添文改訂指示/厚労省

 2024年12月17日、厚生労働省はSGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)などに対して、添付文書の改訂指示を発出した。  SGLT2阻害薬はこれまでにもケトアシドーシスに関連した注意喚起がなされていたが、投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関連する症例が集積し、現行の注意喚起からは予測できない事象と結論付けられたことから、重要な基本的注意の項に「本剤を含むSGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと」が新たに追記される。