循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:6

大戦中の砂糖配給制の影響を胎児期に受けた人は糖尿病や高血圧が少ない

 第二次世界大戦中と終戦後しばらく、砂糖が配給制だった時期に生まれた人には、2型糖尿病や高血圧が少ないとする、米南カリフォルニア大学(USC)ドーンサイフ経済社会研究センターのTadeja Gracner氏らの研究結果が「Science」に10月31日掲載された。2型糖尿病リスクは約35%、高血圧リスクは約20%低いという。この結果は、現代の人々が砂糖のあふれた環境によって、いかに大きな健康被害を受けているかを示しているとも言えそうだ。  この研究では、第二次世界大戦中に英国で行われた砂糖配給制に焦点が当てられた。英国では1942年に砂糖が配給制となり、国民の砂糖摂取量は1日当たり平均40g(ティースプーンで約8杯分)となった。ちなみに、現在流通している一般的な加糖飲料の中には50gほどの砂糖が使われているものもある。英国の砂糖配給制は戦後もしばらく継続され、1953年9月になって終了した。それとともに砂糖の摂取量は平均80gへと倍増した。

禁煙後に体重が3kg以上増えると高血圧リスクが上昇

 禁煙後に体重が3kg以上増加すると、高血圧の発症リスクが有意に高くなることを示唆する研究結果が報告された。ただし、喫煙を継続していた場合は体重増加が3kg未満であっても、高血圧発症リスクが有意に高くなるという。日本医科大学衛生学公衆衛生学分野の大塚俊昭氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Medicine」に9月14日掲載された。  タバコは言うまでもなく体に悪く、高血圧発症リスク因子でもあり、全ての喫煙者に禁煙が推奨される。しかし、禁煙によってニコチンの持つ空腹感抑制作用がなくなることや、味覚・嗅覚および胃粘膜の血流改善によって、食欲が高まることがあり、体重増加を介して禁煙による健康へのプラス作用を弱めてしまう可能性がある。その悪影響の一つとして、血圧の上昇が挙げられる。ただ、禁煙後の体重変化と高血圧リスクとの関連については、不明点が少なくない。大塚氏らは、日本人労働者の健診データを用いた縦断的解析により、この点を検討した。

MI後のスピロノラクトンの日常的使用は有益か?/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心筋梗塞(MI)患者において、スピロノラクトンはプラセボと比較し、心血管死または心不全の新規発症/増悪の複合イベント、あるいは心血管死、MI、脳卒中、心不全の新規発症/増悪の複合イベントの発生を低減しなかった。カナダ・マクマスター大学のSanjit S. Jolly氏らCLEAR investigatorsが、14ヵ国の104施設で実施した無作為化比較試験「CLEAR試験」の結果を報告した。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、うっ血性心不全を伴うMI患者の死亡率を低下させることが示されているが、MI後のスピロノラクトンの日常的な使用が有益であるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年11月17日号掲載の報告。

チルゼパチドのHFpEFを有する肥満患者への有効性/NEJM

 駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を有する肥満の患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、心血管死または心不全増悪の複合リスクを低減し、健康状態を改善することが示された。米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らが、9ヵ国129施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SUMMIT試験」の結果を報告した。肥満は、HFpEFのリスクを高める。チルゼパチドは、体重減少をもたらすが、心血管アウトカムへの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2024年11月16日号掲載の報告。

今、肺静脈隔離にシャム試験?(解説:高月誠司氏)

Sham-PVI試験は心房細動患者に対してクライオバルーンによる肺静脈隔離とシャム手術を行い比較する、無作為化比較試験である。結果的に肺静脈隔離群では有意に心房細動の再発は少なく、QOLは高かった。心房細動に対する肺静脈隔離法が始まって約20年、これまで心房細動に対する第一選択の治療法として薬物療法とクライオアブレーションを比較する試験は行われており、アブレーション治療のほうが洞調律維持率は高いことは確立していた。

高リスク2型DM患者の降圧目標、120mmHg未満vs.140mmHg未満/NEJM

 心血管リスクを有する収縮期血圧(SBP)が高値の2型糖尿病患者において、目標SBPを120mmHg未満とする厳格治療は、140mmHg未満とする標準治療と比較して、主要心血管イベント(MACE)のリスクが低下したことが示された。中国・Shanghai Institute of Endocrine and Metabolic DiseasesのYufang Bi氏らBPROAD Research Groupが、中国の145施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Blood Pressure Control Target in Diabetes:BPROAD試験」の結果を報告した。2型糖尿病患者におけるSBP管理の有効な目標値ははっきりとしていない。NEJM誌オンライン版2024年11月16日号掲載の報告。

mavacamtenの長期使用で中隔縮小療法を回避/AHA2024

 症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)患者を対象としたVALOR-HCM試験において、mavacamtenにより中隔縮小療法(septal reduction therapy:SRT)の短期的な必要性を低下させ、左室流出路(LVOT)圧較差などの改善をもたらすことが報告されていた。今回、米国・クリーブランドクリニックのMilind Y Desai氏らが治療終了時128週までのmavacamtenの長期的な効果を検討し、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表、Circulation誌オンライン版2024年11月18日号に同時掲載された。

低温持続灌流はドナー心臓の虚血時間を安全に延長できる(解説:小野稔氏)

低温浸漬保存(SCS)は脳死ドナーから提供された心臓を保存するゴールドスタンダードであるが、保存時間が4時間を超えると虚血、嫌気性代謝に続く臓器障害を来たし、移植後の合併症や死亡に至る場合がある。肝臓移植においてはXVIVO(XVIVO AB, Sweden)による低温灌流保存(HOPE: hypothermic oxygenated machine perfusion)についての12のメタアナリシスやシステマティックレビューがあり、その安全性と有効性が証明されている。

高K血症または高リスクのHFrEF、SZC併用でMRAの長期継続が可能か/AHA2024

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することが報告されている。しかし、MRAは高カリウム血症のリスクを上げることも報告されており、MRAの減量や中断につながっていると考えられている。そこで、高カリウム血症治療薬ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC)をMRAのスピロノラクトンと併用することが、高カリウム血症または高カリウム血症高リスクのHFrEF患者において、スピロノラクトンの至適な使用に有効であるかを検討する無作為化比較試験「REALIZE-K試験」が実施された。本試験の結果、SZCは高カリウム血症の発症を減少させ、スピロノラクトンの至適な使用に有効であったが、心不全イベントは増加傾向にあった。本研究結果は、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のLate-Breaking Scienceで米国・Saint Luke’s Mid America Heart Institute/University of Missouri-Kansas CityのMikhail N. Kosiborod氏によって発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2024年11月18日号に同時掲載された。

心筋梗塞後の待機的手術はいつ実施すべきか

 最も一般的なタイプの心筋梗塞(MI)である非ST部分上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を発症した67歳以上の患者に対する待機的非心臓手術は、NSTEMI発症から3~6カ月の期間を置いて実施すべきであることが、新たな研究で示唆された。性急な待機的非心臓手術は、脳卒中や新たな心筋梗塞などの命を脅かす合併症の発症リスクを約2倍、死亡リスクを約3倍に高めることが示されたという。米ロチェスター大学医療センター(URMC)麻酔科・周術期医学・公衆衛生科学教授のLaurent Glance氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Surgery」に10月30日掲載された。