循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:7

ナイアシンの取り過ぎは心臓に悪影響

 ナイアシンは必須ビタミンB群の一つだが、取り過ぎは心臓に良くないようだ。何百万人もの米国人が口にする多くの食品に含まれるナイアシンの過剰摂取が炎症を引き起こし、血管にダメージを与える可能性のあることが、米クリーブランド・クリニック、ラーナー研究所の心血管・代謝科学主任研究員であるStanley Hazen氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Nature Medicine」2月19日号に掲載された。  Hazen氏は、「ナイアシンの過剰摂取により心血管疾患の発症リスクが高まる可能性が示された以上、平均的な人はナイアシンのサプリメントの摂取を控えるべきだ」とNBCニュースに対して語った。  米メイヨークリニックによれば、ナイアシンの推奨摂取量は男性で1日16mg、妊娠していない女性では1日14mgである。米国では、穀物やシリアルにナイアシンが強化され始めた1940年代以来、その摂取量が増加している。Hazen氏によると、食品にナイアシンを強化する動きは、ナイアシンが不足するとペラグラと呼ばれる致命的な疾患を引き起こす可能性があることを示唆した研究を受けて助長されたと説明する。皮肉なことに、ナイアシンのサプリメントは、かつてはコレステロール値を改善するために医師によって処方されていた。

成人心臓移植待機患者の移植到達前死亡を予測するリスクスコアの開発と検証(解説:小野稔氏)

2018年10月に、米国において6段階に分けた新しい心臓移植待機患者への臓器配分モデルが適用された。これは登録時に受けている治療の濃厚さに応じて階層化されたもので、待機中死亡を減少させ、かつ移植後の予後を最適化するという目的を有している。この臓器配分モデルが適用されて5年が経過したが、すでに適切性に疑問が呈され始めていて、より公正な新しい配分モデルの策定が議論されている。本論文は新たな配分モデルに適用されうる可能性を念頭に置いて、フランスで運用されているFrench Candidate Risk Score (French-CRS)にヒントを得て、心不全重症度を反映した血液検査データと機械的循環補助(MCS)状態を因子として用いて開発されたUS-CRSの優れた移植登録患者の待機死亡予測精度を報告している。

日本人の降圧薬アドヒアランス、低い患者とは?

 日本では、血圧が140/90mmHg未満にコントロールされている患者はわずか30%程度で、降圧薬の服薬アドヒアランスが低いことがコントロール不良の原因であると考えられている。今回、九州大学の相良 空美氏らが日本人の大規模データベースを用いて降圧薬のアドヒアランスを調べたところ、降圧薬のアドヒアランス不良率は26.2%であり、若年、男性、単剤治療、利尿薬使用、がんの併存、病院での処方、中規模/地方都市居住が、アドヒアランス不良と関連することが示された。Journal of Hypertension誌2024年4月号に掲載。

冠動脈ステント内再狭窄、DCB vs.非コーティングバルーン/JAMA

 ステント内再狭窄に対して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者において、パクリタキセルコーティングバルーンは非コーティングバルーンと比較し、1年時の標的病変不全の発生が有意に少なく、優越性が示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのRobert W. Yeh氏らが、米国の40施設で実施した無作為化比較試験「A Clinical Trial to Assess the Agent Paclitaxel Coated PTCA Balloon Catheter for the Treatment of Subjects With In-Stent Restenosis:AGENT IDE試験」の結果を報告した。著者は、「パクリタキセルコーティングバルーンは、冠動脈ステント内再狭窄患者に対する有効な治療選択肢である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年3月9日号掲載の報告。

心不全へのARNI、日本人での安全性が明らかに(REVIEW-HF)/日本循環器学会

 急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版が2020年に発表され、国内における心不全(HF)治療も変化を遂げている。とくにアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)発売の影響は大きいが、そのサクビトリル・バルサルタン(商品名:エンレスト)の治療を受ける国内患者の特徴、忍容性、臨床転帰は明らかにされていない。そこで、金岡 幸嗣朗氏(国立循環器病研究センター)らが全国多施設観察研究の分析を行い、その結果を第88回日本循環器学会年次学術集会 Late Breaking Cohort Studies1にて報告した。

ICIによる心臓irAE発症タイミングと危険因子~国内RWDより/日本循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とは、ご存じのとおり、近年注目されているがん薬物療法で、T細胞活性を増強することによって抗腫瘍効果をもたらし、多くのがん患者の予後を改善させている。しかし、副作用として心筋炎や致死性不整脈など循環器領域の免疫関連有害事象(irAE)の報告も散見される。そこで、稗田 道成氏(九州大学医学部 第一内科 血液・腫瘍・心血管内科)らがLIFE Study1)のデータベースを基に心臓irAEの発生率を調査し、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会Late Breaking Cohort Studies2において報告した。

運動による死亡リスク低下、女性はより短時間で効果

 身体活動は心血管系および全死因死亡リスクを低下させるために広く推奨されているが、米国疾病予防管理センター(CDC)および米国心臓協会/米国心臓病学会が推奨する身体活動の基準を満たす米国人は全体の4分の1以下で、さらに女性は男性に比べ身体活動の実施量が少ない。では、身体活動による健康増進効果に性差はあるのか。中国・北京清華長庚医院のHongwei Ji氏らによる研究がJournal of the American College of Cardiology誌2024年2月27日号に掲載された。  研究者らは、CDCと国立保健統計センターの統計データを用いて、身体活動に関するデータを提供した米国成人41万2,413例(55%女性、年齢中央値44歳)を対象とした前向き研究を行った。

高齢者の身体活動量、推奨値を変更/厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」

 厚生労働省は健康・医療・介護分野における身体活動を支援する関係者を対象として、身体活動・運動に関する推奨事項や参考情報をまとめた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」を2024年1月に公表した。「健康づくりのための身体活動基準 2013」から10年ぶりの改訂となる。同ガイドの改訂に関する検討会で座長を務めた中島 康晴氏(九州大学大学院医学研究院整形外科 教授)に主な改訂点とその背景について話を聞いた。  今回の改訂では、「健康日本21(第三次)」のビジョンの中で示されている「誰一人取り残さない健康づくり(inclusion)」ならびに「より実効性をもつ取組の推進(implementation)」の観点から、ライフステージごと(成人、こども、高齢者)に身体 活動・運動に関する推奨事項をまとめるとともに、「慢性疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症)を有する人の身体活動のポイント」「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」など個人差を踏まえた推奨事項を示している点が大きな特徴。それぞれ2~4ページごとにまとめられており、指導の際のツールとしての使いやすさを考慮して作成されている。

代替塩で高血圧予防

 食塩を代替塩に置き換えると、低血圧リスクを高めることなく高血圧リスクが約4割抑制されるとする研究結果が報告された。北京大学臨床研究所(中国)のYangfeng Wu氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に2月12日掲載された。  世界保健機関(WHO)によると、高血圧は心臓病発症と心血管死の主要な危険因子であり、世界中で14億人以上の成人が高血圧に罹患していて、毎年1080万人が高血圧に関連して死亡しているという。Wu氏は、「人々は手頃な価格で容易に入手できる加工食品を利用することを通して、塩分を過剰に摂取してしまうことが少なくない。食品の選択が心臓の健康に及ぼす影響を認識して、減塩に対する人々の意識を高めることが重要だ」と述べている。

微小プラスチック、心血管イベント・死亡リスク上昇と関連/NEJM

 頸動脈プラークからマイクロプラスチックまたはナノプラスチック(MNP)が検出された患者は、検出されなかった患者と比較して、追跡34ヵ月時点の心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合リスクが有意に高かった。イタリア・University of Campania Luigi VanvitelliのRaffaele Marfella氏らが多施設共同の前向き観察試験の結果を報告した。いくつかの研究で、摂取や吸入、皮膚への曝露を通じてMNPが体内に入り込み、細胞組織や臓器に作用することが示されており、MNPは母乳、尿、血液だけでなく、胎盤、肺、肝臓などでも見つかっている。最近行われた前臨床モデル研究では、MNPが心血管疾患の新たなリスク因子であることが示唆されていたが、このリスクがヒトに及ぶという直接的なエビデンスは示されていなかった。NEJM誌2024年3月7日号掲載の報告。