循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:123

機械学習による疾病予測モデルはあまり当たらない(解説:折笠秀樹氏)-1333

フラミンガムスタディデータを使って、心臓病の10年予測モデルが出たのが1998年のことです。私も脳梗塞の再発予測モデルの開発に携わったことがありますが、2012年のことでした。今や予測モデルの研究は枚挙にいとまがないほどです。TRIPOD声明というガイドラインまで出ています。モデル開発にはCoxモデルを用いるのが一般的でしたが、最近では機械学習モデルを使うことも多くなりました。ニューラルネットワークやランダムフォレストなどという手法です。

高用量インフルワクチン、高リスクCVDの死亡改善せず/JAMA

 高リスク心血管疾患患者では、高用量3価不活化インフルエンザワクチンは標準用量4価不活化インフルエンザワクチンと比較して、全死因死亡率や心肺疾患による入院率を低下させないことが、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが行ったINVESTED試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年12月4日号で報告された。インフルエンザは、ワクチン接種への免疫応答が強くない心血管疾患患者の心肺合併症や死亡の割合を一時的に高めるという。高用量のインフルエンザワクチンは、インフルエンザによる疾患のリスクを低減する可能性が示唆されている。

COVID-19による静脈血栓塞栓症のアンケート結果/肺塞栓症研究会

 肺塞栓症研究会と日本静脈学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による静脈血栓塞栓症の発症有無に関する緊急アンケートを合同で実施し、総計77施設(1,243例)より回答を得た。その結果、肺塞栓症は5例(0.4%)、静脈血栓塞栓症は7 例(0.6%)に発症していたことが明らかになった。今回のアンケート調査では、COVID-19 症例の中で肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症と診断された症例は欧米に比してかなり少数だった。これを踏まえ、横浜南共済病院の孟 真氏率いる調査事務局の研究者らは、「“発症自体が本当に日本人で少ない”のか、“診断されていないだけ”なのかを判断する事は困難である。

PTX被覆デバイスによる末梢動脈疾患の血管内治療、死亡率増大させず/NEJM

 末梢動脈疾患患者において、パクリタキセル被覆血管内デバイスと非被覆血管内デバイスに、追跡期間1~4年での全死因死亡率に差は認められなかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のJoakim Nordanstig氏らが、多施設共同無作為化非盲検臨床試験「SWEDEPAD試験」の計画外の中間解析結果を報告した。症候性末梢動脈疾患に対する下肢血管内治療で、パクリタキセル被覆血管形成バルーンおよび溶出ステントによる死亡リスクの増加が最近のメタ解析で示され、懸念が生じていた。NEJM誌オンライン版2020年12月9日号掲載の報告。

IL-1阻害薬による残余リスク低減効果に期待(解説:佐田政隆氏)-1330

rilonaceptはインターロイキン-1(IL-1)の可溶性受容体製剤である。IL-1α、IL-1β双方をトラップして阻害する。当初、関節リウマチでの応用が期待されたが、TNF阻害薬ほど劇的な効果は認められなかったという。希少自己免疫疾患であるクリオピリン関連周期性発熱症候群に対して、2008年にFDAによって承認されたが、日本や欧州では承認に至っていない。原因不明の再発性心膜炎は、日常の循環器内科診療でたびたび遭遇する疾患である。心嚢穿刺など対症療法しかなく治療に難渋することが多い。本試験は、86人と比較的少数例を対象にした二重盲検第3相試験である。標準的治療を施しても再発する心膜炎の再発を、rilonaceptが有意に抑制した。今後、再発心膜炎への適応拡大が期待される。

finerenone、2型糖尿病合併CKD患者で心血管リスクを抑制/NEJM

 2型糖尿病を併発する慢性腎臓病(CKD)患者において、finerenoneの投与はプラセボに比べ、CKDの進行と心血管イベントのリスクを低減させることが、米国・シカゴ大学病院のGeorge L. Bakris氏らが行った「FIDELIO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年12月3日号に掲載された。2型糖尿病はCKDの主要な原因であり、2型糖尿病患者のCKD管理ガイドラインでは、高血圧や高血糖の管理とともにさまざまな薬物療法が推奨されているが、CKDの進行のリスクは解消されておらず、新たな治療が求められている。finerenoneは、非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、CKDと2型糖尿病を併発する患者を対象とする短期試験でアルブミン尿を減少させると報告されている。

IL-1阻害薬、心膜炎の再発リスクを低減/NEJM

 再発性心膜炎患者において、インターロイキン-1(IL-1)阻害薬rilonaceptはプラセボと比較して迅速な症状改善をもたらし、さらなる再発のリスクを有意に低下することが示された。米国・クリーブランドクリニックのAllan L. Klein氏らRHAPSODY研究チームが、第III相の多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した。IL-1は再発性心膜炎のメディエーターとして関与することが知られている。IL-1αおよびIL-1βサイトカインの働きを阻害するrilonaceptの有効性と安全性は、すでに再発性心膜炎患者を対象とした第II相試験で確認されていた。今回の第III相試験では、rilonaceptはプラセボよりも再発リスクを低下するとの仮説を検証する目的で実施された。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。

HFpEFに対するsGC刺激薬の効果―VITALITY-HFpEF試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1329

VITALITY-HFpEF試験では、6ヵ月以内に心不全増悪の既往を有する左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)を対象にして、可溶型グアニリル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬であるvericiguat 10mg/日あるいは15mg/日を24週間投与した際の生活の質(QOL)ならびに運動耐容能に対する効果が、多施設共同第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験として検証された。結論としてvericiguatの有効性は示されず、HFpEFに対する臨床試験としては、またしてもネガティブな結果に終わった。本研究に先立って行われたSOCRATES-PRESERVED試験では、HFpEFに対するvericiguatの12週間投与がN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値および左房容積に及ぼす効果について検証された。プライマリエンドポイントにvericiguat投与群とプラセボ群間で有意差を認めなかったが、探索項目として調査されたカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)によるQOL評価値が、vericiguat 10mg/日投与群においてプラセボ群に比べ有意に改善した。

発作性AFの第1選択、クライオバルーンアブレーションvs.抗不整脈薬/NEJM

 第1選択としてのクライオ(冷凍)バルーンによるアブレーションは、発作性心房細動患者の心房性不整脈再発予防において抗不整脈薬より優れており、重篤な手技関連有害事象は少ないことが示された。米国・クリーブランドクリニックのOussama M. Wazni氏らが、米国の24施設で実施した多施設共同無作為化試験「STOP AF First試験(Cryoballoon Catheter Ablation in Antiarrhythmic Drug Naive Paroxysmal Atrial Fibrillation)」の結果を報告した。薬物療法の効果が得られない症候性の発作性心房細動患者では、洞調律維持のため抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションが有効である。しかし、第1選択としてのクライオバルーンアブレーションの安全性と有効性は確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。

医療機器選定を巡って医師へのリベートは尽きない(解説:折笠秀樹氏)-1328

企業が医師へ渡すリベートが増えるにつれ、医療機関がその企業の医療機器を選定しがちだという報告です。人の心理としては、もしコスパに違いがなければ、印象のよい企業に決めるのは当たり前だと思います。しかし、キックバックが一番大きい企業に決めるというのは筋違いではないでしょうか。病院にとって支払う額は高くなるわけだし、医療費を上げることにもなるでしょう。そうすると、損をするのは患者になるわけです。どの世界でも営業でキックバックはあるかもしれませんが、それは消費者の損になることです。個人的にはやめてもらいたいと思います。