循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:179

日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。

心不全は非心臓手術後の死亡リスクを増大/JAMA

 待機的非心臓手術を受けた心不全患者は、症状の有無にかかわらず、同様の手術を受けた非心不全患者に比べ術後90日死亡リスクが有意に高いことが、米国・スタンフォード大学のBenjamin J. Lerman氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月12日号に掲載された。心不全は、術後死亡の確立されたリスク因子であるが、左室駆出率(LVEF)や心不全の症状が手術アウトカムに及ぼす影響は、いまだ十分には知られていないという。

要するにLAD(解説:今中和人氏)-1008

本邦の初回冠動脈バイパス術の在院死亡率は1%台で安定し、PCIなど他の治療との比較にしても、オフポンプ手術にしても、グラフト素材にしても、論点はもっぱら長期予後である。本論文は、英国を中心とする28施設での冠動脈バイパス3,102例を、内胸動脈を1本(片側)使うか2本(両側)使うかでランダム化した前向き試験の10年報告である。バイパスは平均3本で、内胸動脈はいずれも左冠動脈系に吻合された。検討項目は全死因死亡、心臓死、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建、周術期の出血と創感染である。

血圧レベル別の脳卒中・冠動脈疾患死亡の生涯リスク~EPOCH-JAPAN

 生涯リスク(lifetime risk、以下LTR)は、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示す。アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease、以下CHD)死亡のLTRを算出した研究は存在しない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡およびCHD死亡のLTRが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告した。本研究で算出されたLTRは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう、と結論している。Hypertension誌2019年1月号に掲載。

英国の心不全診断後の生存、改善はわずか/BMJ

 21世紀に入り、心不全と診断された後の生存期間は、わずかに改善しているのみで、がんなど他の重篤な疾患と比べると遅れをとっており、貧困の度合いによる生存期間の格差も広がっていることが示された。英国・オックスフォード大学のClare J. Taylor氏らが、英国のプライマリケアにおける地域住民を対象としたコホート研究の結果を報告した。心不全患者は増加の傾向にあり、英国では92万人が患っているとされる。心不全患者の生存率は低いが、長期にわたる生存傾向を調べた研究では一貫した結果が得られていなかった。BMJ誌2019年2月13日号掲載の報告。

揚げ物フェチの死亡リスクは上昇する可能性高い?(解説:島田俊夫氏)-1009

私達は生きるために、食物を摂取することによりエネルギーを獲得している。ところが、現代社会では、昔と異なり自宅で食事をする習慣が希薄になり、外食産業への依存が増していることは明らかな事実である。なかでも揚げ物は、調理の簡便性や嗜好の視点から好まれる傾向がある。とくにファストフードの普及で、フライドチキン、フライドポテト1)らが、世界中の多くの国々において、日々の生活の中で愛用されている。このような食生活環境の変化の中で、揚げ物、とくにフライドチキンや魚介類フライの摂取量増加が死亡リスク高めている可能性を、米国・アイオワ大学のYangbo Sun氏らが、閉経後女性を対象とした大規模前向きコホート研究(Women’s Health Initiative:WHI)のデータ解析結果から明らかにし、揚げ物による深刻な死亡率への影響を2019年1月23日のBMJ誌に報告した。この論文に関して私的見解をコメントする。

感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療を部分的に経口抗菌薬に変更できるか(解説:吉田敦氏)-1007

感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療は長期にわたる。中には臨床的に安定したため、抗菌薬の静注が入院の主な理由になってしまう例もある。安定した時期に退院とし、外来で静注抗菌薬の投与を続けることも考えられるが、この場合、患者本人の負担は大きく、医療機関側の準備にも配慮しなければならない。このような背景から、今回デンマークにおいて左心系の感染性心内膜炎を対象とし、静注抗菌薬による治療を10日以上行って安定した例において、そのまま静注抗菌薬を継続・完遂するコントロール群と(治療期間中央値19日)、経口抗菌薬にスイッチして完遂する群(同17日)について、死亡率、(あらかじめ想定されていない)心臓手術率、塞栓発生率、菌血症の再発率が比較された(プライマリーアウトカム指標)。

ハイリスク症例に絞って検討していたらどうだったのだろうか?(解説:野間重孝氏、下地顕一郎氏)-1005

急性心筋梗塞においては、急性期緊急PCIが導入される前の院内死亡率は20%を超えていたが、PCIが導入されて以降、ほぼ確実に心表面の責任冠動脈を再灌流させることが可能となり、この疾患による急性期の死亡率は6%程度にまで劇的に改善した。しかし、昨年のCenko Eらによる報告でも、primary PCIを受けた群での急性期の死亡率は4%前半であり(JAMA Intern Med. 2018)、それ以上の目覚ましい改善は見られていない。微小循環障害の改善ができないことによって引き起こされると考えられる、急性期、慢性期の合併症の予防は、現在も解決できておらず、この問題が急性心筋梗塞のさらなる死亡率の改善を阻んでいるのではないかと考えられている。

75歳超にもスタチン療法は有益か/Lancet

 スタチン療法は、年齢にかかわらず主要血管イベントを有意に抑制することが、28件の無作為化試験、被験者総数約19万例を対象にしたメタ解析の結果、明らかになった。閉塞性血管疾患の所見がすでにみられない75歳超の高齢者におけるベネフィットについては、直接的なエビデンスが不足していたが、その点に関して現在、さらなる試験が行われているという。オーストラリアの研究グループ「Cholesterol Treatment Trialists' Collaboration」が行った研究結果で、Lancet誌2019年2月2日号で発表された。スタチン療法は、さまざまな患者の主要血管イベントや血管死を抑制することが示されているが、高齢者における有効性および安全性は不確かである。研究グループは、年齢の違いによるスタチン療法の有効性を比較したすべての大規模スタチン試験からデータを集めてメタ解析を行った。

厳格な降圧でも認知症の増加はない(解説:桑島巖氏)-1004

厳格な降圧は認知症と関連するという懸念が一部にあったが、本試験の結果はそれを否定する科学的根拠を示した大規模臨床試験として貴重である。降圧目標値の120mmHgが従来目標の140mmHgに比して心血管イベント抑制効果が高いことを示した有名な米国SPRINT試験のサブ試験である。当初から認知症疑い(probable dementia)をエンドポイントに設定して施行したprospective studyであり、信頼性は高い。