素材か道具か人間か-ベスト・プラクティスは何処に?(解説:今中和人氏)-1001
本論文は16の退役軍人病院における冠動脈バイパス1,150例をランダム化し、大伏在静脈(SVG)を576例は内視鏡的に、574例は切開して採取し、中央値2.78年までの臨床成績を検討している(造影検査は検討対象外)。特徴的な制約として、内視鏡的採取100例以上(切開へのコンバート5%以下)、臨床経験2年以上の熟練者のみがSVG採取を行った。結論は、死亡、非致死性心筋梗塞、再血行再建などの主要転帰はまったく同等で14~15%、SVG採取時間も1時間前後で有意差はなかったが、下肢合併症(感染、疼痛、滲出、抗菌薬投与)は、いずれも有意に内視鏡群で低率であった。過去には内視鏡的採取は成績が著しく劣るとする論文も多く、それを支持するメタ解析もあって、この論文はそれらに異を唱える形である。そんな本論文の著者が強調しているのはSVG採取を熟練者に限定したことで、結論が食い違った理由は、過去の論文には不慣れな採取者による質の良くないSVGが含まれているためではないかと推論している。