循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:43

心臓リハビリテーションでCABG後の死亡リスク低下

 冠動脈バイパス手術(CABG)後の患者では、心臓リハビリテーション(CR)の利用により、退院後2年以内の死亡リスクが低下するという研究結果が「Annals of Thoracic Surgery」に6月29日掲載された。  CRは冠動脈血行再建術を受けた患者に対し、転帰改善を目的として外来で提供される監督下の運動リハビリテーションプログラムである。しかし、CABG後の患者に対するCRの実臨床での長期転帰データは十分には得られていない。そこで、米ミシガン大学アナーバー校のTyler M. Bauer氏らは、米ミシガン州におけるメディケア出来高払い請求登録と診療データを紐付け、2015年1月1日~2019年9月30日に同州内の33施設において単独CABGを受けて生存退院した患者を特定。退院後1年以内にCRを利用した患者と利用しなかった患者の間で、退院後2年以内の死亡リスクが異なるか否かを比較した。また、CRの利用セッション数のカテゴリによる違いも検討した。

現代の血管インターベンション治療のレベルを無視しているのではないか(解説:野間重孝氏)

この論文(ORBITA-2試験)の評価には、まず2017年に同グループによってLancet誌に発表されたORBITA試験について知っておく必要がある。同論文はジャーナル四天王で紹介されたのでお読みになった方も多いかと思う(「PCIで運動時間が改善するか?プラセボとのDBT:ORBITA試験/Lancet」)。また、奇縁にもその論文評を評者らが担当していた(下地 顕一郎君との共著)(「ORBITA試験:冷静な判断を求む」)。その関係から、以下前回の論文評と内容に一部重複する部分も見られると思うがご容赦願いたい。ORBITA試験は至適薬物治療を受けている重症一枝病変の安定狭心症患者200例を対象とし、PCIが行われた群とプラセボ手術が行われた群とに分け、運動時間増加量を無作為化二重盲検試験で比較検討した試験である。この結果は大きな議論の対象となった。両群で運動時間増加量に差が認められなかったからである。つまり、少し乱暴な言い方をすれば、PCIなどやってもやらなくても同じだという結果が出されたのである。これを受けてLancet誌同号のeditorialで「薬物療法に対して不応な症例ですらPCIは無益」で「すべてのガイドラインでPCIを格下げすべきである」といった感情的な議論がなされ、これに対しこの論文の筆頭著者だったAl-Lameeが反論するといった、一種のドタバタ喜劇が演じられるという一幕もあった。

皮膚疾患へのJAK阻害薬、心血管リスクを増加させず

 無作為化比較試験35件の皮膚疾患患者2万例超を対象としたメタ解析において、JAK阻害薬の使用はプラセボ/実薬対照と比較して、主要心血管イベント(MACE)および全死亡、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク増加と関連しなかった。米国・New York University Grossman School of MedicineのJenne P. Ingrassia氏らが報告した。JAK阻害薬は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症などの皮膚疾患に対する有効な治療選択肢であるが、米国食品医薬品局(FDA)が経口・外用JAK阻害薬について、MACE、VTE、重篤な感染症、悪性新生物、死亡のリスク増加に関する枠囲み警告(boxed warning)を付している。しかし、この枠囲み警告は関節リウマチ患者を対象とした「Oral Rheumatoid Arthritis Trial(ORAL)Surveillance試験」の結果に基づくもので、皮膚疾患患者で同様の関連が観察されるかは明らかになっていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年11月1日号掲載の報告。

仰臥位での血圧高値がCVDリスクと独立して関連

 座位で測定した血圧にかかわらず、仰臥位で測定した血圧が高い場合は心血管疾患(CVD)リスクが上昇することを示すデータが報告された。米ハーバード大学医学部のDuc M. Giao氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)の高血圧科学セッション2023(9月7~10日、ボストン)で結果が発表された。  血液は重力によって体の下方に溜まりやすいため、立位、座位、仰臥位などの状態に応じて自律神経系が働き、血圧を適切に維持している。Giao氏は、「座位の血圧のみが測定されているとしたら、仰臥位で血圧が上昇している場合のリスク上昇が見逃されている可能性がある」と述べている。

冠動脈疾患へのPCI、血管内イメージングガイドvs.冠動脈造影ガイド/BMJ

 冠動脈疾患を有する成人患者において、冠動脈造影ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して血管内イメージングガイド下PCIは、心臓死のほか心筋梗塞、ステント血栓症など心血管アウトカムのリスクを有意に減少させ、この有益性は疾患の複雑性やイメージングのモダリティを問わずに一貫してみられることが、米国・Houston Methodist DeBakey Heart and Vascular CenterのSafi U. Khan氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年11月16日号で報告された。

ヴィーガン食の健康への影響を双子で比較すると…?

 ヴィーガン(完全菜食主義)食は環境負荷が低いだけでなく、健康にも良い影響を及ぼすことが報告されている。しかし、その多くは疫学研究に基づくものである。そこで、米国・スタンフォード大学のMatthew J. Landry氏らは、交絡を抑制するために一卵性双生児を対象とした臨床研究を実施し、ヴィーガン食の心代謝系への影響を検討した。その結果、ヴィーガン食は通常食と比べてLDLコレステロール(LDL-C)値、空腹時インスリン値、体重を有意に低下させた。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年11月30日号で報告された。

lepodisiran、リポ蛋白(a)値を著明に低下/JAMA

 リポ蛋白(a)値の上昇は、主要有害心血管イベントや石灰化大動脈弁狭窄症の発症と関連する。循環血中のリポ蛋白(a)濃度は、ほとんどが遺伝的に決定され、生活習慣の改善やスタチン投与など従来の心血管リスク軽減のアプローチの影響を受けない。米国・Cleveland Clinic Center for Clinical ResearchのSteven E. Nissen氏らは、肝臓でのアポリポ蛋白(a)の合成を抑制することでリポ蛋白(a)の血中濃度を減少させるRNA干渉治療薬lepodisiran(N-アセチルガラクトサミン結合型短鎖干渉RNA)の安全性と有効性について検討を行った。その結果、本薬は忍容性が高く、用量依存性に長期間にわたり血清リポ蛋白(a)濃度を大幅に低下させることが示された。

欧州で行われた臨床研究の結果は、日本の臨床に当てはめることはできない?(解説:山地杏平氏)

BIOSTEMI試験の5年生存追跡結果が、TCT 2023で発表され、Lancet誌に掲載されました。ST上昇型心筋梗塞(STEMI)症例において、生分解性ポリマーを用いた超薄型シロリムス溶出性ステントであるOrsiroとエベロリムス溶出性ステントのXienceを比較した試験の追跡期間を5年に延長した試験になります。第2世代の薬剤溶出性ステントであるXienceは、第1世代の薬剤溶出性ステントであるCypherやTaxusと比較し有意に優れていることが多くの試験で示されてきました。その一方で、Xience以降に新たに発売された薬剤溶出性ステントは、Xienceに対して非劣性は示されてきたものの、優越性が示されたものはありませんでした。2014年にLancet誌で発表されたBIOSCIENCE試験でも、これまでの試験と同様に、OrsiroはXienceと比較して非劣性であることが示されましたが、そのサブグループであるSTEMI症例において、有意にOrsiroが優れていることが示唆されました。

妊娠高血圧、自己モニタリング+遠隔指導で産後の長期血圧が改善/JAMA

 出産後に降圧薬を要する妊娠高血圧腎症または妊娠高血圧の女性において、血圧の自己モニタリングと医師による降圧薬漸増の遠隔指導は、通常の産後外来管理と比較して、産後9ヵ月時の血圧が低下したことが示された。英国・オックスフォード大学のJamie Kitt氏らが、同国の単施設で実施した、評価者盲検の無作為化並行群間非盲検比較試験(PROBE試験)「Physician Optimized Postpartum Hypertension Treatment Trial:POP-HT試験」の結果を報告した。妊娠高血圧は有害な心臓リモデリングを引き起こし、その後の高血圧および心血管疾患の発症率を高めることが知られているが、血圧の自己モニタリングと医師の遠隔モニタリングによる指導が血圧管理を改善することが示唆されていた。JAMA誌2023年11月28日号掲載の報告。

完全磁気浮上LVAD装着の重症心不全、アスピリンは不要?/JAMA

 完全磁気浮上の左心補助人工心臓(LVAD)を装着した重症心不全患者において、ビタミンK拮抗薬(VKA)による抗血栓療法は、VKA+アスピリンと比較して血栓塞栓症のリスクが増加することはなく、出血イベントを減少させる。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが、北米、欧州、オーストラリアなど9ヵ国の51施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Antiplatelet Removal and Hemocompatibility Events With the HeartMate 3 Pump trial:ARIES-HM3試験」の結果を報告した。LVADは重症心不全患者の生活の質と生命予後を向上させるが、非外科的出血イベントは最も一般的な合併症である。