循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:40

分岐部病変のPCI、OCTガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 複雑な冠動脈分岐部病変を有する患者では、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管造影ガイド下PCIと比較して、2年時点の主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が低いことを、デンマーク・オーフス大学病院のNiels R. Holm氏らが、欧州の38施設で実施された多施設共同無作為化非盲検試験「European Trial on Optical Coherence Tomography Optimized Bifurcation Event Reduction(OCTOBER)試験」の結果、報告した。OCTガイド下PCIは、血管造影ガイド下PCIと比較してより良好な臨床アウトカムに関連することが知られているが、冠動脈分岐部を含む病変に対するPCIにおいても同様の結果が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。

健康な人でも少量の習慣的な飲酒で血圧上昇

 高血圧でない人が少量のアルコールを習慣的に飲み続けていると、血圧が上昇する可能性のあることが明らかになった。モデナ・レッジョ・エミリア大学(イタリア)のMarco Vinceti氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に7月31日掲載された。  アルコール摂取が血圧を高めることが知られているが、摂取量がわずかな場合にもそのような影響が生じるのか否かは明確になっていない。そこでVinceti氏らは、飲酒量と血圧との関連を縦断的に調査した過去の研究のデータを用いた用量反応メタ解析によって、この点を検討した。PubMedまたはEmbaseに、2023年5月9日までに収載された論文から、研究参加者が健康な成人であることなどの包括基準を満たす、日本、米国から各3件、韓国から1件、計7件の研究報告を抽出。研究参加者数は合計1万9,548人、追跡期間は中央値5.3年(範囲4~12)だった。

AF伴う末期心不全、カテーテルアブレーションは?/NEJM

 心房細動を伴う末期心不全患者において、カテーテルアブレーション+薬物療法は薬物療法単独に比べ、あらゆる原因による死亡、左心補助人工心臓(LVAD)の植え込み、緊急心臓移植の複合イベント発生の可能性を低下することが、ドイツ・ルール大学ボーフムのChristian Sohns氏らによる無作為化比較試験の結果で示された。これまで同患者においてカテーテルアブレーションが果たす役割は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。

家庭料理をターゲットに地域介入、減塩・降圧に効果/BMJ

 家庭内の調理人と家族をターゲットとしたコミュニティベースの減塩教育やモニタリングが、食塩摂取量および血圧の低下に有効であったことを、中国・疾病予防管理センターのXiaochang Zhang氏らが報告した。中国6省6都市、60コミュニティの788家族を対象に行ったクラスター無作為化比較試験の結果で、著者は、「こうした介入は、食塩の主な摂取源が依然として家庭料理である中国および他国で、広く用いることができるだろう」と述べている。中国の食塩摂取量は推奨制限量の2倍を超えており、摂取が主に加工食品からの西欧諸国とは異なり、中国では76%が家庭料理に由来していることが報告されていたが、これまで家庭料理をターゲットとした介入の無作為化試験によるエビデンスはなかった。BMJ誌2023年8月24日号掲載の報告。

セマグルチドが肥満HFpEF患者の症状軽減、減量効果も/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)を呈する肥満の患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチドはプラセボと比較して、症状と身体的制限を軽減するとともに、運動機能を改善し、減量効果をもたらすことが、米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMikhail N. Kosiborod氏らが実施した「STEP-HFpEF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号で発表された。  STEP-HFpEF試験は、日本を含む13ヵ国96施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年3月~2022年3月の期間に患者の登録を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。

多枝病変を有するSTEMIのPCI、即時vs.段階的/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と多枝冠動脈病変を有し、血行動態が安定した患者の治療では、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、予定外の虚血による血行再建術、心不全による入院の複合リスクに関して、即時的な多枝経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行は段階的な(staged)多枝PCIに対して非劣性であるとともに、優越性をも示したことが、スイス・チューリッヒ大学病院のBarbara E. Stahli氏らが実施した「MULTISTARS AMI試験」の結果、報告された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月27日号に掲載された。  MULTISTARS AMI試験は、欧州の37施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年10月~2022年6月に患者のスクリーニングが行われた(Boston Scientificの助成を受けた)。

がんサバイバーの心不全発症、医療者の知識不足も原因か/日本腫瘍循環器学会

 9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、神戸にて第6回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催される(大会長:平田 健一氏[神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野])。それに先立ち、大会長による学会の見どころ紹介のほか、実際にがんサバイバーで心不全を発症した女性がつらい胸の内を語った。  今回のメディアセミナーに患者代表として参加した女性は、10代で悪性リンパ腫の治療のために抗がん剤を使用。それから十数年以上経過した後に健康診断で乳がんを指摘されて乳房温存手術を受けたが、その後にリンパ節転移を認めたため、抗がん剤(計8コース)を行うことになったという。しかし、あと2コースを残し重症心不全を発症した。幸いにも植込み型補助人工心臓(VAD)の臨床試験に参加し、現在に至る。

多枝病変の高齢心筋梗塞、完全血行再建術vs.責任病変のみ/NEJM

 心筋梗塞と多枝病変を有する75歳以上の患者の治療において、生理学的評価ガイド下(physiology-guided)完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、1年後の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合アウトカムのリスクが低下し、安全性アウトカムの指標の発生は同程度であったことが、イタリア・フェラーラ大学病院のSimone Biscaglia氏らが実施した「FIRE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年9月7日号で報告された。

拡張型心筋症の遺伝子構造はアフリカ系と欧州系患者とで異なっている(解説:原田和昌氏)

次世代シークエンスを用いた網羅的な心筋症遺伝子解析による心筋症の病態解明とそれを用いたプレシジョン・メディシンに期待が集まっている。米国・DCMコンソーシアムのDCM Precision Medicine Studyのこれまでの調査によれば、拡張型心筋症(DCM)患者の約30%が家族性DCMであり、黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも家族性DCMのリスクが高くアウトカムが不良であった。しかし、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものであった。米国・オハイオ州立大学のJordan氏らは、DCMに関係する36の遺伝子について、アフリカ系、欧州系、ネイティブ・アメリカンの患者を対象に、ゲノム祖先ごとに変異遺伝子構造を比較した。アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる、臨床的に治療標的として介入が期待される変異遺伝子(バリアント)を有する割合が低かった。

心原性ショックを伴う急性心筋梗塞、VA-ECMOの有用性は?/NEJM

 心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で早期血行再建を行う患者において、体外式生命維持装置(ECLS)とも呼ばれる静脈動脈-体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を用いた治療は、薬物治療のみと比較し30日全死因死亡リスクを低下せず、むしろ中等度または重度の出血や治療を要する虚血性末梢血管疾患のリスクを高めることが示された。ドイツ・ライプチヒ大学のHolger Thiele氏らが、ドイツとスロベニアで行われた医師主導の多施設共同無作為化非盲検試験「ECLS-SHOCK試験」の結果を報告した。死亡に対するECLSの有効性に関するエビデンスはないにもかかわらず、梗塞関連心原性ショックの治療におけるECLSの使用が増加していた。NEJM誌オンライン版2023年8月26日号掲載の報告。