出産後に降圧薬を要する妊娠高血圧腎症または妊娠高血圧の女性において、血圧の自己モニタリングと医師による降圧薬漸増の遠隔指導は、通常の産後外来管理と比較して、産後9ヵ月時の血圧が低下したことが示された。英国・オックスフォード大学のJamie Kitt氏らが、同国の単施設で実施した、評価者盲検の無作為化並行群間非盲検比較試験(PROBE試験)「Physician Optimized Postpartum Hypertension Treatment Trial:POP-HT試験」の結果を報告した。妊娠高血圧は有害な心臓リモデリングを引き起こし、その後の高血圧および心血管疾患の発症率を高めることが知られているが、血圧の自己モニタリングと医師の遠隔モニタリングによる指導が血圧管理を改善することが示唆されていた。JAMA誌2023年11月28日号掲載の報告。
血圧の自己モニタリングと医師による降圧薬漸増の遠隔指導を、従来の産後ケアと比較
研究グループは、妊娠後に妊娠高血圧腎症または妊娠高血圧を合併し、出産後の退院時においても降圧薬の投与が必要な18歳以上の女性を登録し、介入群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。介入群では、Bluetooth対応のワイヤレスモニターOMRON Evolv血圧計(Omron Healthcare Europe製)を配布し、患者がスマートフォンアプリを用いて血圧の自己モニタリングを行うとともに、医師が最適化した降圧薬の漸増を遠隔指導した。対照群では通常の産後ケアを行った。
主要アウトカムは産後9ヵ月時の24時間平均拡張期血圧(DBP、ベースラインの産後血圧で調整)で、無作為化後少なくとも1回評価された集団を解析対象として線形混合モデルを用い、群間比較を行った。
介入は産後の長期血圧管理に有用
2020年2月21日~2021年3月21日に、220例が介入群(112例)または対照群(108例)に無作為に割り付けられた。平均(±SD)年齢は32.6±5.0歳で、40%が妊娠高血圧、60%が妊娠高血圧腎症であった。最終追跡調査日は2021年11月2日、追跡期間は約9ヵ月であった。
主要アウトカムの解析対象200例(91%)において、産後(平均249±16日目)に測定した調整後24時間平均DBP(±SD)は、介入群71.2±5.6mmHg、対照群76.6±5.7mmHg、群間差は-5.80mmHg(95%信頼区間[CI]:-7.40~-4.20、p<0.001)であり、介入群で低かった。
同様に、24時間平均収縮期血圧は、介入群114.0±7.7mmHg、対照群120.3±9.1mmHg、群間差-6.51mmHg(95%CI:-8.80~-4.22、p<0.001)であり、介入群で低かった。
有害事象は、退院後14日間の再入院が41例に認められ、そのうち37例が血圧の上昇に関連していたが、介入群で少なかった(介入群8例[7%]vs.対照群29例[27%]、p<0.001)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)