糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

エンパグリフロジン投与終了後もCKDの心・腎保護効果が持続、レガシー効果か?(解説:栗山哲氏)

EMPA-KIDNEY試験では、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(エンパ)の心・腎保護作用が、糖尿病性腎症(DKD)のみならず非糖尿病CKD(CKD)においても示された(The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. N Engl J Med. 2023;388:117-127.)。今回の報告は、同試験の終了後の追跡評価(post-trial follow-up)である。その結果、エンパの投与終了後、少なくとも1年間は心・腎保護作用が持続した。この成績が先行治療終了後も臓器保護作用が持続する、いわゆるレガシー(遺産)効果の初期像を観察しているとすれば、SGLT2阻害薬の新知見の可能性がある。

フィネレノンによるカリウムの影響~HFmrEF/HFpEFの場合/AHA2024

 左室駆出率(LVEF)が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保たれた心不全(HFpEF)患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)は高カリウム血症の発症頻度を高めたが、その一方で低カリウム血症の発症頻度を低下させたことが明らかになった。ただし、プロトコールに沿ったサーベイランスと用量調整を行った場合、プラセボと比較し、カリウム値が5.5mmol/Lを超えた患者でもフィネレノンの臨床的な効果は維持されていた。本研究結果は、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表し、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年11月17日号に同時掲載された。

HFrEF患者の死亡リスク、SGLT-2阻害薬で25%減/BMJ

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)を有する患者において、SGLT-2阻害薬の使用者は非使用者と比較して、全死因死亡リスクが25%低かった。デンマーク・国立血清学研究所(SSI)のHenrik Svanstrom氏らが、同国心不全レジストリ(Danish Heart Failure Registry)と国民登録簿(Danish national registers)を結び付けて解析した非介入データベース試験の結果を報告した。臨床試験では、SGLT-2阻害薬は糖尿病の有無にかかわらず、駆出率が低下した心不全患者の病状悪化および死亡のリスクを低下することが示されている。しかし、臨床試験のような管理下にない幅広い心不全患者集団における、SGLT-2阻害薬の有効性はほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、実臨床において、および糖尿病患者と非糖尿病患者を含むすべての重要な臨床サブグループにおいて、SGLT-2阻害薬の有効性を支持するものであった」とまとめている。BMJ誌2024年11月6日号掲載の報告。

高強度の運動は空腹感を抑制する?

 ランニングや水泳などの心拍数が上がるような高強度の運動は、早歩きやアクティブヨガなどのより低強度の運動よりも、食欲増進に関連するホルモンであるグレリンの抑制に効果的であることが、新たな研究で明らかになった。このような高強度の運動がもたらす効果は、男性よりも女性で顕著なことも示唆されたという。米バージニア大学医学部のKara Anderson氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the Endocrine Society」11月号に掲載された。  グレリンには、アシル化グレリン(AG)と非アシル化グレリン(DAG)という2つの形態が存在し、体内で、エネルギーバランス、食欲、血糖値、免疫機能、睡眠、記憶などに広範囲にわたって影響を及ぼすことが明らかにされている。グレリンはまた、急な運動により濃度が変動することも示されている。しかし、運動強度がグレリンレベルと食欲に与える影響についてのデータは限られている上に、そうした研究は主に男性のみを対象にしたものだという。

EPA製剤など、重大な副作用に「心房細動、心房粗動」追加/厚労省

 2024年11月13日、厚生労働省はイコサペント酸エチルならびにオメガ-3脂肪酸エチルの添付文書の改訂指示を発出した。重大な副作用の項に「心房細動、心房粗動」の追記がなされる。  今回、イコサペント酸エチル、オメガ-3脂肪酸エチル投与後の心房細動、心房粗動に関連する公表文献を評価、専門委員の意見も聴取した結果、心房細動または心房粗動のリスク増加を示唆する報告があることから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。

末期腎不全の患者、男女ともに過体重・肥満者が増加/新潟大

 肥満は、腎臓に悪影響を及ぼし、慢性腎臓病(CKD)の発症や悪化に繋がるリスクとなる。最近の透析導入患者でも肥満者の割合が高まっていることが、米国などから報告されているが、わが国の割合の経年変化は検討されていなかった。そこで、新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学講座の若杉 三奈子氏らの研究グループは、2006~2019年の間にわが国の透析導入患者について、肥満者とやせた人の割合について経年変化を評価した。その結果、男女とも肥満者の割合が有意に増加し、その増加率は一般住民を上回っていたことが判明した。Nephrology誌オンライン版2024年10月27日号に掲載。

セマグルチドで肥満のある変形性膝関節症患者の体重減少と変形性関節炎の痛みが改善するが、副作用に関する懸念が残る(解説:名郷 直樹氏)

BMIが30を超える肥満の変形性膝関節症患者を対象にGLP1受容体アゴニスト、セマグルチドとプラセボを比較し、68週後の体重と痛みの変化を1次アウトカムにしたランダム化比較試験である。体重変化について、セマグルチド群で体重減少が10.5%多く、95%信頼区間[CI]が12.3~8.6%、痛みの改善について100点満点の痛みのスコアで14.1点、95%[CI]で20~8.3と改善の幅が大きいことが報告されている。61のサイトから407例が登録されているが、1施設当たりの患者数が7例以下と少なく、施設の違いが大きな交絡因子になる可能性がある。またランダム化が偶然の影響を受けやすいかもしれない。ただ、この研究では6例を単位としたブロックランダム化を採用しており、偶然の影響に対する対応がなされてはいる。しかし、実際患者背景を見ると、女性の割合や人種構成に差があり、BMIが40以上の割合がセマグルチド群で多く、喘息患者がプラセボ群で2倍というように、かなりの違いが認められる。数百人規模の試験であるために、患者背景が十分にそろっておらず、偶然の影響による交絡因子の排除に問題がある可能性が高い。

40歳未満の2型糖尿病、合併症と死亡率は?~最長30年の前向き調査

 新たに2型糖尿病と診断された患者を前向きに最長30年間追跡した調査において、40歳未満で診断された患者は、40歳以上で診断された患者に比べて糖尿病関連合併症の発症や死亡のリスクが高く、血糖コントロールが20年にわたって不良であることが、オーストラリア・シドニー大学のBeryl Lin氏らによって明らかになった。Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2024年10月23日号掲載の報告。  これまでの研究によって、若年成人期に発症した2型糖尿病は、β細胞機能の劣化が早く、心血管系疾患や腎症などの合併症リスクが大きいことが示唆されているが、若年成人の2型糖尿病に特化した前向きコホート研究はほとんどない。そこで研究グループは、40歳未満と40歳以上で発症した2型糖尿病患者の合併症の発症率や死亡率を比較するために調査を実施した。

高用量ビタミンDは心血管マーカーを低下させるか

 観察研究において、血清ビタミンD値が低い高齢者の心血管疾患(CVD)リスクが高いことが示されているが、ランダム化比較試験ではビタミンDサプリメントによるCVDリスクの低下効果は実証されていない。今回、米国・ハーバード大学医学部のKatharine W Rainer氏らの研究で、高用量ビタミンD投与は低用量ビタミンD投与と比較し、血清ビタミンD値が低い高齢者の潜在的心血管マーカーに影響を与えなかったことが明らかになった。American Journal of Preventive Cardiology誌2024年12月号オンライン版掲載の報告。

肥満の膝OA患者へのセマグルチド、疼痛を改善/NEJM

 肥満(BMI値≧30)かつ中等度~重度の疼痛を伴う変形性膝関節症(OA)を有する患者において、週1回のセマグルチド皮下投与はプラセボと比較して、体重および膝OA関連の疼痛を有意に減少したことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のHenning Bliddal氏らSTEP 9 Study Groupが二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。体重の減少は疼痛などの膝OAの症状を緩和することが示されているが、肥満者のGLP-1受容体作動薬の効果は十分には研究されていなかった。NEJM誌2024年10月31日号掲載の報告。