糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

長らく日の目を見なかったアミリンが抗肥満薬として復活した(解説:住谷哲氏)

 アミリン(amylin)、別名膵島アミロイドポリペプチド(islet amyloid polypeptide:IAPP)は、インスリンと同時に膵β細胞から分泌されるホルモンである。アミリンには消化管運動調節作用があり食後の血糖上昇を抑制することから、すでに20年前にアミリンアナログであるpramlintideが商品名SymlinとしてFDAに血糖降下薬として承認されている(日本では未承認)。しかしpramlintideは半減期が短く、1日3回の注射が必要であるためほとんど使用されていない。  アミリンは当初から食欲中枢に作用して食欲を低下させることが知られていた。そこでアミリンの分子構造を変化させることで週1回投与を可能にしたcagrilintideが抗肥満薬として開発された。プラセボと比較した第II相試験では、cagrilintide 2.4mgはプラセボと比較して9.7%の体重減少をもたらした。さらに本試験の前段階である第Ib相の臨床試験において、cagrilintide 2.4mg+セマグルチド2.4mg(CagriSema)の投与は17.1%の体重減少をもたらすことが報告されている。

きつい運動の前の減量は受傷発生を減少させる

 社会的に一番きつい運動をしているのは軍隊や警察などのグループである。こうしたグループに入隊する前の減量は、入隊後のけがや事故などに影響を与えるのであろうか。このテーマについて、米国陸軍環境医研究所軍事能力部門のVy T. Nguyen氏らの研究グループは、入隊前の体重減少と過酷な基礎戦闘訓練(BCT)中の筋骨格系損傷(MSKI)発生率との関連性を調査した。その結果、入隊のために減量した訓練生はMSKIの発生率が低いことが判明した。この結果はObesity誌オンライン版2025年7月30日号に公開された。

フルーツジュースの適度な摂取が糖尿病リスクを減らす/東京科学大

 フルーツジュースは、2型糖尿病とどのように関連するのであろうか。このテーマについて、東京科学大学大学院医歯学総合研究科の河原 智樹氏らの研究グループは、国内13の大学や病院が参加する大規模調査「J-MICC研究」に登録された1万3,769人分のデータを用い、フルーツジュースを飲む頻度と2型糖尿病との関連を調査した。その結果、遺伝的リスクが高い人ほど、適度にフルーツジュースを飲むことで糖尿病にかかりにくくなるという結果が判明した。この研究結果は、British Journal of Nutrition誌オンライン版2025年7月10日号に掲載された。

降圧薬で腸管血管性浮腫の報告、重大な副作用を改訂/厚労省

 2025年9月9日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬で重大な副作用が改められた。  今回、ACE阻害薬、ARB、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)および直接的レニン阻害薬の腸管血管性浮腫について評価した。その結果、「血管性浮腫の一種である腸管血管性浮腫についても、潜在的なリスクである可能性があること」「国内外副作用症例において、腸管血管性浮腫に関連する報告が認められていない薬剤もあるものの、複数の薬剤において腸管血管性浮腫との因果関係が否定できない症例が認められていること」「医薬品医療機器総合機構で実施したVigiBaseを用いた不均衡分析において、複数のACE阻害薬およびARBで『腸管血管性浮腫』に関する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より統計学的に有意に高かったこと」を踏まえ、改訂に至った。

砂糖の取り過ぎは認知症リスクと関連するか

 過剰な糖質の摂取は、認知症リスクの上昇と関連しているといわれているが、これまでの研究ではサンプル数が少なく、糖質の総量に着目しているため、特定の糖質サブタイプに関する調査は限られていた。中国・西安交通大学のYue Che氏らは、糖質の摂取量およびサブタイプと認知症リスクとの関係を評価するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年7月31日号の報告。  英国バイオバンク参加者のうち、24時間食事回想法を1回以上実施した17万2,516人を対象に分析を行った。糖質の総量およびサブタイプ(遊離糖、果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、その他の糖類)について、Cox比例ハザードモデルを用いて、認知症リスクに関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。性別による層別化分析も実施した。

肥満手術、SADI-SはRYGBを凌駕するか/Lancet

 2007年以来、Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)に代わる肥満治療として、スリーブ状胃切除術+単吻合十二指腸バイパス術(SADI-S)が提案されている。フランス・Hospices Civils de LyonのMaud Robert氏らSADISLEEVE Collaborative Groupは、2年のフォローアップの結果に基づき、肥満治療ではRYGBよりもSADI-Sの有効性が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で多施設共同非盲検無作為化優越性試験「SADISLEEVE試験」を実施。術後2年の時点で、RYGB群と比較してSADI-S群は優れた体重減少効果を示し、安全性プロファイルは両群とも良好であったことを報告した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。

DPP-4阻害薬でコントロール不十分な2型糖尿病にイメグリミン追加が有効~FAMILIAR試験

 食事療法・運動療法・DPP-4阻害薬投与で血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者に対して、イメグリミンの追加で24週までにHbA1c値が有意に低下したことが、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(FAMILIAR試験)の中間解析で示された。川崎医科大学の加来 浩平氏らがDiabetes, Obesity and Metabolism誌2025年6月号で報告した。

全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(以下、JSH2025)を8月29日に発刊した。6年ぶりとなる今回の改訂にあたり、大屋 祐輔氏(琉球大学名誉教授/高血圧管理・治療ガイドライン2025作成委員長)と苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が降圧目標や治療薬の位置付けと選択方法などについて、7月25日に開催されたプレスセミナーで解説した。

中年期の高コルチゾール値は閉経後のアルツハイマー病発症リスクと関連

 中年期にコルチゾール値が高い閉経後の女性では、アルツハイマー病(AD)のリスクが高まるという研究結果が、「Alzheimer’s & Dementia」に4月24日掲載された。  米テキサス大学サンアントニオ校グレン・ビッグス・アルツハイマー病・神経変性疾患研究所のArash Salardini氏らは、中年期のコルチゾール値が15年後のADバイオマーカー検査の結果を予測できるかを検討するために、縦断的データを用いた後ろ向き研究を実施した。解析対象となったのは、フラミンガム心臓研究に参加した認知機能障害のない成人305人のデータであった。

心不全入院へのダパグリフロジンの効果~DAPA ACT HF-TIMI 68試験/ESC2025

 SGLT2阻害薬は、外来での心不全治療において心血管死または心不全増悪のリスク低減に寄与するが、心不全による入院での投与開始データは限定的である。今回、ダパグリフロジンによるさまざまな臨床研究を行っているTIMI Study GroupがDAPA ACT HF-TIMI 68試験を実施。その結果、ダパグリフロジンを入院中に開始してもプラセボと比較して2ヵ月にわたる心血管死または心不全悪化リスクを有意に低下させなかった。ただし、3試験のメタ解析からSGLT2阻害薬が心血管死または心不全悪化の早期リスクと全死亡リスクを有意に低下させることが明らかになった。