糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

歯周病と糖尿病の強固な関連

 歯周病と糖尿病は、健康にダメージを与えるという点で恐ろしい関係性を持っていると、研究者らが警告している。その1人であるベルン大学(スイス)のAnton Sculean氏は、「最近の研究から、糖尿病は歯周病の主要なリスク因子であるだけでなく、この二つの病気の関係は双方向であって、互いに悪影響を強め合うことが分かっている」と解説する。なお、同氏は欧州歯周病連盟(EFP)の年次総会(EuroPerio11)の会長も務めている。  Sculean氏によると、この二つの病気の関係は、時間が経つにつれて致命的な結果を招く可能性さえあるという。中等度から重度の歯周病は、長期的には心臓病や全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスク上昇と関連してくるとのことだ。

SGLT2iはDPP-4iより網膜症リスクを抑制する可能性―国内リアルワールド研究

 合併症未発症段階の日本人2型糖尿病患者に対する早期治療として、DPP-4阻害薬(DPP-4i)ではなくSGLT2阻害薬(SGLT2i)を用いることで、糖尿病網膜症発症リスクがより低下することを示唆するデータが報告された。千葉大学予防医学センターの越坂理也氏、同眼科の辰巳智章氏らの研究グループが、大規模リアルワールドデータを用いて行ったコホート研究の結果であり、詳細は「Diabetes Therapy」に9月30日掲載された。  SGLT2iは血糖降下作用に加えて、血圧や脂質などの糖尿病網膜症(以下、網膜症)のリスク因子を改善する作用を持ち、また網膜症に関する観察研究の結果が海外から報告されている。ただし日本人でのエビデンスは少なく、特に早期介入のエビデンスは国際的にも少ない。これを背景として越坂氏らは、健康保険組合の約1700万人分の医療費請求情報および健診データが登録されている大規模データベース(JMDC Claims Database)を用いた解析を行った。

DOACとスタチンの併用による出血リスク

 直接経口抗凝固薬(DOAC)はスタチンと併用されることが多い。しかし、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用は、出血リスクを高める可能性が考えられている。それは、DOACがP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されるが、アトルバスタチンとシンバスタチンもP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されることから、両者が競合する可能性があるためである。しかし、これらの臨床的な影響は明らかになっていない。そこで、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngel Ys Wong氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用と出血、心血管イベント、死亡との関連を検討した。

GLP-1RAによる肥満治療が食品ロスを増やしている

 減量目的で使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、食品の廃棄を増やしているとする、米オハイオ州立大学のBrian Roe氏と同パデュー大学のJamil Mansouri氏による論文が、「Nutrients」に9月27日掲載された。このような問題が示された一方で、GLP-1RAによる減量を開始後に、人々が摂取する食品が健康的なものにシフトする傾向も認められたという。  この研究では、GLP-1RAの新規使用者505人を対象に、食品廃棄状況の調査を行った。その結果、GLP-1RAの使用を開始後に「食べ物を無駄にする量が増えたか」という問いかけに否定した人が60.8%(強い不同意が26.7%、やや不同意が34.1%)いた一方で、同意した人が25.3%(強い同意が6.7%、やや同意が18.6%)を占めていた。ただし、GLP-1RAの使用開始から時間がたつほど食品の廃棄が減る傾向も認められた。

「ストレス食い」の悪影響、ココアで軽減の可能性

 ストレスから、ついクッキーやポテトチップス、アイスクリームなどの脂肪分の多い食べ物に手が伸びてしまう人は、ココアを飲むことで健康を守ることができるかもしれない。新たな研究で、脂肪分の多い食事を取るときに、フラバノールが豊富に含まれているココアを一緒に飲むことで、脂肪が身体に与える影響、とりわけ血管に与える影響の一部を打ち消すことができる可能性が示されたという。英バーミンガム大学のRosalind Baynham氏らによるこの研究の詳細は、「Food & Function」11月18日号に掲載された。  Baynham氏は、「フラバノールは、ベリー類や未加工のココア、さまざまな果物や野菜、お茶、ナッツ類に含まれている化合物の一種だ。フラバノールは健康に有益で、特に血圧を調節して心血管の健康を守ることが知られている」と説明している。フラバノールは、フラボノイド系化合物に分類されるポリフェノールの一種。緑茶の成分として知られるカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなどが、代表的なフラバノールに含まれる。

SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ

 近年、SGLT2阻害薬は実験レベルでさまざまながん種に対する抗腫瘍効果が示唆されている。臨床においても、無作為化試験や観察研究などでSGLT2阻害薬とがん発症リスクとの関係が検討されているが結論は出ておらず、一般的にがん発症率が低いことを考慮すると大規模な疫学コホートでの検討が必要となる。今回、東京大学/国立保健医療科学院の鈴木 裕太氏らが全国規模の疫学データベースを用いて、SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を処方された患者におけるがん発症率を調べた結果、SGLT2阻害薬のほうががん発症リスクが低く、とくに大腸がんの発症リスクが低いことがわかった。Diabetes & Metabolism誌2024年11月号に掲載。

SGLT2阻害薬やMR拮抗薬などで添文改訂指示/厚労省

 2024年12月17日、厚生労働省はSGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)などに対して、添付文書の改訂指示を発出した。  SGLT2阻害薬はこれまでにもケトアシドーシスに関連した注意喚起がなされていたが、投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関連する症例が集積し、現行の注意喚起からは予測できない事象と結論付けられたことから、重要な基本的注意の項に「本剤を含むSGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと」が新たに追記される。

日本人の便失禁の現状が明らかに~約1万例のインターネット調査結果

 便失禁(FI)は、Rome IV基準では「4歳以上で繰り返す自制のきかない便の漏れ」と定義され、患者の健康関連の生活の質(HRQOL)に大きな影響を与える。ところが、日本の一般集団におけるFIの有病率に関する研究はほとんど行われていない。そこで、大阪公立大学の久木 優季氏らが日本人のFIの疫学についてRome IV基準を用いた調査を行ったところ、FI有病率は1.2%であることが明らかになった。Journal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2024年12月2日号掲載の報告。

セマグルチドは心血管系疾患の既往と心不全を有する肥満患者の心不全イベントリスクを低下する:SELECT試験の2次解析(解説:原田和昌氏)

肥満の人では心血管疾患のリスクが高まるが、これまでMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)のリスクを低減しつつ効果的な体重管理ができることが証明された治療薬はなかった。SELECT試験は、HFrEFの糖尿病の既往がない過体重または肥満で、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往を有する成人を対象に、GLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mg週1回皮下投与のMACE予防に対する有効性をプラセボ投与と比較した無作為化二重盲検試験であり、41ヵ国にて45歳以上の過体重または肥満の成人1万7,604例が登録された。なお、BMIが30以上を「肥満」とし、BMIが25以上30未満を「過体重」とした。

国内高齢者の4人に1人、75歳以上では3人に1人がCKD

 日本人高齢者の4人に1人は慢性腎臓病(CKD)であり、75歳以上では3人に1人に上ることが明らかになった。広島大学医系科学研究科疫学・疾病制御学分野の福間真悟氏、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科学の小林亜理沙氏らが、全国約60万人の健診データを用いて推計した結果であり、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に10月5日掲載された。  国内のCKD患者数は、2009年に行われた調査を基に「成人の約13%、約1330万人が該当する」とされている。しかしこの調査から15年たち、平均寿命の延伸、CKDリスクに関連のある糖尿病などの生活習慣病の有病率の変化により、CKD患者数も変化していると考えられる。特に腎機能は加齢とともに低下することから、高齢者の最新のCKD有病率を把握することが重要と考えられる。これらを背景として福間氏らは、全国規模の医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた新たな解析を行った。