感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:101

ミュー変異株、ワクチン接種者が持つ中和抗体にきわめて高い抵抗性/NEJM

 新型コロナウイルスの注目すべき変異株の1つであるミュー株(B.1.621系統)が、新型コロナウイルスに感染した人およびワクチン接種した人の血清に含まれる中和抗体に対し、きわめて高い抵抗性を示したことが明らかになった。本結果は東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究によるもので、NEJM誌オンライン版2021年11月3日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  ミュー株の発生源はコロンビアで、最初に分離されたのは2021年1月11日。2021年8月30日時点で南米諸国など39ヵ国から検出されている。  本試験では、ミュー株のスパイクタンパク質を有するシュードウイルスと、従来株の新型コロナウイルスに感染した人の回復後の血清(13例)、およびファイザー製ワクチン接種を完了した人の血清(14例)を用いた中和試験を実施。その結果、ミュー株は従来株に比して、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ファイザー製ワクチン接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍の抵抗性を示した。これにより、ミュー株はベータ株よりも高い抵抗性を有する、既存の変異株の中で最も抵抗性の高い変異株であることが明らかとなった。

治療薬にソトロビマブを追加した診療の手引き6版/厚労省

 11月2日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6版」を公開した。 第6版の主な改訂点は以下の通り。 【1 病原体・疫学】 ・変異株について、VUM(監視下の変異株)を追加 ・感染経路・エアロゾル感染について更新 ・国内/海外発生状況を更新 【2 臨床像】 ・重症化リスク因子に日本COVIREGI-JPの解析を追加 (入院時酸素投与が必要である割合のリスクと入院中の死亡率が高い基礎疾患) ・小児の重症度について、日本小児科学会のレジストリ調査を追加 ・妊婦例の特徴について、日本産婦人科学会の調査を追加 ・症状の遷延(いわゆる後遺症)について、国内の調査を追加

ファイザー製ワクチン後、4ヵ月と6ヵ月で効果の差は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株に対する免疫は、2回目のワクチン接種から数ヵ月後には全年齢層において減弱したことが、イスラエル・Technion-Israel Institute of TechnologyのYair Goldberg氏らの研究で示された。イスラエルでは、2020年12月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の集団接種キャンペーンが開始され、大流行が急激に抑制された。その後、SARS-CoV-2の感染例がほとんどない期間を経て、2021年6月中旬にCOVID-19の流行が再燃。その理由として、デルタ(B.1.617.2)変異株に対するワクチンの有効性の低下と、免疫の減弱が考えられたが、イスラエルにおけるデルタ変異株に対するBNT162b2ワクチン免疫の減弱の程度は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。

ワクチンの3回目Booster接種は感染/重症化予防効果を著明に改善する(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

前論評(山口, 田中. ワクチン接種後の液性免疫の経時的低下―3回目Booster接種必要性の基礎的エビデンス)で論じたように、ワクチン接種後の液性免疫は、野生株、従来株、Delta株を中心とする変異株の別なく、月単位で有意に低下する。この液性免疫の経時的低下によって、Delta株を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大(第6波)が今年の12月以降の冬場に発生する可能性を論評者らは危惧している。第6波の発生を避けるためには、ワクチン接種後の時間経過と共に低下した液性免疫を再上昇させるためのワクチン3回目接種(Booster接種)、あるいは、Delta株を中心とするコロナ変異株抑制能力が高く効果持続期間がワクチンと同等、あるいは、それ以上に長いIgG monoclonal抗体をワクチン代替薬として考慮する必要がある。

ワクチン接種後の液性免疫の経時的低下 - 3回目booster接種必要性の基礎的エビデンス (解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

Levin氏らはイスラエルにおいてBNT162b2を2回接種した一般成人におけるS蛋白IgG抗体価、野生株に対する中和抗体価の時間推移を6ヵ月にわたり観察した(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021 Oct 6. [Epub ahead of print] )。その結果、S蛋白IgG抗体価はワクチン2回接種後30日以内に最大値に達し、それ以降、IgG値はほぼ一定速度で低下し、6ヵ月後には最大値の1/18.3まで減少することが示された。野生株に対する中和抗体価の低下はS蛋白IgGと質的に異なり、中和抗体価は、2回接種後3ヵ月間は一定速度で低下、それ以降は、低下速度が緩徐となりほぼ横ばいで推移、6ヵ月後には最大値の1/3.9まで低下した。高齢、男性、併存症(高血圧、糖尿病、脂質異常症、心/腎臓/肝疾患)が2つ以上存在する場合にはS蛋白IgG抗体価ならびに中和抗体価の時間経過に伴う低下はさらに増強された。Levin氏らが示したのと同様の知見はShrotri氏らによっても報告された(Shrotri M, et al. Lancet. 2021;398:385-387. )。Shrotri氏らによると、BNT162b2の2回接種後70日(2.3ヵ月)以上経過した時点でのS蛋白IgG抗体価は最大値の1/2まで低下していた。Shrotri氏らは、AstraZenecaのChAdOx1接種後のS蛋白IgG抗体価の時間推移についても検証し、ChAdOx1の2回接種後のS蛋白IgG抗体価の最大値はBNT162b2接種後に比べ1/10と低く、かつ、ワクチン接種後70日以上経過した時点でのS蛋白IgG抗体価は自らの最大値の1/5まで低下することを示した。

ソトロビマブ、高リスクの軽~中等症COVID-19への第III相中間解析/NEJM

 高リスクの軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体ソトロビマブは、疾患進行リスクを軽減することが示された。安全性シグナルは確認されなかった。カナダ・William Osler Health CentreのAnil Gupta氏らが、現在進行中の第III相多施設共同無作為化二重盲検試験「COMET-ICE試験」の、事前規定の中間解析の結果を報告した。COVID-19は、高齢および基礎疾患のある患者で入院・死亡リスクが高い。ソトロビマブは疾患早期に投与することで高リスク患者のCOVID-19の疾患進行を防ぐようデザインされた。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。

ファイザー製コロナワクチンBNT162b2 長期の有効性と安全性(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による第5波で多くの医療機関で災害級の対応を強いられたものと考えているが、2021年10月中旬現在において波は完全に引き潮となっている。コロナが落ち着いてきた要因はいろいろ囁かれているが、日本全土でコロナワクチン接種が普及したこと(2021年10月19日現在、日本でのコロナワクチン2回目接種終了率68.0%)は大きく影響していると考える。現場でも実際にコロナが収束傾向な状況は大変喜ばしいことと思っている。ファイザー製コロナワクチンBNT162b2の効果としては最初に95%の発症予防効果(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)が示され、その後もリアルワールドセッティングで感染予防効果率:92%、重症化予防効果率:92%、入院予防効果率:87%(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)とさまざまな臨床的有用性がすでに報告されている。さらに12~15歳の若年者ではBNT162b2コロナワクチンを2回接種後に新型コロナウイルス感染症を発症した症例は1例も認めずに高い有効性や安全性も示されている(Frenck RW Jr, et al. N Engl J Med. 2021;385:239-250.PMID:34043894)。本邦では医療従事者が先駆けてコロナワクチンを接種したことから、現場でも長期の有効性や安全性プロファイルは関心の高いところである。

コロナワクチンの追加接種の見通し/厚労省

 厚生労働省は、10月29日に事務連絡として全国の自治体に「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論と追加接種に関する今後の見通しについて」を発出した。  これは第25回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(10月28日開催)で審議された内容を整理したものである。 1)追加接種について わが国でも追加接種は必要であり、現時点では2回目の接種を完了してからおおむね8ヵ月以上後から行うこととしつつ、今後のさらなる科学的知見を踏まえ、必要に応じて適宜見直すこと。 追加接種の対象者については、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供することが現実的であること。その上で、国内外で得られるワクチンの効果などを踏まえ、特に接種することが望ましい者について検討を進め、国民へ広報などを行うこと。また、追加接種に使用するワクチンについては、1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらず、mRNAワクチン(ファイザー社ワクチンまたは武田/モデルナ社ワクチン)を用いることが考えられるが、引き続き科学的知見を収集し、検討を行うこと。 2)今後後のスケジュールについて 12月から開始を予定している追加接種の実施に向け、現時点で想定される今後のスケジュールは以下の通り。

COVID-19の血栓症は本当の問題なのか?(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染は血管内皮細胞にも起こる。血管内皮細胞障害を介して深部静脈血栓症、脳血栓症などが増える。とくに、最初の武漢からのレポートでは入院例にヘパリンの抗凝固療法を施行していないこともあり、約半数の症例に静脈血栓イベントを認めたと注目された。米国、欧州などでは静脈血栓イベント予防のための低分子ヘパリンがルーチンになっていたが、それでも10~20%の症例に静脈血栓イベントを認めた。また、最近のランダム化比較試験にて静脈血栓の治療量を用いても、予防量投与時と重症化後には重篤な予後イベント発症率に差がないとされた。本研究では症候性ではあるが外来症例が対象とされた。新型コロナウイルス感染の予後が血栓症により規定されているのであれば、従来確立された抗血栓療法である抗血小板薬アスピリン、抗凝固薬アピキサバンは有効なように思われる。考えられた仮説に対してランダム化比較試験による検証をするのが欧米人の偉いところである。登録された症例はPCR陽性、有症候性の40~80歳の男女であった。

12~18歳のデルタ株への感染予防効果90%、ファイザー製ワクチン/NEJM

 デルタ変異株が流行しているイスラエルで、ファイザー製ワクチンの効果を12~18歳を対象とした観察コホート研究で調べたところ、2回目接種後7~21日の感染予防の有効率は90%、発症予防の有効率は93%だった。この結果から、ファイザー製ワクチンの接種完了後数週間は、デルタ株への感染とCOVID-19発症のどちらにも非常に有効であることが示唆された。米国・Boston Children's HospitalのBen Y. Reis氏らが、NEJM誌オンライン版2021年10月21日号のCORRESPONDENCEで報告した。