神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:1

中年初期の質の低い睡眠は中年後期の脳の老化と関連

 入眠困難や睡眠維持困難などの睡眠の質の低下が認められる中年初期の人は、中年後期になると脳の老化が進んでいる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。論文の筆頭著者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のClemence Cavailles氏は、「脳スキャンを用いて試験参加者の脳年齢を測定したわれわれの研究から、質の低い睡眠は、中年期の段階で、脳年齢の3年近くの加齢と関連していることが示唆された」と述べている。米国立老化研究所の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Neurology」に10月23日掲載された。

高齢者の認知症予防に最も有用な野菜の種類は?

 オーストラリア・エディスコーワン大学のNegar Ghasemifard氏らは、オーストラリアの高齢女性における、特定の野菜を含む総野菜摂取量と長期の老年性認知症リスクとの関連を調査した。Food & Function誌2024年10月28日号の報告。  対象は、地域在住の70歳以上の高齢女性1,206人。ベースライン時(1998年)、検証済みの食物摂取頻度調査票を使用して、野菜の総摂取量、野菜の種類別摂取量(黄/オレンジ/赤い野菜[YOR]、アブラナ科、ネギ科、緑色の葉野菜[GLV]、豆類)を推定した。老年性認知症は、80歳以降に発症するすべての認知症と定義した。入院およびまたは死亡を含む老年性認知症イベントは、リンクした健康記録より収集した。関連性の評価には、多変量調整(APOE4遺伝子を含む)Cox比例ハザードモデルの制限付き3次スプラインを用いた。

日本の頭痛外来受診患者、頭痛の種類や特徴は?

 頭痛外来を受診した患者に関する単一施設研究の報告は行われているものの、日本で実施された多施設共同研究は、これまでほとんどなかった。静岡赤十字病院の今井 昇氏らは、日本において頭痛外来を受診した患者の臨床的特徴、頭痛の種類、重症度、精神疾患の併存について多施設分析を実施し、ギャップを埋めることを目指し、本研究を実施した。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2024年10月15日号の報告。  3ヵ所の頭痛外来を受診した頭痛患者2,378例を対象に、臨床的特徴をプロスペクティブに評価した。視覚的アナログスケール(VAS)などのベースライン時の人口統計学的特徴、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)やこころとからだの質問票(PHQ-9)などの精神疾患の評価を行った。頭痛の種類は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)、その他の一次性頭痛疾患、二次性頭痛に分類した。頭痛の種類間でのパラメータを比較するため、必要に応じてKruskal-Wallis検定または共分散分析を行った。

MCIの認知機能改善に、最適な運動とその量は?~ネットワークメタ解析

 軽度認知障害(MCI)は、認知症の前駆段階であり、通常の老化による認知機能低下よりも進行することが特徴である。高齢MCI患者における機能低下の抑制、認知機能向上に対する有望なアプローチとして、運動介入への期待が高まっている。しかし、最適な運動様式とその量(用量反応関係)に関する研究は、十分に行われていなかった。中国・大連理工大学のYingying Yu氏らは、用量反応関係を最適化し、十分な強度を確保し、ポジティブな神経学的適応を誘発することによりMCI患者にとって最適な運動様式を特定するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月12日号の報告。

日本人の認知機能にはEPA/DHAに加えARAも重要―脳トレとの組合せでの縦断的検討

 パズルやクイズなどの“脳トレ”を行う頻度の高さと、アラキドン酸(ARA)やドコサヘキサエン酸(DHA)という長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の摂取量の多さが、加齢に伴う認知機能低下抑制という点で、相加的に働く可能性を示唆するデータが報告された。また3種類のLCPUFAの中で最も強い関連が見られたのは、DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)ではなくARAだという。サントリーウエルネス(株)生命科学研究所の得田久敬氏、国立長寿医療研究センター研究所の大塚礼氏らの研究結果であり、詳細は「Frontiers in Aging Neuroscience」に8月7日掲載された。  認知機能の維持には、食習慣や運動習慣、脳を使うトレーニング“脳トレ”などを組み合わせた、多面的なアプローチが効果的であると考えられている。ただ、それらを並行して行った場合の認知機能に対する影響を、縦断的に追跡した研究報告は少ない。得田氏らは、栄養関連で比較的エビデンスの多いLCPUFAと脳トレの組み合わせが、加齢に伴う認知機能低下を抑制するのではないかとの仮説の下、以下の検討を行った。

早期アルツハイマー病治療薬ケサンラの臨床的意義とは/リリー

 日本イーライリリーは2024年10月29日、「ケサンラ承認メディアセミナー ~早期アルツハイマー病の当事者の方々が、自分らしく生活できる時間を伸ばす~」と題したメディアセミナーを開催した。早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ)は、同年9月24日に「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能または効果として日本における製造販売承認を取得している。本セミナーの冒頭では、日本イーライリリーの片桐 秀晃氏(研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部)が同社の取り組みとして、「世界中の人々のより豊かな人生のため、革新的医薬品に思いやりを込めて」という使命をもとに、認知症への理解促進と治療アクセスの向上に努め、共生社会の実現に向けて尽力していく意向を示した。

脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。

患者数が5年で5倍!心不全診療で取りこぼせない疾患とは/日本心臓病学会

 心アミロイドーシスは、もはや希少疾患ではないのかもしれない―。9月27~29日、仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会のシンポジウム「心臓アミロイドーシス診療Up to date」において、本疾患の歴史や病理診断、病態~治療に関する現況や最新情報が報告され、これまでの心アミロイドーシスに対する意識を払拭すべき現状が浮き彫りとなった。  心アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの一症状で、心臓の間質にアミロイド蛋白が沈着し、形態的・機能的異常をきたす進行性かつ予後不良の疾患である。アントニオ猪木氏が闘った病としても世間を賑わしたが、他方で医学界においても見過ごすことができない疾患として、今、注目を浴びている。

せん妄で認知症リスク5倍~日本の入院患者26万例のデータ

 せん妄は、高齢者、とくに高齢入院患者の意識障害に影響を及ぼすことが多い。近年、せん妄歴と認知症リスク上昇との関連を報告したエビデンスが増加している。しかし、多くの研究は、主に患者数の少ない術後およびICU患者に焦点が当てられており、範囲が限定されているため、適応範囲が広いとはいえない。大阪医科薬科大学の南 博也氏らは、入院患者全体を対象に、せん妄の発生率およびその後の認知症発症リスクを調査した。さらに、入院中のせん妄発現とその後の認知症発症との相関も調査した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月13日号の報告。

薬物乱用頭痛に対する薬物療法の比較〜ネットワークメタ解析

 薬物乱用頭痛の治療に対する予防薬の必要性については、議論の余地が残っている。中国・雲南大学のFanyi Kong氏らは、薬物乱用の改善を含む、薬物乱用頭痛の治療に利用可能な薬剤の相対的なベネフィットおよび安全性を評価するため、本研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年10月7日号の報告。  薬物乱用頭痛に対するさまざまな薬剤の効果を比較するため、文献検索を通じて、ランダム化比較試験のシステマティックレビューを実施した。介入効果の比較をランク付けするため、ランダム効果ネットワークメタ解析を行った。アウトカムのベースラインからの改善には、治療反応率(頭痛頻度50%以上の減少)、急性薬物乱用の改善率、1ヵ月当たりの頭痛および急性期治療薬の減少を含めた。エビデンスの信頼性の評価には、Grading of Recommendations, Assessment, Development & Evaluation(GRADE)を用いた。