脳動脈瘤に対するハイドロゲルコイルを用いた血管内塞栓術は、プラチナコイルに比べ再開通率こそ低いものの (HELPS試験)、使い勝手は必ずしも良くなかったという。第2世代ハイドロゲルコイルは操作性が改善されているとされるが、再開通率は同じように良好だろうか―。2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、この点を検討すべく行われたランダム化試験 “HEAT”が報告された。その結果、第2世代ハイドロゲルコイルも再開通率はプラチナコイルより低く、有害事象には差がないことが明らかになった。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Bernard R. Bendok氏(メイヨー・クリニック、米国)が報告した。
1次評価項目ではハイドロゲルコイル群が有意に低値
HEAT試験の対象は、径:3~14ミリメートルの動脈瘤を認めた18~75歳の600例である。Hunt and Hess分類のGrade IV以上の例は除外されている。
年齢中央値は57歳、約80%を女性が占めた。また約70%が非破裂瘤だった。
これら600例は、プラチナコイル群(303例)と第2世代のハイドロゲルコイル群(297例)にランダム化され、オープンラベルで追跡された。評価項目を画像所見から解析するのは、割り付け群を盲検化された研究者である。
その結果、1次評価項目である18~24ヵ月後の再開通率(Raymondスコア評価)は、プラチナコイル群の15.4%に対し、ハイドロゲルコイル群では4.4%で、有意に低値となった(p<0.001)。この傾向は、非破裂瘤、破裂瘤を問わず認められた。
Meyer’sスケールを用いて評価しても同様で、ハイドロゲルコイル群の再開通率は13%と、プラチナコイル群の27%よりも有意に低かった(p<0.001)。なお、再開通を「major」(Meyer’sスケール3以上)と「minor」(同1〜2)に分けて比較したところ、ハイドロゲルコイル群では「major」再開通が有意に減少しただけでなく(12.8% vs.20.7%、p=0.016)、「minor」再開通も有意に抑制されていた(1% vs.5%、p=0.004)。
complete occlusion例の推移
興味深いのは、“complete occlusion”を認めた例の推移である。留置直後の割合は、プラチナコイル群が28%と、ハイドロゲルコイル群の18%に比べ有意に高値だったものの、留置12~24ヵ月後にはプラチナコイル群の51%を、ハイドロゲルコイル群が68%と上回っていた(p値不明)。
コイル・手技関連の有害事象に群間差はなく、死亡率もプラチナコイル群:3%、ハイドロゲルコイル群:2%で差はなかった。また修正Rankinスケールの分布も、両群で同様だった。QOLは両群とも有意に改善し、群間差は認められなかった。
本試験は、MicroVentionから資金提供を受けた米国・ノースウェスタン大学とメイヨー・クリニックにより、両施設の独立した指揮下で行われた。
(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))
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