初発慢性骨髄性白血病の治療選択肢が増加、使い分けの時代へ

提供元:ケアネット

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公開日:2011/07/04

 

 2011年6月16日、抗悪性腫瘍剤ダサチニブ(商品名:スプリセル)が慢性骨髄性白血病(CML)のファーストライン治療薬としての新たな効能が承認されたことを受け、同月30日、ブリストル・マイヤーズ株式会社と大塚製薬株式会社による記者説明会が開催された。本会では、名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長の小椋美知則氏より、CML治療の変遷と国際共同第3相試験「DASISION試験」の結果、さらにCML治療の今後の展望について講演が行われた。

初発CMLに対する治療選択肢が3剤に

 2001年、チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブが登場し、CMLの治療成績は著明に改善した。その後、より強力なBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害作用を持つ第2世代チロシンキナーゼ阻害薬、ニロチニブ、ダサチニブが開発され、イマチニブ抵抗性・不耐容のCMLに対して承認された。さらに、初発慢性期CMLに対してイマチニブと比較した臨床第3相試験の成績から、2010年12月にニロチニブが、また今月2011年6月にダサチニブが初発CMLに対して承認された。

 これで、初発CML治療にイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブの3剤が使用できることになり、年齢や合併症など患者さんの状態を考慮した治療薬の使い分けが可能となった。

 現在、米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)の治療ガイドライン(CML Treatment Guideline Ver2. 2011)では、慢性期CMLと診断された場合の治療選択肢として、チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ400mg、ニロチニブ300mg1日2回、ダサチニブ100mg1日1回)がCatedory1として推奨されている。

国際共同第3相試験「DASISION試験」におけるダサチニブの成績

 DASISION試験は、初発慢性期CMLを対象にダサチニブ100mg1日1回投与とイマチニブ400mg1日1回投与を比較した、非盲検・ランダム化・国際共同第3相試験である。519例(うち日本人49例)が登録され、ダサチニブ259例(同26例)、イマチニブ260例(同23例)がランダムに割り付けられた。主要評価項目は、12ヵ月間のConfirmed CCyR(細胞遺伝学的完全寛解)率、すなわち28日間以上の間隔で連続したCCyR率である。

 本試験において、12ヵ月時点のConfirmed CCyR(ダサチニブvsイマチニブ:77% vs 66%、p=0.0067)、CCyR(同:83% vs 72%、p=0.0011)、分子遺伝学的Major寛解(MMR)(同:46% vs 28%、p<0.0001)で、有意にダサチニブが高い達成率を示した。また、ダサチニブは、3、6、9、12ヵ月のどの時期においてもイマチニブより高い達成率を示し、早期から効果が得られることが認められた。なお、ダサチニブにおける主な副作用の発現率(Grade3/4)は、貧血10%(イマチニブ7%)、好中球減少21%(同20%)、血小板減少19%(同10%)で、Grade3/4の胸水は見られなかった。

 また、日本人症例49例におけるサブ解析結果においても、12ヵ月以内のConfirmed CCyR(ダサチニブ vs イマチニブ:96% vs 70%)、投与期間全体のMMR(同:73% vs 48%)ともに、ダサチニブ群で高い達成率が示された。ダサチニブにおける血球減少(Grade3/4)の発現率は、貧血8%(イマチニブ4%)、好中球減少27%(同39%)、血小板減少8%(同9%)でイマチニブとほとんど差が見られず、どちらも血球減少以外の副作用(Grade3/4)は見られなかった。

 本試験で、初発慢性期CMLに対するダサチニブ100mg1日1回投与の有用性が示されたことから、小椋氏は「われわれも早期に使用できるようになることを待ち望んでいた」と今回の承認を歓迎した。

CML治療の展望

 最後にCML治療の展望について、小椋氏は以下のように述べて講演を締めくくった。

 DASISION試験から、ダサチニブにより早期から効果が得られることが示されたが、それが長期予後にどのように影響するのか、今後のデータを期待したい。また、3薬剤が初発CMLに使用できるようになり、患者さんの状態に合わせた治療が選択可能になった。臨床現場の医師の間では、どのような患者さんにどのように治療していけばよいのか議論されているが、徐々にわかってくるだろう。さらに、現在CML治療においては、薬剤を一生服用し続けなければならないとされているが、ダサチニブが強いBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害作用を持ち、優れた効果を示す薬剤であることから、臨床現場の医師として、将来、服用を中止することが可能な時代が来るのではないかと期待している。

(ケアネット 金沢 浩子)