世界におけるがんの発症動向を予測。2030年にはどうなる?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/07/06

 



がんは今後数十年間で、世界のすべての地域で罹患および死亡における主要な原因疾患となることが予測される。では、地域によって状況は異なるのだろうか。Bray氏らが、平均寿命・教育・GDPの複合指標である人間開発指数(HDI)のレベルで分けて評価したがん発症の傾向と2030年までの予測を、The Lancet Oncology誌オンライン版2012年6月1日号に報告した。

この報告によると、2008年は、最も高レベルのHDIの地域ではがん全体の半数を乳がん・肺がん・大腸がん・前立腺がんで占めており、中レベルのHDIの地域ではこれらに加えて、食道がん・胃がん・肝臓がんも多かった。またこれら7種類のがんは、中レベルから非常に高レベルのHDIの地域において、すべてのがんの62%を占めていた。一方、低レベルのHDIの地域では、乳がんや肝臓がんより子宮頸がんのほうが多かった。184ヵ国全体では、男性で9種類のがんが多く、なかでも前立腺がん・肺がん・肝臓がんが最も多かった。女性では、乳がん・子宮頸がんが最も多かった。

発症人数の変化については、中レベルと高レベルのHDIの地域では、子宮頸がん・胃がんの発症率の減少が、乳がん・前立腺がん・大腸がんの発症率の増加によって相殺されるとしている。本研究で推測されるような傾向が続けば、がんの発症人数は2008年の1,270万人から2030年には2,220万人に増加し、すべてのがんにおける発症率が増加することが予測されるという。

今回の結果から、多くの国々の急速な社会的・経済的変化により、感染に関連するがんは減少するが、その減少は生殖・栄養・ホルモン因子に関連するがんの増加によって相殺されることが示唆されている。ターゲットを絞った介入が、予防接種・早期発見・効果的な治療の実施と並行した効果的な一次予防戦略を通じて、がん減少に導く可能性があると、著者らは提言している。

(ケアネット 金沢 浩子)