転移性大腸がんに対するIRIS+セツキシマブの第II相試験の安全性解析結果から、本レジメンでは下痢の発現頻度が高く、投与にあたっては減量などのコントロールが重要であり、試験の事務局でデータを管理し対処方法を検討しながら試験を進めていく必要性が示された。第10回日本臨床腫瘍学会学術総会(2012年7月26~28日)のワークショップ6「大腸がん・新しい方向性」で、北海道大学病院腫瘍センターの小松嘉人氏が報告した。
KRAS野生型の転移性結腸直腸がんに対する2次治療としてのIRIS(イリノテカン+S-1)+セツキシマブの効果と安全性を評価する多施設シングルアーム第II相試験(HGCSG0902)における最初の20例での安全性の解析結果が報告された。
S-1は80 or 100 or 120mg/body/日(分2)を14日間投与した後14日間休薬、イリノテカンは100mg/m2(1日目・15日目)、セツキシマブは、Weekly(400mg/m2→250mg/m2/週)もしくはBi-weekly(400mg/m2→500mg/m2/2週)で投与した。1次エンドポイントは奏効率、2次エンドポイントは病勢コントロール率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性であり、今回は安全性を解析し報告した。
患者背景は、年齢中央値は65歳(範囲:42~74歳)、男性が65%、ECOG PSは0が60%、1が35%であった。また、転移は肝転移が75%と最も多く、前治療はmFOLFOX±ベバシズマブ、XELOX±ベバシズマブなどであった。セツキシマブの投与方法は、Weeklyが45%、Bi-weeklyが55%であった。
本試験による有害事象のうち、血液毒性はGrade3以上の骨髄抑制や高カリウム血症が20~30%発現しているが、通常の臨床試験と同程度であり、許容できる範囲あった。非血液毒性は皮膚毒性が見られるが、こちらも許容される範囲であった。しかし、Grade3以上の下痢が45%と高頻度に発現した。投与中止理由は、中止例19例のうち、PDによる中止が11例、副作用による中止が3例で、そのうち2例が下痢であった。セツキシマブの投与方法による下痢発現の差はなかった。
今回の解析から、小松氏は、「下痢以外の副作用は許容できると思われるが、下痢についてはかなり厳しく、減量などのコントロールが重要である。今後はさまざまなデータを事務局で管理して、対処方法をともに相談しながら進めていかなければならない」と結論した。
(ケアネット 金沢 浩子)