アルツハイマー型認知症治療薬メマンチンはNMDA受容体拮抗作用を有する。このNMDA受容体は内分泌系にも影響を及ぼすと言われている。ドイツ リューベック大学のKlement氏らは、メマンチンと低血糖の関連を検討した。Diabetes Obes Metab誌オンライン版2012年10月16日号の報告。
再発低血糖症は、低血糖症状とホルモンの拮抗反応(counterregulatory responses)の減弱へと結び付く。この現象は糖尿病患者の治療では重大な問題を引き起こすが、その神経内分泌系メカニズムは不明である。著者らは、動物実験の所見に基づき、拮抗反応の減弱は、シナプスの長期増強(LTP)あるいはうつ病における基本的適応学習プロセスを意味するものであるとの仮説を立て、検証試験を行った。
仮定が正しければ、拮抗反応の減弱はNMDA受容体の阻害によって防止されるはずだとした。健常成人16例を2群に分け、4週間介入。一方の群には、NMDA拮抗薬メマンチンを5日間(15mg/日)投与し、もう一方にはプラセボを投与した。服薬3日後、被験者は4日目および5日目に1回ずつ低血糖クランプ検査を受けた。低血糖の自覚症状に加えて拮抗ホルモン(コルチゾール、ACTH、エピネフリン、ノルエピネフリン、GH、グルカゴン)の血中濃度を評価し、また短期記憶のインジケーターとして単語リスト記憶力を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・NMDA受容体阻害薬メマンチンにより、内分泌系の減弱および再発低血糖症の拮抗反応は阻止されなかった。
・全ホルモンと同様に神経低血糖症の拮抗反応および自律神経症状評価は、低血糖症の初回時と比較して3回目のほうがより強い減弱を示した(p<0.05)。
・メマンチンによるNMDA受容体拮抗は、記憶機能を障害したが、すべての神経内分泌系の拮抗減弱の尺度に変化はみられなかった(p>0.17)。
・結果は、仮説(再発低血糖症に対する適応が、長期増強またはうつ病に関与しているNMDA受容体を介した伝達形成プロセスに依存しているとの見方)を支持しなかった。
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(ケアネット)