切除不能大腸がんの標準化学療法後に新たな治療薬

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/04/25

 

 現在、切除不能進行・再発大腸がんに対する治療は、大腸癌治療ガイドライン(2010年版)において、KRAS野生型では3次治療、KRAS変異型では2次治療までの治療アルゴリズムが推奨されており、国内では多くの医師がこれを順守している。先月25日、これらの標準化学療法が無効になった症例に対する治療薬として、レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)が承認された。東京医科歯科大学大学院教授の杉原 健一氏は、4月23日のバイエル薬品株式会社主催のプレスセミナーで、本剤の作用機序や第III相臨床試験成績を紹介し、標準化学療法後の新たな治療薬として期待を示した。そのうえで、副作用管理の重要性を強調し、発売後早期に症例データを集積し、自身が会長を務める「大腸癌研究会」のホームページに結果を掲載し注意を喚起していきたいと語った。

 講演で、杉原氏はまず、わが国では大腸がんは非常な勢いで増加しており、その最も大きな要因は高齢社会になったことであると述べ、自施設でも80代の患者の手術が普通になってきていることを紹介した。外科切除後に再発する約3割の患者さんには化学療法が施行されるが、標準化学療法が無効になっても全身状態が良好な患者は多く、その後の治療ニーズは高いという。経口マルチキナーゼ阻害薬であるレゴラフェニブは、このような標準化学療法後の患者に対する治療薬として承認された。大腸がんでは多数のシグナル伝達経路が関与しているため、マルチターゲットの薬剤が有効、と杉原氏は説明した。

 続いて、標準化学療法施行後に病勢が進行した切除不能大腸がん患者760例を、レゴラフェニブ群(505例)とプラセボ群(255例)に分け検討した国際共同第III相臨床試験「CORRECT試験」の成績について紹介した。本試験には、日本から100例が登録されたという。

 主要評価項目である全生存期間は、レゴラフェニブ群の中央値が6.4ヵ月と、プラセボ群の5.0ヵ月に比べ有意に上回った(ハザード比:0.77、p=0.0052)。また、サブグループ解析では、原発部位を除く各サブグループにおいてレゴラフェニブ群のほうが優れ、KRAS変異に影響されないことが示された。無増悪生存期間、病勢コントロール率においても有意差を示した。

 本剤の主な副作用としては、手足の皮膚反応、疲労、下痢、高血圧、皮疹が挙げられる。杉原氏は、グレード3になる前に減量・休薬するなど、副作用を十分にコントロールすべきと述べ、副作用を管理し長期に治療することが患者さんのメリットにつながると語った。

 すでに、最新の米国NCCNガイドライン(version 3. 2013)では、切除不能進行・再発大腸がんに対して、KRAS野生型では4次治療、KRAS変異型では3次治療にレゴラフェニブが記載されており、杉原氏は、わが国の大腸癌治療ガイドラインでも、次回の改訂ではレゴラフェニブが3次・4次治療として記載される可能性を示唆した。

(ケアネット 金沢 浩子)