1968年に西日本において発生した「油症(中毒)事件」の被害患者について、血清IL-17、IL-23、IL-1β、TNFα値が増大していることを、油症外来のある長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野の鍬塚 大氏らが報告した。同事件は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ポリ塩化クアテルフェニル(PCQ)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)に汚染された“米油”を摂取した人々に重篤な皮膚疾患や障害等の健康被害が発生したというもので、40年以上を経た現在、重篤な症状がみられることは少なくなったが、油症患者の血中PCBやPCDFは高値のままであるという。Journal of Immunotoxicology誌オンライン版2013年10月1日号の掲載報告。
最近の研究において、ダイオキシンが芳香族炭化水素受容体(AhR、ダイオキシン受容体)を介してその免疫毒性作用を伝達し、AhRの活性がIL-17を産生するTH17細胞の調節障害を誘発していることが示唆された。
そこで研究グループは、油症患者においても、TH17細胞の免疫応答の障害が認められるとの仮説を立て検証研究を行った。
仮説を確認するために、患者群と適合対照群について、IL-17とIL-22(いずれもTH17細胞により産生される)、またIL-1β、IL-23を測定した。またTH17細胞活性による好中球とマクロファージにより産生される可能性が示唆されているTNF-α値も測定した。
主な結果は以下のとおり。
・仮説の検証は、油症患者群40例、適合対照群40例について行われた。
・結果、血清IL-17とIL-1β、IL-23の値は、対照群と比べて油症患者群で有意に高値であった。
・一方、IL-22は、対照群と比べて油症患者群で有意に低値であった。
・これらの結果は、油症患者が、炎症との関連の可能性があるTH17細胞の免疫応答が障害されていることを示唆するものであった。
(ケアネット)