炭水化物を多く含む材料を加熱調理した食品に含まれるアクリルアミドは、ヒトでの発がん性があると推定されている。これまで、アクリルアミド摂取量と大腸がんリスクとの間に明確な関連性を示す疫学的研究はないが、その理由として大腸がんにおける分子生物学的不均一性が考慮されていなかった可能性がある。アクリルアミド代謝物であるグリシドアミドは、げっ歯類において特定のDNA変異を誘導することから、オランダ・マーストリヒト大学のJanneke GF Hogervorst氏らは、アクリルアミドが、大腸がんの発がんkey遺伝子であるKRASおよびAPCの変異による大腸がんリスクと関連しているかどうかを検討した。Carcinogenesis誌オンライン版2014年1月7日号に掲載。
今回の症例コホート分析は、食事とがんに関するオランダコホート研究のなかで、7.3年間のフォローアップに基づき行われた。アクリルアミド摂取量は食物摂取頻度調査票を用いて評価し、733例の腫瘍組織におけるAPCエクソン15のコドン1286~1520およびKRASエクソン1のコドン12、13の変異分析を実施した。ハザード比は、Cox比例ハザード分析を用いて算出した。
主な結果は以下のとおり。
・男性においては、アクリルアミド摂取量は、とくにKRAS変異のある腫瘍のリスク増加と有意に関連していた[最低四分位に対する最高四分位のハザード比:2.12(95%CI:1.16~3.87)、傾向のp=0.01]。
・女性においては、アクリルアミド摂取量は、とくにAPC変異のある腫瘍のリスク減少と有意に関連していた[最低四分位に対する最高四分位のハザード比:0.47(95%CI:0.23~0.94)、傾向のp=0.02]が、これはアクリルアミド摂取量の最高四分位においてのみ認められた。
これらの結果から、著者らは、この研究が「男女で異なる特定の遺伝子変異による大腸がんにアクリルアミドが関連する可能性を示す最初の研究」と述べ、さらに「今回の知見を裏付ける、もしくは異議を唱えるためのさらなる研究が必要」としている。
【参考】食品に含まれているアクリルアミド(→農林水産省ホームページ)
(ケアネット 金沢 浩子)