HDLコレステロールは乳がんリスクと逆相関する~仏・全国的コホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2014/02/28

 

 コレステロール、とくに高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールが抗酸化および抗炎症特性により発がんに影響しうるというメカニズムは、いくつかの実験的研究によって報告されている。しかし、特定の脂質代謝のバイオマーカーとがんリスクとの関連を調べた前向き研究の結果は一定ではない。仏・パリ13大学のMathilde His氏らは、総コレステロール、HDLコレステロール、低比重リポ蛋白コレステロール、アポリポ蛋白A1およびB、中性脂肪について、乳がん、前立腺がん、およびがん全体のリスクとの関連を調査した。その結果、総コレステロール、HDLコレステロール、アポリポ蛋白A1の血清レベルが、がん全体および乳がんリスクと逆相関することが示唆された。European journal of epidemiology誌オンライン版2014年2月13日号に掲載。

 著者らは、フランスの全国的なコホート研究であるSupplementation en Vitamines et Mineraux Antioxydants Studyから、7,557人を対象に分析を実施した。脂質代謝のバイオマーカーはベースラインで測定され、がん発生リスクはCox比例ハザードモデルを用いて分析した。対象は1994年~2007年の追跡期間に診断された514例。

 主な結果は以下のとおり。

・総コレステロールが、がん全体のリスク(1mmol/L上昇によるハザード比:0.91、95%CI:0.82~1.00、p=0.04)、乳がんリスク(1mmol/L上昇によるハザード比:0.83、95%CI:0.69~0.99、p=0.04)に逆相関していた。
・HDLコレステロールが、がん全体のリスク(1mmol/L上昇によるハザード比:0.61、95%CI:0.46~0.82、p=0.0008)、乳がんリスク(1mmol/L上昇によるハザード比:0.48、95%CI:0.28~0.83、p=0.009 )に逆相関していた。
・アポリポ蛋白A1が、がん全体のリスク(1g/L上昇によるハザード比:0.56、95%CI:0.39~0.82、p=0.003)、乳がんリスク(1g/L上昇によるハザード比:0.36、95%CI:0.18~0.73、p=0.004)に逆相関していた。

 コレステロールは心血管疾患予防に重要であることから、著者らは、今後さらなる大規模な前向き実験的研究によって、発がんにおけるコレステロール成分の役割を解明することは、公衆衛生の観点から重要な意味を持つだろうと述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)