近年、腰痛患者では局所脳血流の異常がみられることや、慢性腰痛は脳の可塑的な病態生理学的変化と関連していることが示唆されている。今回、昭和伊南総合病院の中村 幸男氏らは、慢性腰痛と急性腰痛患者の脳SPECT所見を比較し、両者に違いがあることを明らかにした。慢性腰痛患者では、小脳でコントロールされている無意識の疼痛行動が前頭前野の機能障害によって出現しているのかもしれないとまとめている。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2014年2月5日号の掲載報告。
研究グループは、構造的異常のない慢性腰痛患者と腰椎椎間板ヘルニアに伴う急性腰痛患者における脳血流について比較した。
慢性腰痛群は、MRIで腰椎の構造的異常がなく(もしくは軽微で)、かつDSM-IV-TRの疼痛性障害(慢性)の基準を満たす患者とした。急性腰痛群は発症後3ヵ月以内でMRIにより腰椎椎間板ヘルニアが認められた患者とし、全例に脳SPECT検査を行った。
主な結果は以下のとおり。
・慢性腰痛患者7例と、急性腰痛患者7例を対象とした。
・慢性腰痛群では、前頭葉の前頭前野(両側)の有意な血流低下と小脳後葉の有意な血流増加が認められた。
・SPECT所見と統計解析により、急性腰痛症または慢性腰痛症を有する患者における、脳血流の違いが明らかになった。
・これらの結果から、慢性腰痛患者では、前頭前野の機能障害が、小脳でコントロールされている無意識の疼痛行動の出現につながっている可能性が示唆された。
(ケアネット)