遅発性ジスキネジアへの対処に新たな知見 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/06/23 遅発性ジスキネジア(TD)は遅延的かつ潜在的に不可逆的な運動合併症であり、抗精神病薬やメトクロプラミドなどの中枢ドパミンD2受容体拮抗薬を慢性的に投与された患者において発現することがある。TDにおける古典的なドパミンD2受容体過敏仮説は、げっ歯類の研究に端を発しており、ヒトにおける証明は不十分なままである。カナダ・モントリオール大学のSouha Mahmoudi氏らは、TDの神経科学的基礎調査を行うため、霊長類を用いた研究を行った。 Movement disorders誌オンライン版2014年5月16日号の報告。 オマキザルにハロペリドール(中央値:18.5ヵ月、n=11)またはクロザピン(同6ヵ月、n=6)を慢性的に投与した。また、非薬物治療群(n=6)を対照として用いた。線条体ドパミンD1、D2、D3受容体レベルの測定には受容体オートラジオグラフィーを用いた。また、線条体におけるD3受容体/プレプロタキキニンmRNAの共発現およびプレプロエンケファリンmRNAレベルの定量化を調べた。 主な結果は以下のとおり。 ・ハロペリドール群では5例で軽度のTDが認められた。 ・クロザピン群ではTDは認められなかった。 ・クロザピン群と異なり、ハロペリドール群では、前方尾状核被殻内のドパミンD3受容体を強く誘導した。とくに、TDを発現した群においては、結合レベルとTDの強度に正の相関が認められた。 ・D3受容体のアップレギュレーションは、黒質線条体系の神経細胞で観察された。 ・一方、D2受容体結合は対照群と同等であり、D1受容体結合は、前方被殻で減少した。 ・エンケファリンmRNAはどの群においても増加していたが、TDが発現していない群ではより広い範囲で増加していた。 以上の結果より、著者らは「霊長類において線条体D3受容体のアップレギュレーションとTDの相関が初めて示され、ドパミン受容体過敏仮説に新たな洞察が加わると考えられる。このことから、D3受容体は、TDの薬物介入における新規標的となりうることが示唆された」としている。 関連医療ニュース 遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学 PETでみるアリピプラゾール薬理作用「なぜ、EPSが少ないのか」 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 (ケアネット 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mahmoudi S, et al. Mov Disord. 2014 May 16. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 ドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース 医療一般 日本発エビデンス(2021/03/18) 遅発性ジスキネジア治療剤の新薬ジスバルカプセル40mg発売/田辺三菱 医療一般(2022/06/14) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] Dr.大塚の人生相談(2024/02/26) IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09)