がん医療、進む国際化と残る課題―臨床腫瘍学会2014

提供元:ケアネット

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公開日:2014/07/23

 

【田村会長インタビュー】
 2014年7月17日〜19日、第12回 日本臨床腫瘍学会学術集会が福岡市で開催された。今回学術集会の有料参加者は4600名となり、昨年から1割増加した。終会にあたり、当学術集会会長である福岡大学医学部 腫瘍・血液感染症内科 田村和夫氏に学会を振り返っていただいた。

若手医療者の教育の場として貢献
 今まで以上に若い方にたくさん参加していだいたことは大変有意義でした。学術集会で最も重要なのは教育ですが、30の教育講演のほとんどが満席で、なかには会場に入りきれないものありました。また、今大会は、ポスターセッションを重視して広い会場で行いましたが、そこでも活発な議論が交わされていました。専門医と若い方たちの活発なディスカッションが進んだのではないかと思います。若い人たちの良い教育の場になったと思います。

さらなる国際化へ努力
 日本はアジアの玄関ですし、臨床腫瘍学会の大きなミッションの一つとして国際化があります。今大会では、海外からの一般公募演題も70にのぼりました。ヨーロッパの腫瘍学会ESMOなど海外がん関連学会との合同シンポジウム、インターナショナルセッションも合わせ国際的なセッションも増えています。

 このような英語のセッションの増加に対しても、皆さん大分慣れてきたようです。そういう観点からも国際化が進んでいると感じます。今後は聞くだけではなく、本当の意味でディスカッションをできるようになっていただけけたら良いと思います。それにはまだ少し時間がかかるでしょうが、皆が国際化に向かって進歩していくべきだと思います。

小児がんサバイバーに対する認識を高める
 小児血液・がん学会と小児がんサバイバーシップの合同シンポジウムを行いました。このシンポジウムを通し、われわれ成人診療科医は、もっと小児がんサバイバーについて知る必要があると強く感じました。

 小児がんの8割は治癒します。治癒した方は成長していく訳ですが、大人になっても小児科が引き続いて診ています。小児科から成人診療科へのシームレスな移行がなされていないのです。患者さんの年齢があがれば、生活習慣病など小児科では診ないような疾患が現れてきます。実際、そういった晩期合併症によって、小児がんサバイバーの3割が40歳代で亡くなっているという現実があります。

 そういった観点からも、サバイバーの成長と共に小児科から引き継いで成人診療科が診る必要があります。少なくともわれわれ成人診療科は小児がんサバイバーについて認識を深め、小児がんのバックグラウンドがある患者さんの対応については見直す必要があります。

コストも含め考えていくべき高齢者がん医療の問題
 高齢者のがん治療は、非常に大きな問題であると同時に避けて通れない問題です。今学会では、合同シンポジウムとワークショップで取り上げました。

 高齢者のがん薬物療法についての対応は遅れています。がん死亡者の8割が65歳以上です。しかし、薬物療法の臨床試験の適格条件は70歳程度で、現実の多くの患者さんより若年なのです。高齢者にどのような診療をするべきか、客観的にみていくシステムを作り、コンセンサスを取る必要があります。

 医療費もそこにシフトしていく訳で、これからのがん医療の大きな問題といえます。これについては、医療者だけでなく国も議論していかなければいけない問題です。今回は時間が取れませんでしたが、来年以降はそこも考えていくべきだと思います。

(ケアネット 細田 雅之)