妊娠中の抗うつ薬の使用が、出生児の先天性心疾患リスクにつながるか調査したところ、集団ベースでは妊娠初期3ヵ月間の抗うつ薬使用によるリスクの実質的な増加は示されなかった。米国ブリガム&ウィメンズ病院のKrista F Huybrechts氏らがコホート研究の結果、報告した。現在、妊娠中の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や他の抗うつ薬の使用が出生児の先天性心疾患のリスク増加と関連しているかどうかは不明であり、なかでもパロキセチン使用と右室流出路閉塞との関連、セルトラリン使用と心室中隔欠損症との関連性が懸念されていた。NEJM誌2014年6月19日号掲載の報告。
研究グループは2000~2007年のメディケイド分析抽出のデータを用い、コホート研究を行った。対象は、最終月経期間前3ヵ月から分娩後1ヵ月までの妊娠女性94万9,504人およびその出生児であった。妊娠初期3ヵ月間に抗うつ薬を使用した女性から生まれた乳児群と、抗うつ薬を使用しなかった女性から生まれた乳児群に分け解析を行い、乳児らの重大な先天性心疾患リスクを比較した。
主な結果は以下のとおり。
・全体のうち、6万4,389人(6.8%)の女性が妊娠初期3ヵ月間に抗うつ薬を使用していた。
・全体として、抗うつ薬未使用女性から生まれた乳児のうち先天性心疾患児は6,403例(乳児1万例あたり72.3例)、抗うつ薬を使用した女性では先天性心疾患児は580例(1万例あたり90.1例)であった。
・抗うつ薬使用と先天性心疾患との関連性は、交絡因子の補正に伴って減少した。
SSRIs使用に伴うあらゆる心疾患の相対リスク
(ⅰ)未補正解析 1.25(95%信頼区間[CI]: 1.13~1.38)
(ⅱ)うつ病の女性に限定した解析 1.12(95%CI:1.00~1.26)
(ⅲ)うつ病の女性に限定しすべての補正を行った解析 1.06(95%CI:0.93~1.22)
・パロキセチン使用と右室流出路狭窄、ならびにセルトラリン使用と心室中隔欠損症との間に有意な関連は確認されなかった(それぞれの相対リスク:1.07、95%CI:0.59~1.93、相対リスク:1.04、95%CI:0.76~1.41)。
(ケアネット 加藤 千恵)