ブロナンセリンの薬理学的メカニズムを再考する 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/09/05 ブロナンセリンはセロトニン5-HT2A受容体よりもドパミン-D2/3受容体に対し高い親和性を示し、その他のセロトニン5-HT2A/ドパミン-D2受容体アンタゴニストと薬理作用が若干異なる。名城大学の肥田 裕丈氏らは、統合失調症動物モデルを用いてブロナンセリンの視覚認知ならびに記憶障害に対する作用とその分子メカニズムを検討した。その結果、ブロナンセリンはフェンシクリジン(PCP)に誘発される視覚認知と記憶の障害を改善すること、その背景にはドパミンD3受容体とセロトニン5-HT2A受容体の両方の阻害が関わっていることを示唆した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2014年8月14日号の掲載報告。 本研究では、統合失調症動物モデルの認知障害に対するブロナンセリンの作用におけるドパミン-D3受容体の関与を検討した。さらに、その背景にある分子メカニズムを明らかにするため検討を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・ブロナンセリンはオランザピンと同様、新奇物体認識試験(NORT)および内側前頭前皮質(mPFC)における細胞外ドパミン濃度増加などの所見によって証明されるように、PCPに誘発される視覚認知と記憶の障害を大きく改善した。 ・DOI(セロトニン5-HT2A受容体アゴニスト) および7-OH-DPAT(ドパミンD3受容体アゴニスト)は、ブロナンセリンの作用と拮抗した。 ・一方、オランザピン投与時、DOIはその作用と拮抗したが、7-OH-DPATは拮抗作用を示さなかった。 ・ブロナンセリンによる改善効果は、SCH23390(ドパミンD1受容体アンタゴニスト)およびH-89(プロテインキナーゼA[PKA]阻害薬)によっても拮抗された。 ・PCP投与マウスについてNORTを実施したところ、ブロナンセリンはmPFCにおけるPKAを介して、Thr197におけるPKAのリン酸化減少、およびSer897におけるNR1(N-メチル-d-アスパラギン酸[NMDA]受容体の必須サブユニット)のリン酸化減少を有意に是正した。 ・いずれの群においても、Ser896におけるPKCによるNR1リン酸化レベルに差はみられなかった。 ・以上より、PCP誘発性認知障害に対するブロナンセリンの改善作用は、mPFCにおいてドパミン-D3受容体とセロトニン5-HT2A受容体の両方を阻害することにより、ドパミン作動性神経伝達に続くドパミン-D1-PKA-NMDA受容体伝達経路の機能に対する間接的な刺激と関連していることが示唆された。 ■関連記事 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 統合失調症患者への抗精神病薬、神経メカニズムへの影響は 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か セロトニン症候群を起こしやすい薬剤は (ケアネット) 原著論文はこちら Hida H, et al. Neuropsychopharmacology. 2014 Aug 14. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 ブロナンセリンのドパミンD3受容体への作用 医療一般 日本発エビデンス(2019/10/04) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26) ~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15) Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07) 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)