9月11日(木)、都内にて「蚊でうつる感染症~都心のデングを考える」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、「蚊」にフォーカスを当て、昨今問題となっているデング熱の診療や、蚊が媒介する感染症であるマラリアや日本脳炎などについてミニレクチャーが行われた。
■例年100例は報告されるデング熱
はじめに「デング熱について」と題し、怱那 賢志氏(国立国際医療研究センター/国際感染症センター)が、その概要と診療・予防について説明した。
デング熱ウイルスは血清型で4つに分類され、ヤブカであるネッタイシマカとヒトスジシマカの媒介により感染する。前者はわが国に生息していないが、後者は東北地方北部まで生息域を広げており、今後も感染拡大が懸念される。毎年わが国では100例程度の感染が報告されているが、今回の流行はそれが例年になく拡大したものであり、これまでハワイや台湾でも類似の事例が観察されているとのことである。
■診断は「時・場所・人」に着目
デング熱の症状としては、高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐などが挙げられる。重篤な合併症はないものの、高熱のため倦怠感が強く入院するケースが多いのが特徴である。
本症では皮疹なども見られるが、これは熱が下がる頃に見られ、病初期には観察されないことが多いとのこと。検査所見では、白血球、血小板減少が特異的に観察されるが、初診時には目立たないことが多く、CRPはあまり上昇しない。
確定診断については、時系列に3段階の検査があり、発症初期(1~5日目)では遺伝子検査、解熱前後期(4日目~)ではIgM抗体検査、回復期(7日目~)ではIgG抗体検査により診断がなされる。診断のポイントとしては、病状の精査のほか、とくに蚊に刺された「時・場所・人」に注目して診断することが大切だという。
■虫よけで感染防止
治療は、有効な薬剤がないために支持療法が中心となる。とくに血圧、脈圧の低下時は輸液をしっかりと行い、出血症状や重症化のサインを見逃さないようにすることが重要。また、解熱前後の期間(発症から4~7日)は、とくに重症化する危険があるために、慎重な経過観察を行う必要がある。
デング熱予防対策としては、「防蚊対策」をしっかりすることが大切で、蚊に刺されないために、「肌の露出の少ない服装での外出」、「2時間おきに虫よけスプレーを使用する」、「窓を開けて寝ない」など日常生活で簡単にできるアドバイスを伝え、レクチャーを終えた。
■ワクチンで予防できる熱帯の感染症
引き続き、怱那氏より「蚊が媒介する感染症」として「マラリア」「日本脳炎」「黄熱」の各疾患の概要が述べられた。
とくにマラリアは、アフリカなどへの渡航の際に注意を要する疾患であり、潜伏期間が長いのが特徴。渡航者には事前に予防内服薬を服用するよう勧めたほか、医療者に対しては診療に際して「マラリア診断・治療アルゴリズム 第3.1版」などを参考にしてほしいと述べた。
また、「日本脳炎」はわが国で予防接種の空白期があることから、この期間のキャッチアップを含めた対策を、「黄熱」は感染の可能性のある地域・国へ渡航する予定があればワクチン接種が入国の条件となっている場合もあるため、事前の接種を念頭に置いてほしいとレクチャーを終了した。
デング熱、患者さんに聞かれたら・・・
MDQA特別編 デング熱の疑いでどこまで検査するか【緊急Q&A】〔9/19まで募集〕
(ケアネット 稲川 進)