オピオイド治療中のがん患者で、その痛みに炎症が重要な役割を占めると考えられる場合、抗炎症効果を期待して、コルチコステロイドを用いることが多い。しかし、そのエビデンスは限られている。そこでノルウェー大学のOrnulf Paulsen氏らは、メチルプレドニゾロンの疼痛緩和効果の評価を行った。試験は、ステロイドの進行がん患者を対象とした疼痛緩和効果の評価としては初となる、多施設無作為二重盲検比較で行われた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年7月7日号の掲載報告。
対象は、中等度から重度の疼痛でオピオイド治療を受けている18歳以上、直近24時間の平均NRSスコア4点以上のがん患者。登録患者は、メチルプレドニゾロン32mg/日群(以下MP群)とプラセボ群(以下PL群)に無作為に割り付けられ、7日間治療を受けた。
主要評価項目は7日時点の平均疼痛強度(NRSスコア、範囲0~10)。副次的評価項目は鎮痛薬使用量(経口モルヒネ換算)、疲労感および食欲不振 、患者満足度である。
主な結果は以下のとおり。
・592例がスクリーニングされ、そのうち50例が無作為に割り付けられ、47例が解析対象となった。
・患者の平均年齢は64歳、Karnofsky スコアの平均は66であった。
・主ながん種は前立腺がん、肺がん、胃・食道がん、婦人科がんであった。
・ベースラインのオピオイド使用量(経口モルヒネ換算)は、MP群269.9mg、PL群は160.4mgと差があった。
・7日時点の平均疼痛強度はMP群3.60、PL群3.68と両群間で差は認められなかった(p=0.88)。
・ベースラインからのオピオイド使用量の変化はMP群1.19 、PL群 1.20と両群間に差はなかった(p=0.95)。
・疲労感はMP群では17ポイント改善、PL群で3ポイント悪化と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。
・食欲不振はMP群で24ポイント減少、PL群では2ポイント増加 と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。
・患者の全体的な治療満足度はMP群5.4ポイント、 PL群2.0ポイントと、MP群で有意に良好であった(p=0. 001)。
・有害事象は両群間に差は認められなかった。
当試験では、メチルプレドニゾロン32mg/日によるオピオイドへの疼痛緩和追加効果は認められなかった。しかしながら、コルチコステロイド治療を受けた患者は、臨床的に有意な疲労感軽減、食欲不振の改善が認められ、患者満足度も高かった。今回の試験は、両群患者のベースラインにおいて、とくにオピオイド使用量に違いがあり、サンプルサイズも小さいものであった。今後は長期的な試験で臨床的利点を検証すべきであろう。
(ケアネット 細田 雅之)