糖尿病は、認知障害およびアルツハイマー病(AD)の急速な進行のリスク因子として認識されているが、これまで糖尿病合併の有無により、AD患者の認知機能および日常生活機能低下の程度が異なるか否かについては明らかとなっていなかった。米国・イーライリリー社のHaya Ascher-Svanum氏らは、軽度AD患者における糖尿病の有無が認知機能および日常生活機能に及ぼす影響を検討した。その結果、糖尿病合併例は非合併例に比べ、日常生活機能が有意に低下していること、有意差はなかったものの認知機能低下の程度がより大きかったことを報告した。Clinical Therapeutics誌オンライン版2015年2月9日号の掲載報告。
研究グループは、事後探索的解析にて、糖尿病合併AD患者と糖尿病非合併AD患者の18ヵ月にわたる認知機能および日常生活機能低下について比較した。また、副次目的としてQOL低下について評価した。AD患者を対象としたソラネズマブおよびセマガセスタット関する3件の18ヵ月間無作為化プラセボ対照試験のプラセボ群のデータを分析した。軽度AD(Mini-Mental State Examination[MMSE]スコア20~26)で、ベースライン時に糖尿病を合併している患者と非合併患者のデータを比較し、認知機能について14項目 AD Assessment Scale-Cognitive Subscale(ADAS-Cog14)およびMMSEを用いて評価した。日常生活機能については、AD Cooperative Study-Activities of Daily Living Inventory(instrumental subset)(ADCS-iADL)により評価した。QOLはEuropean Quality of Life-5 Dimensions scale、プロキシバージョン(proxy utility score and visual analog scale score)、AD患者におけるQOLスコア(Quality of Life in AD scale)、患者の自己報告、プロキシ(介護者)バージョンを用いて評価した。ベースラインから18ヵ月後までの認知機能、日常生活機能、QOL測定値の変化に関する群間比較は、傾向スコア、試験、ベースライン時の認知スコア(機能的あるいはQOL)、年齢、性別、教育レベル、アポリポ蛋白E遺伝子のゲノタイプ、投与中のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンで補正した反復測定モデル用いた。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時、軽度AD患者の認知機能は糖尿病合併の有無による有意な差は認められなかったが、非合併患者では日常生活機能を示す数値が有意に高かった。
・18ヵ月後において、糖尿病合併患者は糖尿病非合併患者と比較して、統計的に有意でなかったが認知機能低下の程度が大きかった[群間差の最小二乗平均:ADAS-Cog14スコア1.61(p=0.21)、MMSEスコア-0.40(p=0.49)]。
・また日常生活機能については、糖尿病合併患者において統計学的に有意な低下が認められた(群間差の最小二乗平均:ADCS-iADLスコア-3.07、p=0.01)。
・QOL低下に関して両群間に有意な差はみられなかった。
結果を踏まえて著者らは、「軽度AD患者の日常生活機能低下に糖尿病が影響する可能性が示唆された。今回の事後探索的解析の限界を踏まえて、確認された差異の原因を究明すべく研究の積み重ねが期待される」とまとめている。
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