注意が必要、高齢者への抗コリン作用

提供元:ケアネット

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公開日:2015/04/17

 

 高齢者への薬物治療において、しばしば問題となる抗コリン作用。オーストラリア・フリンダース大学のKimberley Ruxton氏らは、抗コリン作用を有する薬剤と高齢者の認知機能障害や転倒、全死因死亡との関連をシステマティックレビューおよびメタ解析で検証した。British journal of clinical pharmacology誌オンライン版2015年3月2日号の報告。

 65歳以上を対象とし、抗コリン作用を有する薬剤(DACEs)の使用と転倒、認知機能障害、全死因死亡との関連を検討したランダム化比較試験、前向きおよび後ろ向きコホート研究、ケースコントロールスタディを、CINAHL、Cochrane Library、EMBASE、PubMedのデータベースを使用し検索した。期間は2013年6月以前に公表されたものとした。抗コリン薬への曝露は、薬物クラス、DACEスコアリングシステム(anticholinergic cognitive burden scale [ACB]、anticholinergic drug scale [ADS]、anticholinergic risk scale [ARS]、anticholinergic component of the drug burden index [DBIAC])または各DACEsの評価により調べた。メタ分析は、個々の研究から結果をプールして行った。

 主な結果は以下のとおり。

・18報の研究が選択基準を満たした(合計参加者12万4,286例)。
・DACEsへの曝露は、認知機能障害のオッズ増加と関連していた(OR 1.45、95%CI:1.16~1.73)。
・オランザピンとトラゾドンは、転倒のオッズおよびリスクの増加と関連していた(各々OR 2.16、95%CI:1.05~4.44;RR 1.79、95%CI:1.60~1.97)。しかし、アミトリプチリン、パロキセチン、リスペリドンでは関連が認められなかった(各々RR 1.73、95%CI:0.81~2.65;RR 1.80、95%CI:0.81~2.79;RR 1.39、95%CI:0.59~3.26)。
・ACBスケールの単位増加は、全死因死亡のオッズ倍増と関連していた(OR 2.06、95%CI:1.82~2.33)。しかし、DBIACまたはARSとの関連は認められなかった(各々OR 0.88、95%CI:0.55~1.42;OR 3.56、95%CI:0.29~43.27)。
・特定のDACEsまたは全体的なDACE曝露の増加は、高齢者の認知機能障害や転倒リスク、全死因死亡率を増加させる可能性がある。

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(ケアネット 鷹野 敦夫)